岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

「弥生跡地」、それでも遷移は進んでいる…再度の事前調査(5)

2010-06-12 04:50:57 | Weblog
(今日の写真は、ユリ科チゴユリ属の多年草の「ホウチャクソウ(宝鐸草)」である。 漢字で「宝鐸草」と書かれるとなかなか読めない。難しい漢字名なので、名前の由来から説明しよう。
 それは筒状で「細長い花の形」を寺院や五重塔の軒下にぶら下がっている装飾品である「宝鐸」に似ていることに見立てたことによる。どうも、命名者は庶民ではないようだ。恐らく、奈良時代辺りの「知識人」であろう。「宝鐸」とは簡単にいうと「風鈴」のようなものである。
 ただ、これは「日本全土」に分布しており、山地や丘陵地の林内に生育するので、私たちの身近で普通に見かける花であり、人目にはつきやすい花ではある。
 だが、今日の写真のように「林の木陰でひっそりと咲いている」ことが多いので「人の歩く道」沿いでは、なかなか出会えないものの一つでもある。

 茎は真っ直ぐに伸びるが、上部で枝分れして斜めに成長する。大体大きなもので60cmほどだろうか。葉は長楕円形で先は尖る。
 花の開く時季は4~5月と言われているがこの場所では6月7日でもこのように咲いていた。これは、「弥生跡地」北側の沢の下流域で撮ったものだ。
 花は枝の先に1個から3個ついて垂れ下がる。大体2個のことが多い。2個となれば「宝鐸」とするには無理がある。「宝鐸」は軒下に1個ぶら下がっているものだからだ。だが、命名者の「ひらめきと発想豊かな感性」に免じて許そう。
 花の先端は緑色を帯びている。これも花の中では珍しい。花弁が「緑」の花、私の知識の中には、そのようなものはない。
 この珍しい「白と緑のツートーンカラーの花弁」は、長さが約3cmだ。花は殆ど開かない状態で咲くので、よく見えないが花弁は内側と外側にそれぞれ3枚ずつある。
 そして、秋になると、この花は、球形の果実となって、青黒く熟すのだ。

 「ホウチャクソウ」は分類学上では「ユリ科チゴユリ属」の仲間である。「チゴユリ(稚児百合)」は名前が示すように「稚児のように」小さい。だが、「ホウチャクソウ」は、その何倍も草丈が大きいし、花の格好も極端に違う。とても、同じ「属」とは思えない。 だから、ついつい、花の似た「アマドコロ(甘野老)」や「ナルコユリ(鳴子百合)」の仲間ではないだろうかと思うのだが、そうではないのである。
「アマドコロ(甘野老)」はユリ科アマドコロ属であり、「ナルコユリ(鳴子百合)」はユリ科ナルコユリ属であって「属」がまったく違うのである。
 しかも、「ホウチャクソウ」は「チゴユリ」と同じように「若芽」には毒があるのだ。だから、春早く、若芽や若葉が似ている同じユリ科ネギ属の「ギョウジャニンニク(行者大蒜)」やユリ科ユキザサ属「ユキザサ(雪笹)別名は(アズキナ:小豆菜)」などの「山菜」を採る人は間違わないように注意が必要だ。)

◇◇「弥生跡地」、それでも遷移は進んでいる…再度の事前調査(5)◇◇

(承前)…私の念頭には、どうしても「観察会参加者」に見て貰いたい場所としての「観察ポイント」があった。

 その1つは沢沿いに、何基も直立している「マンホール」であった。これは、まさに、路上で見かける、あの丸い蓋がついているもので、それが2mほど地上に直立しているのである。
 これは一体何のためのものなのか、地下には一体どのような装置と迷路が隠されているのかなどを観察者と一緒に考えたいからである。これは「荒原」の直ぐ傍にも一基あるので、容易に観察することは出来る。

 その2つは、この沢に直径50cm以上の「コンクリート管」を注ぎ口として、どこからか「水」の流れ込んでいる場所があり、そこを「観察ポイント」にしたいということである。その「道路跡」を降りて行くと、小さな滝のような水音が聞こえてくる。そこが、「コンクリート管の注ぎ口」がある場所だ。だが、簡単にそこまでは行くことが出来ない。「チシマザサの竹藪」に阻まれるからだ。まずは、「ここが入り口」という意味での「送り」を枝につける。それから、道筋が分かる程度の刈り払いをする。
 ここでも、「ニホンザリガニ」など水生生物の調査も試みるつもりである。

 その3つは「蛇腹状の通水管」のある場所である。これは、「跡地の外側」からは絶対に見えないものである。または、「跡地の内側」に入ったとしても「沢」を遡上するか下降しない限りは眼にすることが出来ないものである。これは、是非「観察対象」にしたいのである。
 沢を遡上するか下るかしない限り「見えないもの」を沢に沿った「道路跡」を降りて見つけることは無理である。私は大体目星をつけた辺りで何回か「藪漕ぎ」をして沢に入った。そして、とうとう「寝そべる大蛇」に遭遇したのである。当然、ここでも当日は「水生生物」の調査と観察をする。
 そこからは、沢沿いに降りるつもりなので、「道路跡」まで「刈り払い」をして、入り口を示す「送り」をつけてからまた戻って来た。そして、沢の縁を降り始めた。「チシマザサ」は次第に疎らになり、「ウワバミソウ(ミズ)」が目立ってきた。立派な「ミズ」だ。
 そこをかき分けて進むと「今日の写真」ホウチャクソウが咲いていた。沢下流部の「遷移」は明らかに進んでいる。前方にちらちらと赤布が揺れている。先刻つけた「送り」の場所に出たのである。迷わずに戻って来たのだ。
 その日、枝の先につけた「送り(赤布)」の総数は30本を越えた。これは観察会当日にはすべて「取り外し」てくる。また、「作業」をしながらであったが二度目の事前調査には約2時間を要した。(この稿は今日で終わりとなる)

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