たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『木靴の樹』シナリオ(6)

2015年05月13日 21時44分03秒 | 映画『木靴の樹』
1990年公開映画パンフレット(フランス映画社発行)より引用します。


紡績工場の作業場(夕)

  午後の光のさす作業場で、女達が歌いながら働いている。
  ブレナの美しい娘マッダレーナもいる。終業の音が鳴ると、
  女達は先を争うように階段を降りる。


ポプラの並木道

  鐘の音。家路を急ぐマッダレーナ。
  後ろから彼女を追ってきた若者ステファノが、声をかける。

ステファノ

 「あんたに挨拶してもいいかい? “こんばんは”だけでも言いたい」

マッダレーナ

 「それだけなら構わないわ」

ステファノ

 「君は黙ってるの?」

マッダレーナ

 「(控えめに微笑み)”こんばんは”なら私も言うわ」

嬉しそうなステファノ。歩み去る彼女の後姿を見送り、来た道をひき返す。

畜舎

  二人の様子を不安気に見る父親ブレナ。

ブレナの家・台所

  無言の娘の様子を、黙って見守る両親。
  当のマッダレーナは、何事もなかったように食事を始める。


バティスティの家・台所(夜)

  バティスティはお湯をわかしている。ミネクの明日からの学校にそなえ、
  バティスティーナがカバンを縫っている。


バティスティーナ

 「湯かげんは? お湯がぬるすぎない?」

バティスティ

 「大丈夫だ。とても熱い。(裸のミネクをつからせ)中に入ってしゃがむんだ。
 背中を洗って、それから首と耳をよく洗うんだ。目をとじて、石けんで洗うよ。
 きれいになったぞ、そおら」

トゥーニ

 「ぼくもお湯につかりたい」

 出来上がったカバンに、ノートとえんぴつを入れるバティスティーナ。

トゥーニ

 「これ、学校へ持っていくの?」

バティスティーナ

 「(小さなトゥーニの手をそっとおさえ)さわらないで」



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