エルミタージュ美術館のコレクションはロマノフ王朝のエカテリーナ2世が蒐集を始めたのが起源だそうだ。今回の美術展の作品にはエカテリーナ2世が目利きした18世紀の美術品はなかったし、ダビンチの作品もなかった。ルノワールの扇を持つ女とゴーギャンの果実を持つ女くらいが有名な絵画だった。印象派もそれ以前の美術にもあまり興味がないので、今回の展示品ではローランサンやピカソの初期の作品くらいしか印象に残らなかった。こういう贅を尽くしたコレクションとそれを展示する企画は今の時代にはどうなのかと思う。しかし桜の季節のせいか入館者は多かった。
美術館「えき」KYOTOで1920年代にパリで活躍した画家の企画展をやっている。ヘミングウェイがカナダの新聞社のパリ特派員としてパリに滞在した頃、ヘミングウェイと親交のあった画家の作品を集めたとのこと。しかし、この親交がヘミングウェイの作品にどのような影響があったのかよくわからないし、いろんな画風の画家の作品を一度に観るのは結構疲れる。こういう企画はどうなのだろうか。お目当てのはがきはピカソとデュフィー、ドランのものを買ったのでそれはまあよかったが。
2か月くらい前になるが佐川美術館であった有元利夫の美術展に行った。39歳で夭折した画家だ。イタリアルネサンスの宗教画に影響を受けているが、メルヘンチックな作風のためかクラシックのレコードジャケットなんかにも使われている。自分でも作曲するようで「ロンド」という絵が飾ってある部屋で同じタイトルの音楽を流していた。バッハのようなバロックっぽい曲だ。有元は電通に勤めていたり、文芸春秋の表紙を書いたり華やかな日々もあったようだ。若い才能に合掌。
滋賀県守山市にある佐川急便が建てた佐川美術館に所蔵されている平山郁夫のシルクロードの作品を観た。日本の画家の絵はあまり興味がないので、平山郁夫についてもエライ画家でシルクロードの絵なんかも描いているくらいの知識しかなかった。作品を観ると水彩画でトルコの塔や砂漠のラクダといっしょに、琵琶湖にある浮御堂を描いているのがなんともいえず不思議な感じがした。シルクロードがヨーロッパから日本につながっているような奇妙な空間感覚だ。平山郁夫が広島での被爆体験から「平和への祈り」と題してシルクロードの絵を描いていることも初めて知った。サラエボの内戦の跡地で子どもたちを描いた大きな絵もあった。佐川美術館の造りもおしゃれで、人工池に囲まれ水に浮いたように見える。
国立近代美術館で開かれている藤田嗣治展を観た。藤田はエコール・ド・パリの画家たちの影響を受けながら、最初の印象派的な画風からキュビズム、そして日本画的なタッチで独自の乳白色の裸婦を描く画風、中南米を放浪した影響を受けたビビッドな色づかいの画風へと変遷している。1935年頃に日本に帰ってきてからはそれらを統合した画風になっている。ヨーロッパ風の筆のタッチと当時の貧しい下町をモデルにした風景がなんともいえず、懐かしくおしゃれな感じがする。戦時中は暗い戦争画を描き、戦争が終われば再びパリに渡り、こどもに関する絵の代表作を描いている。藤田のこども画は決してかわいいだけのこどもでなく、何か企んでいるような表情をしているが、一人のモデルもなく、すべて藤田の創作なのだそうだ。実際にこどものいなかった藤田にとってはそれらの絵が実のこどもだと語っている。