近未来小説であるが、憲法改正や少数派政党によるファシズムの台頭などこれから話題になりそうな素材が扱われている。
憲法98条改正の手続きなどとても具体的だが、小説を貫く詩情は終始未来への不安感などで染められている。ストーリー展開も面白いが、この詩情もこの小説の魅力だろう。
そういえばジョージ・オーエルの『1984年』を読んだときの衝撃は大きかったが、1984年を過ぎると全体主義は復活せず、何も変わらず、何であのとき衝撃的と思ったのか不思議だった。近未来小説というのは往々にしてその通りにはならないものだ。フィリップ・K・ディックの小説はたくさん映画になっているが。
『魔王』では超能力をもっているファシストと思われている党首のいう言葉に迫力がある。憲法改正を唱えながら、国民投票の直前にテレビで
覚悟はあるのか
勇気はあるのか
と国民に問いかける。
宮沢賢治の詩や物語がファシストを支える思想として展開されるのもなさそうでありそうな話である。
超能力、政治、社会のシステムが素材として描かれるところは、一頃ソ連でジリノフスキーが台頭したときを彷彿とさせる不気味な雰囲気を醸し出す。
尻上がりに面白くなる小説なのだが、最後の終わり方が「えっ」と思う。
突然終わるのだ。
『ロード・オブ・ザ・リング』の話の引っ張り方に似ている。
これじゃ誰もが続編の『モダンタイムス』を読みたくなるだろう。
この小説家は売れてきたので、マーケティングもすごく考えているように思う。まあ、それが小説の質を変えないことを祈るが。
憲法98条改正の手続きなどとても具体的だが、小説を貫く詩情は終始未来への不安感などで染められている。ストーリー展開も面白いが、この詩情もこの小説の魅力だろう。
そういえばジョージ・オーエルの『1984年』を読んだときの衝撃は大きかったが、1984年を過ぎると全体主義は復活せず、何も変わらず、何であのとき衝撃的と思ったのか不思議だった。近未来小説というのは往々にしてその通りにはならないものだ。フィリップ・K・ディックの小説はたくさん映画になっているが。
『魔王』では超能力をもっているファシストと思われている党首のいう言葉に迫力がある。憲法改正を唱えながら、国民投票の直前にテレビで
覚悟はあるのか
勇気はあるのか
と国民に問いかける。
宮沢賢治の詩や物語がファシストを支える思想として展開されるのもなさそうでありそうな話である。
超能力、政治、社会のシステムが素材として描かれるところは、一頃ソ連でジリノフスキーが台頭したときを彷彿とさせる不気味な雰囲気を醸し出す。
尻上がりに面白くなる小説なのだが、最後の終わり方が「えっ」と思う。
突然終わるのだ。
『ロード・オブ・ザ・リング』の話の引っ張り方に似ている。
これじゃ誰もが続編の『モダンタイムス』を読みたくなるだろう。
この小説家は売れてきたので、マーケティングもすごく考えているように思う。まあ、それが小説の質を変えないことを祈るが。