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お気楽ビジネス・モード

ビジネスライフを楽しくする知恵や方法を紹介する

山田 敦郎『パワーブランド・カンパニー』

2008-03-13 21:34:31 | マーケティング
「ワンボイス」戦略をとるフェデックスとキャタピラー、「ブランドは顧客がつくるものである」でエブリデー・ロープライスをコアにブランドを考えるウォルマート、企業名を隠した複数の商品ブランドで市場を網羅する「マルチブランド戦略」のGMなど、企業によってブランド戦略は異なる。面白いのは金融機関のブランディングだ。金融機関に求められるブランドイメージは、資金的な「信頼」、口座を持つことによる「ステイタス」、どこでも使える「グローバル性」や「地域性」など。その金融機関が対象とする顧客によっても重点は異なってくる。エレガントなブランドを目指すモルガンスタンレー、銀行、証券、保険を扱い、地域と国際市場で展開するため、ワンブランドとマルチブランドを組み合わせたシティグループなど。ブランドを考える上でとても参考になる。

遠藤功『プレミアム戦略』

2008-03-01 14:14:33 | マーケティング
バブル崩壊の後、低価格の商品が売れ続けたが、特別な消費として高価格商品の売れ行きも伸び、市場が二極化してきた。最近では景気の回復も後押しして、高価格帯のプレミアム市場が注目されている。自動車のレクサスやビールのザ・プレミアム・モルツなどがなぜ成功したのかについて、この本は解説している。

著者は「プレミアム」の定義について、機能的価値と情緒的価値から以下のように述べている。

機能的価値について、上質感を極めるための作り手の技術力と創造力が不可欠。
その上で、情緒的価値として、消費者との「見えない絆」を作り出すことが重要。
プレミアムとは、プラスαの対価を支払ってでも手に入れたいと思わせる「特別な価値」「プラスαの価値」と定義することができるのだ。
「高額品=プレミアム」ではなく商品単価が低い日常品でもプレミアムはありうる。
ではプラスαの価値とは何か?
機能的価値において、圧倒的にレベルの違う価値を訴求しなければならない。
「レベルの違う上質感」という形としての目に見える独自の上質性が備わっていなければ、プレミアムにはなりえない。
しかし、消費者の感性に訴える情緒的価値という見えない価値が備わっているかどうかが重要になる。その商品を手にすることによる精神的な満足、オーナーとしての誇り、作り手に対する共感など、消費者の情感に訴えかけ、作り手との「見えない絆」を作り出すことができるかどうか、それが真のプレミアムであるかのどうか分岐点になる。

またプレミアム商品を売る上で重要な要素として、フラッグシップ製品、ストーリー、価格設定を上げている。
フラッグシップの必要性についてはレクサスの日本市場での初期の失敗はフラッグシップ製品であるLSの開発が遅れたことを上げている。
ストーリーの大切さについては、ザ・プレミアム・モルツの開発における醸造家・山本隆三の欧州で受けた衝撃から素材のこだわり、モンドセレクション最高金賞受賞までの苦労の秘話が紹介されている。
価格設定では、プレミアム商品はマスマーケティングでなく、収益性の高い製品の少量販売で成り立っている。作り手が製品に込めた価値を示すことが重要であることを述べている。

この本を読むとプレミアム戦略はブランド戦略の一種だということがよくわかる。
とくにコンテクスト・ブランドマネジメントとして捉えるとSTP、4P、心脳マーケティングなどのフレームワークで理解できる。

原田泳幸『ハンバーガーの教訓』

2008-01-23 23:13:00 | マーケティング
サブタイトルが、「消費者の欲求を考える意味」となっているので、マーケティングの参考になるかと思って買ったのだが、それ以上の価値ある本だった。
原田氏は、MBA留学したいと相談に来る人には「留学するより屋台のラーメン屋さんから学ぶことのほうが多い」とアドバイスするそうだ。アップル時代には実際に近所の流行っているラーメン屋にセミナー依頼を考えたらしい。4P+Peopleの5Pを大学で学んだだけの者より流行っている屋台のラーメン屋さんのほうが5Pの本質をリアルに理解しているという。
しかし原田氏もアップル時代の40歳代半ばににはハーバード大学のエグゼクティブ向けのAMPというプログラムを受講している。MBAはある程度実務経験を積んだ30歳代なら意味があるという。
藤田田社長の後、マクドナルドを再建するために新規性を出すのではなく、らしさ=QSC(Macの企業理念=品質、サービス、清潔)の徹底を行ったことが成功のカギだったそうだ。月並みだが、本業でのサービスの徹底こそが最善策だった。
マクドナルドでは客単価より客数を重視する。客数は顧客の獲得数×来店率で計算する。リピーター率が命なのだ。
最近始めた24時間営業はROA(総資産利益率)からの発想。同じ家賃で10時間営業するのと24時間営業するのではどっちが得か。もちろんどれくらい来客があるかどうかで利益率も変わるが、採算が見込める店から始めたらしい。原田氏はマクドナルドのライバルをコンビニと考えて、コンビニが開拓した市場を狙っているのだろう。
成功は危機の始まり、という。これはエクセレント・カンパニーに共通する発想だ。一つの成功に安住したところから成長が止まるからだ。成功したときには意識的に戒めるらしい。
高齢化社会と言われるが、マクドナルドはターゲットをキッズ・ヤング・ファミリーに絞っている。というより子供の頃や若いころに経験した味をシルバー・エイジになってからも続けてもらう戦略をとるそうだ。これも、らしさの追求ともいえる。シルバー・エイジもターゲットにしていたら、高カロリーのメガマックのような製品は生まれてこないだろう。
原田氏の生き方にも興味をそそられる。趣味のドラムスは今もプロからレッスンを受けている。テレビでモンゴル人が「人は求めるものが少ないほど幸せです」と言ったのを聞いてローンの残っていた家や車を売り払ったそうだ。物欲を捨て、あくまで自分が成長するために働くという考えらしい。こうなればもう禅僧の世界である。
人には転職を勧めないというのも日本NCRから横河HP、アップル、マクドナルドと渡り歩いた人らしくない。現実逃避の転職と、より充実した仕事をするための転職とは違うということらしい。原田氏自身、製品開発をしたくて横河HPに移ったが、技術職でなく営業に配属された。再三転属願いを出したが、聞き入れられなかった。しかし自分の潜在能力を見抜いてくれていたのだと今では感謝しているらしい。

桶谷功『インサイト』

2008-01-22 23:10:05 | マーケティング
インサイトとは消費者が思わず動く、心のホットボタン、またはつい、買ってしまうツボというのが著者の定義。
STP、4Pなどのフレームワークで考えるマーケティングをモダンマーケティングという枠組みで説明し、フレームワークで表現されない消費者行動を含めてポスト・モダンマーケティングという言い方がされたりする。インサイトは消費者行動のホンネを探るときのキーワードともいえる。ホンネを知るための方法として、定量的なマーケティング・リサーチだけでなく写真を組み合わせるコラージュ・エクササイズなどが紹介されている。ひげ剃りのシックが消費者行動を探るために「理想の男性像」をコラージュさせた。コラージュからたくましい男、自分をもっている男、女に惑わされない男など潜在意識にある理想像が現れてくる。そこからCMに使うコンセプトやキャラクターなどを考えることができるそうだ。
ハーゲンダッツをおとなのアイスクリームにポジショニングしたCMの展開なども消費者のホンネに焦点を当てた成功例として紹介されている。
消費者理解から戦略上の解決策を導き出すのがインサイトであり、その解決策はプロポジションと呼ばれる。
ハーゲンダッツの「カスタードプディング」を例にすると、「おいしそう。食べてみたい」と思わせる戦略を考える上で、消費者が「パティシエのつくったプディングは、大人向けの本格的なおいしさ。子どものプリンとは違う」という気持ちがインサイト。そこから導き出されるプロポジションが「パティシエのプディング」。
これは商品コンセプトや宣伝のコピーイメージとして使うことが出来る。
著者の経験ではプレゼンでインサイトとプロポジションだけを繰り返し、クライアントに説明するのが成功のカギらしい。

京都広告塾編『巧告。』

2007-12-27 11:44:38 | マーケティング
コピーライターやアートディレクターによる講座。このシリーズが3冊も出ている。クリエイターによる本はそれなりに面白い。
山本高史のコピー講座ではお題を出して、受講生の作品を批評する。
それだけでなく講師自身の作品もある。

お題:40歳の男に花束を買わせるキャッチフレーズ。

受講生の優秀作品:

胸から胸へわたるもの


講師の作品:

昼間、花束を買うあなたを見かけて、
私、いやな想像をしたの。
ごめんなさい。

明らかにキャッチフレーズでなくなっているが、ねらいはよくわかる。

真木準は、仕事の忙しい合間に大学や広告塾の講義やCMの審査員などをこなす1週間のスケジュールも公開している。コピーライターも有名になると社会的責任のような感覚が芽生えるようだ。土日は誰もいない事務所でコピーを考える時間にしているというからまだまだすごい現役だ。

内田東『ブランド広告』

2007-12-08 18:41:17 | マーケティング
もと電通の広告マンが書いた本。どのようにして広告でブランドを築くか、どのようなことをやっていはいけないかを実例で説明しているので説得力がある。
バンパイア・クリエイティビティーとは、広告に登場するタレントの印象が強すぎたり、広告表現の特異さが際だちすぎて、本来伝えないといけない商品やブランドの特徴を吸い取ってしまうことをいう。バンパイアとはうまい表現だ。シボレーのCMで車を150フィートの塔の上に載せるCMなんかがその例らしい。その映像自体はスゴイと思うが、商品価値もブランドイメージも形成されない。一頃日本で流行ったエリマキトカゲもそれか。あれって何の広告だっけ?
アカウント・プランナーという役割ができたのは、広告表現者の思いこみでなく、ターゲットである消費者視点でものごとを考えて、「届く広告」をつくるためだ。
アカウント・プランナーがやる仕事は消費者の視点を広告に反映させること。
「家事のすべてをお願いできるメイドを求む」という広告では誰も応募者がなかったが、「高台の閑静な新築美邸、床は堅木で拭き掃除は不要。家族は少人数でみな健康。メイドルームは広くて清潔。高給保証」と書き直したら応募者の列が出来たという。
ブランドイメージを一貫させる例では、ハワイのアロハシャツが紹介されている。もともと日系人の母親が作ったものをエラリー・チュンという人が柄や着心地をハワイ風にしてアレンジして、ショップで売ったらバカ売れした。それをハリウッドスターが着たら全米で人気が出た。それからハワイアン音楽の衣装としてもハワイブランドとして定着したそうだ。
イメージのフォーマット化はブランド構築で需要なのだ。ユニフォームや広告、コピーもブランドの統一したイメージや機能を想起させる工夫が必要だ。

フィリップ・コトラー『市場戦略論』

2007-06-18 23:12:38 | マーケティング
1965年から1996年までの論文と2004年のインタビューで構成されている。興味深かった論文は、「撤退のマーケティング戦略」、「デ・マーケティング戦略」というテーマのものだ。マイケル・ポーターの撤退戦略とどちらが早く発表されたのか知らないが、視点は同じである。「撤退のマーケティング戦略」のなかで、コトラーは商品のライフサイクルを常に意識して、定期的に商品をチェックし、撤退するプログラムを用意する重要さを説いている。「デ・マーケティング戦略」では低い需要をマーケティングでいかに高めるかと同じように、高すぎる需要をいかにマーケティングで調整するかを解説している。デ・マーケティングは価格を上げるだけでなく、広告を抑制する、販売するセグメントを限定するなど様々なマーケティング手法が可能なのだ。ちょっと驚いたのがメガ・マーケティングの論文だ。4Pに加えてPower(権力)、Public relation(広報)の二つのPが必要というのはよくわかるが、海外市場参入ではPowerに裏金が有効な国もあるという記述があった。コトラーもこういうマネジメントを肯定するのかとびっくりした。インドや韓国の例も取り上げられていたが、日本の事例分析も詳しかった。そういえばロッキード事件というのも、メガ・マーケティングの視点から見ることもできるなあ。取り上げられていた日本の例はロングライフ・ミルクの技術だが。けれどPowerとつきあうのも現実のマーケティング・マネジメントであるのは間違いない。

ブックオフの見えざる損失

2007-03-04 20:27:49 | マーケティング
今日の「がっちりマンデー」のテーマはネットビジネス。そのなかでこれはうまいアイデアだが、このテレビをブックオフの経営者が見たらビジネスの寿命は時間の問題だと思えるものがあった。古本屋から仕入れた本をネットオークションで売るというシンプルなスタイルの事業だ。この事業を手掛けているのはなんと大学生。ブックオフで300円くらいの本が、5万円になることもあるとのことだ。とくにマニアに受けるマンガ本や秋山仁の数学の参考書などが利益幅が大きいとのこと。参考書は寿命が短く絶版になるものが多いらしい。
ブックオフもイーブックオフというネット上の注文システムがある。けれど、価格を決めて販売していることにまず問題があるのだろう。またレア情報が未整備で価格設定にも問題があるのかもしれない。この間隙を縫った大学生起業家の成功は古本をネットオークションに掛けて消費者に価値を決めてもらうところにある。
全国のブックオフのネットで同じことを行えば、どれくらいの利益になるのだろうか。利益額は未知数だが、少なくともブックオフは貴重本を社内に留保して対策を考えるべきだろう。そうすれば損失は最低限に防げる。

桜とともに北上する豪華ツアーとマーケティング

2007-03-03 19:58:31 | マーケティング
FMでスズキ・フューチャーナビを聴いていたら、阪急交通社が日本横断27泊28日ツアーを企画しているという話をしていた。札幌から個室寝台特急カシオペアで東京を経由して、新幹線で博多まで移動する。そこからチャーターバスで札幌まで北上するそうだ。ちょうど桜前線を追いかけるように各地の名所を巡る。地域の名産やグルメを食べ、高級ホテルに泊まるちょっとした陸上の高級クルージングのようなツアー。130万円という参加費にも驚くが、24名定員の企画が発売からすぐに売り切れたそうだ。団塊世代の夫婦の参加者が多いらしい。昨年もこの企画を実施したら、1か月寝食を共にするので、団塊夫婦がすごく仲良くなり、また仲のよい友達もできたので好評とのこと。
団塊世代をターゲットにいくつも魅力的な企画を積み重ねているツアーだが、極めつけは途中で医者による健康診断があることだろう。そこまでしても旅行に行くか、と思うが金と時間が有り余る団塊世代をターゲットにして、マーケティングとしては成功しているのだろう。
先日日経で読んだJTB社長インタビューの解答のひとつがこの企画なのかもしれない。

http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=149646&lindID=5

写真は桜でなく、今咲いている梅です。


マーケティング・マネジメント(基本編)

2007-02-25 13:52:33 | マーケティング
この本はミレニアム版をテキスト用に圧縮するために事例などをばっさり削ったもの。読み物としては面白みがないが、書き込むテキストだと思えば使い道はある。例えば今日の日経にJTB社長のインタビューがあるが、マーケティングの教材としてはいろいろ考えさせられる。旅行業界は団塊世代の大量退職に伴う新たなニーズにどう対応するかが課題だが、団塊世代は熟年層とひとくくりにできない多様性があるという。これまでの熟年層よりインターネット利用など情報武装がはるかに進んでいるので、商品の多様性と手配のスピードがカギらしい。そのため、商品開発はただ高齢者向けというより、現役時代のリピーターであるという認識が必要で、質の高い企画でないと安くても商品として成立しない。またネット予約体制を整えるとともに新聞などの従来メディアでの広告も有効らしい。団塊世代の旅行市場にいついて、マーケットセグメントやターゲット市場、コミュニケーションチャネルのテーマで考えると面白い。