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お気楽ビジネス・モード

ビジネスライフを楽しくする知恵や方法を紹介する

山田ズーニー 『伝わる・揺さぶる!文章を書く』PHP新書

2010-08-01 23:29:52 | 思考法・表現法
著者は進研ゼミで小論文添削の指導をしていたらしい。
最初にどうしようもない高校生の作文の添削をした話がある。
高校生の文章は最初、出題の意図を掴んでおらず、どうしようもなくなげやりで、救いがたいように思えた。
けれど本人と会って話してみるととても素直で、よい女子高生だった。ただ、主題を捕らえられず、自分の思いを形にする方法がわからないだけだった。自分自身書きたいことがわかっていなかった。
すこしのアドバイスで、自分で考えることがわかるようになった。

この本は文章を書く技術的なノウハウより、どうすれば問題の所在を捉えることができ、どうすれば素直にその問題と向き合えるのかを教えている。

最後のメッセージとして、自分にしか書けないかけがえのない文章を書くべきといっている。
文章作法というより、素直に書く思考方法を説いている本かもしれない。

ピーターズ&ウォータマン『エクセレントカンパニー』講談社文庫

2010-07-31 16:57:48 | 組織・組織行動
マッキンゼーの7Sの出典は何だったかなあ、と思って調べると『エクセレントカンパニー』だった。
久しぶりに手にすると下巻は日焼けして読みづらくなっていた。
7Sについては上巻に解説がある。

「ひとに対する配慮なくしてよい機構などというものは考えられないし、逆もまた真なのである。・・・組織づくりを知的に考えようとすれば、互いに切り離せない関係にある少なくとも7つの変数を同時に包含して扱っていかざるをえないことである」

その7項目として以下が上げられ、覚えやすいように7つのsで始まる単語に落とし込んだのが7Sなのである。

①機構(structure)
②戦略(strategy)
③ひと(staff)
④経営の型(style)
⑤体系と手順(systems)
⑥指標となる理念および企業文化と言うべき共通の価値観(shared value)
⑦現有する(または望ましい)企業の強さ、あるいは技術)(skills)

「組織としては、ハードウエア:戦略(strategy)と機構(structure)ばかりでなく、ソフトウエア:経営スタイル(style)、制度(systems)、ひと(staff)、共通の価値観(shared value)も同様に大切であるという考え方をはっきり打ち出していくうえで、こうしたフレームワークが大きな助けとなった」

しかし、組織を変えていく上で、ソフトなSに対する対応が重要であることはわかっていたが、具体的な設計手順が不足していた。そのため、マッキンゼーでは「革新的な企業とは、新製品を出して大きく売上げを伸ばしていく能力に優れているばかりでなく、周囲のあらゆる変化に器用に対応していく能力に秀でた企業」と定義して、その具体的な方策と特徴を調べた。
つまり超優良企業=エクセレントカンパニーとは4Sにも優れた企業なのである。

エクセレントカンパニーの8つの基本的特徴

①行動の重視
②顧客に密着する
③自主性と企業家精神
④ひとを通じての生産性向上
⑤価値観に基づく実践
⑥基軸から離れない
⑦単純な組織・小さな本社
⑧厳しさと緩やかさの両面を同時に持つ

この本が出版されたのは1980年代半ばということもあり、日本企業が優秀事例としてたびたび出てくる。
日本とドイツがアメリカより成功したのは、アメリカにはビジネススクールがあるが、日本とドイツにはないから現場から工夫したのだ、というような記述さえある。MBAに対する批判は当時からあったのだと感心する。

出版から20年以上経って、事例などで、はてな?と思うところもある。しかし、7Sというフレームワークが今も生きており、ソフトSに対する注目は以前より高まっているように思う。

訳者が大前研一であり、この本にもマッキンゼーの日本支社長として登場する。
大前研一の第一線での活躍期間も長い。

伊坂幸太郎『砂漠』新潮文庫

2010-07-31 16:10:31 | 文学・小説
 大学に入学してから卒業するまでのさわやかな青春小説。というと宮本輝か誰かの小説にでもありそうな感じだが、セックス描写もなければ政治闘争、ドラッグも出てこない。平凡な学生生活と少し違うのは、5人登場する主人公グループの女子学生のひとりがスプーンを曲げる超能力者、もうひとりが絶世の美女、男子学生のひとりが高校までにいじめにあっていた思いこみの激しい人物、もうひとりが強盗事故に巻き込まれて片腕を失うという設定くらいか。男子学生の主人公にはほとんど特徴がない。まじめに授業に出て、ブティックで働く恋人がいる。麻雀の場面がやたらと多い。
 それでも長編小説に仕上げるところは作者の技術だろう。テーマは友情と成長といったところか。砂漠というのは卒業後の人間の欲望がうずまき、それに人々がすり減っていく世界のこと。
 面白い小説だが、伊坂幸太郎が青春小説を描くとこうなります、という印象くらいしか残らない作品である。

ジョン・コッター『企業変革の核心』日経BP社

2010-07-19 22:32:42 | 組織・組織行動
 『企業変革力』『企業変革ノート』ではコッターの企業変革における8段階のプロセスが展開されていた。
 この本はその第一段階の「危機感を生み出す」プロセスに焦点を当てて書かれている。コッターによるとこの第一段階が最も重要なのだそうだ。

「危機感は放っておいて生まれるものではなく生み出すものであり、火を燃やし続けるためには、いつも気をつけていて必要に応じて薪を足さなければいけない」

 すべては危機感から始まる。

 コッターは本当によく訳のわかった研究者だと思う。
 細かいことだが、プレゼンについて、資料を入念に準備し、五感に訴えることを勧める。その一方で、「たどたどしい話しぶりは、人間味を添えてむしろ好ましい。・・・多少の言い間違いは、“自分の言葉で話している”という感じを与え、立て板に水のうさん臭さがない」とも言っている。

 危機感の敵は「スケジュールのいっぱい詰まった手帳だ」という指摘も面白い。どうでもいいことに忙殺されていたら、本当の危機感は生まれない。

「変革を実践するのに一流大学のMBAなどいらない。必要なのは自分の職場をつねに進化させたいという強い意志。あとは小さな思いつきと、それを実行に移す行動力があればよい」

 危機をサクセスストーリーにという章にそのプロセスが書かれている。

 1.予想外の危機に直面する
 2.パニックに陥らず、ダメージコントロールにも走らずに対応する。
 3.この事態を部下がどう受け止めるかを考える
 4.部下の反応を見越して計画を練る
 5.危機による痛手を和らげる措置は講じない
 6.危機感を行動で示す
 7.この危機を乗り越えられるという前向きのメッセージを発信する
 8.周囲の危機意識を高める
 9.従来はtげいこうにあってできなかったことが出来るようになる
 10.変革が結果に結びつく

 変革否定論者に対応する攻略法も面白い。

①邪魔者を邪魔立てする 変革とは無縁の、でも忙しい部署に移す 
②追い払う 正面から賛否を聞き、否定なら解雇する
③周囲から圧力をかける 
この攻略法で、『カモメになったペンギン』の読書会をして、あの人は「ノーノーだ」とみんなに思わせるやり方を紹介している。こういうのは遊び心があって面白いかもしれない。

これはコッターの書いた絵本を売るための巧妙なマーケティング戦略なのだろうか。

D.カーネギー『人を動かす』創元社

2010-07-19 21:53:07 | 人間関係学
 熱心に読んでみるとなかなか面白い本だ。

 この本ではリンカーンやロックフェラーなど成功した偉人の体験が多く取り上げられている。それらの事例について、ロジャースやスキナー、ハンス・セリエなどの心理学者の理論を引用することによって、デール・カーネギーの主張を説得力のあるものにしている。1936年に出版されたこの本に登場する心理学者のほとんどが今でもいろんな本で引用される人たちばかりだ。心理学の基礎理論は1930年代にほとんど成立していたのかもしれない。

 カーネギーのそれぞれの主張は簡単にできそうで、実はできていないことが多い。これからは日々の生活で出来ることから実行したいと思う。

 ただ、本を読んでいて自分の誤解にも気づいた。「カーネギー」といえば、鉄鋼王のアンドリュー・カーネギーのことだとずっと思っていた。けれどデール・カーネギーとアンドリュー・カーネギーは血縁関係もない別人だった。『人を動かす』は、松下幸之助のように成功した企業家が自らの体験を啓蒙的に語る本だと勝手に思い込んでいたので、「カーネギー」違いだとわかってから、伝記と心理学を研究したビジネスセミナーの専門家の本として読んだ。こういう誤解していたのは世界中で私だけなのだろうか。

 Wikipediaによると、デール・カーネギーはCarnegieという綴りもアンドリュー・カーネギーに合わせて改名したそうだ。ここまでやると、ちょっとやりすぎのような気もする。

 でもこの本に書かれていることを実行できれば周囲から尊敬される人物になれるだろう。世界的ベストセラーになる本にはそれなりの理由がある。

忽那憲治『中小企業が再生できる8つのノウハウ』朝日新聞出版

2010-07-19 18:04:47 | 経営戦略
本の帯で冨山和彦氏が「企業再生とは、自己変革への挑戦だ。この本には、どんな企業にも共通するノウハウが書かれている・・・」と語っていたので買ったが、期待はずれ。

確かにどんな企業にも共通するビジネスモデルや資金調達のためのノウハウが簡単に書かれている。事例もそれなりに紹介してある。

けれど紙幅のせいか、表面的な記述にとどまり、深みがない。

ここで紹介されている参考文献のほうがためになるのかもしれない。

この著者が開催している勉強会などはためになるそうだが...。

本を帯の広告文句だけで買ってはいけない、教訓的な本である。

ACCUSYNC ストレージ

2010-07-17 22:25:50 | デジタル・ツール
データ同期ユーティリティーソフト。
パソコン間でoutlookのアドレス、タスク、スケジュールを同期するのにとても便利だ。

似たようなソフトで万能syncというのがある。

accusyncとの違いは、

①万能syncでは、USBのなかにソフトが収まるが、accusyncではそれぞれの端末にインストールする必要がある

②万能syncの場合、パソコン何台でも同期可能だが、accusyncは2台に限られる

③万能syncの場合、同期のタイミングでデータが重複したりするが、accusyncでは重複などをきれいに処理できる

要するに2台のパソコン間に限ってデータをやりとりするなら、accusyncのほうが実用的だということ。万能syncは便利そうに見えて、実用的ではない。

ただ、万能syncはパソコンを買い換えたりするときには、いくつもの端末へデータが移せるので便利だと思う。

onkyoBXにaccusyncは必需品である。

ただ、パソコンとデータをそろえるためには、それぞれのパソコンでUSBとの同期作業を行う必要がある。onkyoBXとUSBの同期作業は会議中などに実行すると時間が有効に使える。

『考える人 村上春樹ロングインタビュー』新潮社

2010-07-15 23:23:40 | 文学・小説
ほんとうに長いインタビューだ。
話題も幼い頃の記憶から、河合隼雄との対話、エルサレムのスピーチまであちこちに飛ぶ。
でもとてもおもしろかった。

小説は作品を楽しむべきで、作家の真の意図など関係ない、と自分では思うようにしている。けれど、『1Q84』は謎の多い小説なのでついつい作家の意図を知りたくなってしまった。

ロングインタビューの中で、『1Q84』に手を握るシーンが多いことについて、村上春樹はこう言っている。

「体の芯に、簡単にはさめない確かな温もりがあること、そのフィジカルな質感がそなわっていること、それが大事だと思うんです。手を握るという行為をとおして、登場人物たちはその質感を確かめ合っているのかもしれない。僕がインタビューしたオウムの信者の人たちには、そういう重しみたいなものがいまひとつ感じられなかったんです。言葉も滑らかだし、ロジックもきちんとしているし、聞いていてなるほどと思うんだけど、体の芯から伝わってくるものが希薄です。
 それより僕がお目にかかった被害者の人たちには、それがあります。日常生活がもたらすあれこれのできごとを通して、水がいろんな地層を抜けるように、自然とにじみ出てきた質感です。それはごく平凡な、ささいなものかもしれない。・・・・(略)・・・・・・・・
 天吾と青豆も、十歳の時に互いの手をしっかり握りあったことで、体の芯の温もりみたいなものを獲得することができた。とてもフィジカルな記憶です。その温もりの記憶が二人を結果的に助けることになります。おそらく牛河にもタマルにも、そのような体験はなかったのでしょう。」

『1Q84』を読んで感じた「生きている実感の喪失とその回復」ということが、なんとなく作者の意図と重なっているように思った。
 生きていると感じた実感が大切だし、その記憶がどこかにある限り、誰でも未来の方向を向いて生きていける。

 村上春樹は60歳を超えてもなお、そういう若い感覚を持ち続けている。

 これからしばらく長編を書かないらしい。このインタビューを読んでも、『1Q84』の続編があるのかどうか、よくわからない。まあ作者本人もよくわからないのだろう。

 村上春樹のインタビューを読むと、老いることとはどういうことなのだろうか、と思う。今もフルマラソンに参加し、自分の体を鍛えることに熱心で、世間の評判とは距離を置いて、マイペースで生きている。
 歳をとっていくことに対する不安を忘れるインタビューでもある。

E.H.シャイン『企業文化 生き残りの指針』白桃書房

2010-07-11 10:41:40 | 組織・組織行動
シャインの有名な本だけあって、貴重なことが多く書かれている。
訳者の金井教授の解説によれば、シャインの本にしては事例が多いとのこと。たしかにDECやチバガイギー社などの実際のケースがいくつか登場している。


以下、抜粋ノート。

文化はわれわれ個々人および集団としての行動、認識方法、思考パターン、価値観を決定する強力ではあるが潜在的でしばしば意識されることのない一連の力である。組織の文化的要素が経営の戦略、目標、業務方針を決定する。組織を効率よく、効果的なものに変えていこうとするなら文化が組織の誕生以来果たす役割を理解しなければならない。
文化の本質を操っているのは、学習され共有された暗黙の仮定である。
組織の仕組みを変えようとしてきたのであれば、現状の文化によってどのように助けられたか、あるいは妨げられたかを知らねばならない。文化的な仮定の中にうまくいかなくなった仮定が見つかれば、どうやってそれを変えていくか考えなければならない。


企業文化のアセスメントは、アンケート手法より、同僚を集めて(新参者を含めるのもよい)、組織が成功を続けるために問題となりそうな分野に関して話し合うことが有効。
・事業にまつわる問題を定義する
・文化の概念を復習する
・文物を特定する
・組織の価値観を特定する
・価値観を文物と比較する
・他のグループにも同じことを繰り返す
・共有されている仮定をアセスメントする


変容のモデル
・第一段階 解凍-変化の動機付けを行う 現状否認
・第二段階 古い概念に取って代わる新しい概念および新たな意味を学習する
・第三段階 新しい概念と意味の内面化 自己の概念のアイデンティティへの取り込み


チェンジ・リーダーおよびチェンジ・エージェントの特徴
・信頼性
・明白なビジョン
・ビジョンをはっきりと表明する能力

アセスメント・プロセスにおいて最も重要な点の一つは、将来の事業慣行を既存の文化の主題と結びつける方が、文化を変えようとするよりもはるかに容易である。効果的な組織であればこのやり方で、変化することのない少数の中心的価値観や仮定のまわりに自分たちの慣行を進化させていくことができる。

以下、感想。

シャインの企業文化へのアプローチは集団心理を対象としたより分析的なアプローチのように思える。
企業文化を分析して、生体のとしての組織のアイデンティティを失わないように、変えるべき大事なところをより効果的に変えるという内科的療法に向いているように思う。
コッターの8段階の組織変革の方法の提示とは少しアプローチの仕方が違う。どちらかといえばコッターは外科的療法なのか。

どういう方法がよいかは組織の状態と課題の質によるのだろう。

しかし、シャインのいうように企業文化を軽視すると目的とした変革が頓挫してしまったり、M&Aがうまくいかなかったりする。内外の事例をみると、これは後で気づくことが多いように思う。そのためにもシャインのアプローチは有効なのかもしれない。

小川進ほか『3分でわかるクリティカル・シンキングの基本』日本実業出版社

2010-07-03 09:11:44 | 思考法・表現法
この本ではクリティカル・シンキングの本質を「正しく疑う」と定義している。
またクリティカルシンキングをロジカルシンキング、ラテラルシンキングとセットの思考法という扱いで書かれている。

クリシンのテキストというより読み物として面白い。
たとえば、「フレームワークの限界を見極める」というテーマでPPMのフレームワークが例に挙げられている。
PPMは横軸は自社の市場シェアであり、縦軸は市場の成長性である。しかし横軸は競合他社と比較したコスト競争力または自社の強みであり、縦軸は市場の魅力であるとも読み替えられる。そういう発想で横軸に市場シェアではないもの、縦軸に市場の成長性ではないもので事業のポートフォリオを見直すこともできる。

ビジネススクールの生徒で自社のケースに落とし込まない考えない頭でっかちは、考える筋トレができていないという記述も参考になる。

しかし、1時間くらいで人にクリシンを教えられるテキストはできないのだろうか。

クリティカルシンキングを3分で理解できるわけがないが、1時間で教えるのも難しいと思う。
職場でなら、1時間講義して、その後OJTというか日常業務のなかで思考のくせを直し、クリシン・モードになれる練習をすれば効果的だろう。

たとえば、1時間で教えること。

クリシンは考えること、伝えること。
①考えること:自分の偏見、思考のクセを自覚する。
②考えること・伝えること:わかりやすく説明する。根拠→結論またはその逆で説明する。
③伝えること:相手の知りたがっていること、理解できる程度を認識する。

・考える方法としてのフレームワーク 
  3C,4P,5F,7S,PPM,アンゾフのマトリクス,バリューチェーン → 参考文献で示す
・フレームワークの限界を知る → PPMの例
・伝える方法
 見える化 プロセス、ツリー、4象限図など 
 フレームワークをそのまま使うことのメリットとデメリット
 ロジカルな組み立てとしての帰納法、演繹法
・自分と他人のwhat,where,why,howの位置を知る

これくらいだろうか。
1時間の講義でフレームワークのだいたいを理解していれば、OJTを行うときに「フレームワークの○○で示したら」とか「プロセスを図で示して」「その根拠は?」「テーマは何?」などと言っても違和感がない会話が成立すると思う。こういうことを繰り返していくと自然とクリシンが身に付くのではないだろうか。

クリシンはスキルに関するものなので、3分本を読むだけではなかなか身に付くのは難しい。