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●税金で立派な賄賂…【こちら特報部/得意満面の「手柄話」のはずが…馳浩・石川県知事の「機密費」発言 撤回後は説明を拒み続ける見苦しさ】

2023年11月25日 00時00分22秒 | Weblog

[※ 「こんな人たち 報道特集(2017年7月8日)↑]


(20231122[])
官房機密費《ヤミ金》、《領収書不要政策推進費」》……やりたい放題の「利権」党、120万円のアルバムって? 税金による立派な賄賂。《事実なら当時の安倍晋三内閣が買収を疑われかねない贈答税金で行っていたことになる》(東京新聞社説)。
 そうそう、セイジヤ評論家モドキ・アベ様広報員のスシロー氏に、官房機密費から《盆暮れにお届け》があったかどうか、誰か取材してくれないものかね。

   『●野中氏の爆弾発言
    《自民党の河村建夫・前官房長官がビビりまくっているという。河村は
     政権交代直後の昨年9月に2億5000万円もの官房機密費
     引き出したとして、大阪市の市民団体に背任容疑などで
     東京地検に告発されている》
    《「総理の部屋に月1000万円。衆院国対委員長と参院幹事長に
      月500万円ずつ持って行った」
     「政界を引退した歴代首相には盆暮れに毎年200万円
     「外遊する議員に50万~100万円」
     「(小渕元首相から)家の新築祝いに3000万円要求された」》
    《野中証言にはもうひとつ注目発言があった。「(政治評論をして
     おられる方々に盆暮れにお届け」と明かしたことだ。…鳩山政権が、
     歴代政権の官房機密費の使途を完全公開すれば、
     政界と大マスコミは一気にガタガタだ。》

   『●馳浩知事(当時のカネ色の五つの輪・招致推進本部長)…アベ様から
     「必ず勝ち取れ」「金はいくらでも出す。官房機密費もあるから」》と…

   『●アベ様「官房機密費もあるから」…馳浩石川県知事殿、どの辺に「誤解を
      生じかねない」「事実誤認がある」のでしょうね? 撤回でお終い?

 東京新聞の【<社説>五輪招致とカネ 機密費の使途説明せよ】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/291500?rct=editorial)によると、《石川県の馳浩知事が2021年に開かれた東京五輪の招致に向け、内閣官房報償費機密費)を使って国際オリンピック委員会(IOC)委員に贈答品を渡したと述べた。事実なら当時の安倍晋三内閣が買収を疑われかねない贈答税金で行っていたことになる。政府は招致活動の実態機密費の使途を国民に説明する必要がある。馳氏は13年の開催決定まで、衆院議員として自民党東京五輪招致推進本部長を務め、開催都市の投票権を持つIOC委員105人全員に現役選手時代などの写真をまとめた1冊20万円のアルバムを贈ったと、17日の講演で語った》。
 録音もきっちり行われており、まさかの衝撃的なカムアウト、つい本音がポロリ。いくら否定しても、消しようがないトンデモ〝証言〟。アベ様が「金はいくらでも出す。官房機密費もあるから」と発言したこと、税金を使ったこと、しかもイワクつきのアノ官房機密費《ヤミ金》、《領収書不要政策推進費」》を使ったこと、立派な賄賂であったこと…発言を撤回すれば、こういった事実を消せる、事実を葬り去ることができるはずもありません。

 一方で、石川・富山と言えば『はりぼて』『裸のムラ』(五百旗頭幸男さん)。
 佐藤裕介記者による、東京新聞の記事【馳浩・石川県知事が口を滑らせた「機密費」のモヤモヤ感 国民に秘密のカネ、2023年度は14億6000万円も計上】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/291280)によると、《石川県の馳浩知事が東京五輪の招致活動で国際オリンピック委員会(IOC)委員に贈答品を渡すために使ったと明かした内閣官房報償費機密費)。これまでも不透明な支出が問題となってきたが、時の政権が領収書なしで自由に使えるカネとして実態は依然として闇の中だ。機密費で贈答品を渡していたなら、五輪関係者への贈り物の授受を禁じるIOCの倫理規定に違反する恐れもある。(佐藤裕介)》。

 記事末尾のリンク先の記事【馳浩・石川県知事がメディアに仕掛けた「反則技」 定例会見「私物化」から「知る権利」を考える】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/247629)の記事も必読。《連載<政治とメディア 石川県知事の会見拒否> ①阿武野勝彦東海テレビ報道局ゼネラルプロデューサー》《◆「裸の王様」が見えた 東海テレビ・阿武野勝彦さん  —馳浩知事は石川テレビ放送製作のドキュメンタリー映画「裸のムラ」を「演出も加わった商業映画」と批判した。テレビ局でドキュメンタリー映画を手がける立場として、どう思うか。/あ、出たなと。商業放送の王道としてのドキュメンタリー番組は許容されるのに、映画だと「金もうけ」と言われる。いつも注意していることだが、テレビも映画も、同じ文脈の中での報道活動。日本社会が撮られることに対して不寛容になり、窮屈になっているところに、この問題があるのではないか。…》
 安藤恭子記者による、同紙の記事【こちら特報部/得意満面の「手柄話」のはずが…馳浩・石川県知事の「機密費」発言 撤回後は説明を拒み続ける見苦しさ】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/291259?rct=tokuhou)によると、《2013年に開催が決まった東京五輪の招致にあたり、当時衆院議員だった馳浩・石川県知事が、国際オリンピック委員会(IOC)の委員に「政府の機密費を使って贈答品を渡した」と講演で発言した。発言に誤りがあるとしてすぐ全面撤回を表明したが、具体的に何が事実誤認なのかという点に答えていない政治家として、説明責任を軽んじすぎていないか。(安藤恭子)》。

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/291500?rct=editorial

<社説>五輪招致とカネ 機密費の使途説明せよ
2023年11月22日 06時38分

 石川県の馳浩知事が2021年に開かれた東京五輪の招致に向け、内閣官房報償費機密費)を使って国際オリンピック委員会(IOC)委員に贈答品を渡したと述べた。
 事実なら当時の安倍晋三内閣が買収を疑われかねない贈答税金で行っていたことになる。政府は招致活動の実態機密費の使途を国民に説明する必要がある。
 馳氏は13年の開催決定まで、衆院議員として自民党東京五輪招致推進本部長を務め、開催都市の投票権を持つIOC委員105人全員に現役選手時代などの写真をまとめた1冊20万円のアルバムを贈ったと、17日の講演で語った。
 安倍首相から「必ず勝ち取れ」「カネはいくらでも出す機密費もある」と指示されたことも明らかにした。馳氏はその後「私自身の事実誤認もある」と発言を撤回したが、撤回で済む話でない
 IOCは倫理規定で五輪関係者への贈答品の授受を禁じる。当時の招致ルールでは慣習的な「ごくわずかな価値の贈り物」は認めていたが、20万円相当の価値がごくわずかとは言い難い
 東京五輪のスポンサー契約を巡る贈収賄、運営業務の談合事件では、大会組織委員会元理事ら計20人以上が起訴された。当時の招致委理事長が海外企業に送金した一部がIOC委員側に渡ったとされる贈賄疑惑も指摘され、仏司法当局の捜査を受けた経緯もある。
 東京五輪が汚職と腐敗の温床になり、最優先されるべき選手の活躍がかすんでしまったことは歴史の汚点だ。関わった当事者には説明を尽くす責任がある。五輪や万博など巨額の資金が動く国際イベントの日本招致もこの際、立ち止まって考え直すべきだろう。
 機密費は「国の機密保持上、使途などを明らかにすることが適当でない性格の経費」(松野博一官房長官)とされるが、倫理規定に抵触するような使い方をされたのなら看過しがたい。
 当時、官房長官だった菅義偉前首相は支出があったかどうか、明らかにすべきだ事実解明に向けて、まずは菅、馳両氏の国会への参考人招致を求める
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/291259?rct=tokuhou

こちら特報部
得意満面の「手柄話」のはずが…馳浩・石川県知事の「機密費」発言 撤回後は説明を拒み続ける見苦しさ
2023年11月21日 12時00分

 2013年に開催が決まった東京五輪の招致にあたり、当時衆院議員だった馳浩・石川県知事が、国際オリンピック委員会(IOC)の委員に「政府の機密費を使って贈答品を渡した」と講演で発言した。発言に誤りがあるとしてすぐ全面撤回を表明したが、具体的に何が事実誤認なのかという点に答えていない政治家として、説明責任を軽んじすぎていないか。(安藤恭子


◆安倍氏「金はいくらでも出す。官房機密費もあるから」

     (記者団に対し、具体的な説明を避けた石川県の馳浩知事
      =金沢市内で)

 発言が飛び出したのは、東京都内で17日にあったスポーツ振興に関する会合。自民党で東京五輪の招致推進本部長だった馳氏が、安倍晋三首相(当時)から「必ず勝ち取れ」「金はいくらでも出す官房機密費もあるから」と告げられた、と講演で述べた。
 開催都市決定の投票権を持つ100人余りのIOC委員に対し、それぞれの選手時代などの写真をまとめた1冊20万円分のアルバムを全員分作成したと説明し、「それを持って世界中を歩き回った」と話した。講演には90人が参加し、報道陣にも公開されていた。
 馳氏はその日のうちに全面的に撤回する」とコメントを発表。翌18日に金沢市内で記者団の取材に応じ「私自身の事実誤認に基づく発言」と謝罪したが、事実誤認に当たる部分について追及されると「五輪招致に関わることで文部科学省やスポーツ庁にも報告している。これ以上コメントは控えたい」と繰り返した。


◆ウソとカネで塗り固めた五輪を裏付ける貴重な証言

 IOCは倫理規定で五輪関係者への贈り物の授受を禁じる一方、当時の招致ルールでは慣習的な「ごくわずかな価値の贈り物」は認めていた。規定違反の可能性を問われると、馳氏は「規定を踏まえて招致活動に取り組んだ」と主張した。
 馳氏は石川県内の高校で国語教諭をする一方、ロサンゼルス五輪のレスリング競技に出場。その後、プロレスラーとして活躍した。元首相の森喜朗氏の誘いを受けて1995年に参院石川選挙区で初当選し、政界入り。2000年に衆院議員に転じた。15〜16年に文科相を務め、22年の石川県知事選で初当選した。
 文科相は馳氏が所属した自民党安倍派が多く占めてきたポストでもある。政治ジャーナリストの角谷浩一さんは「馳氏としては安倍氏と実現した手柄話だったのだろうが、期せずして招致段階から、ウソとお金で塗り固めた五輪だったという歴史を埋めてくれた貴重な証言」と皮肉る。
 内閣官房報償費(機密費)の原資は国民の税金だが、使い道が示されることはめったにない。今回の馳発言に絡み、同じ文教族の松野博一官房長官は20日の記者会見で「(報償費は)国の機密保持上その使途を明らかにすることが適当でない」と述べた。角谷さんは「機密だからではなく規定違反に当たるから言えないだけだ」と切り捨てる。


◆テレビ局に抗議したいがために定例会見を「人質」に

 馳氏といえば定例記者会見の拒否問題も続いている。今年1月の会見で、石川テレビ放送が製作したドキュメンタリー映画について、自身や県職員の映像使用を「肖像権の侵害に当たる」と主張し、定例会見の開催条件として同社社長が会見に出るよう要求。石川テレビが拒むと3月の定例記者会見は取りやめになり、4月以降は県の報告事項がある場合に「随時会見」の形で行われている。
 意に沿わなければ対応を拒むその態度の延長にあるような今回の発言と撤回騒動政治家としてあるべき姿にはほど遠い
 音好宏・上智大教授(メディア論)は「馳氏は五輪招致当時も今も公人だ。その人物が、ルールに抵触した可能性があることを示す発言をした。従って、今回の発言の何をどう撤回するのか、どの部分が事実誤認なのか説明をする責任があろう。メディアの側も馳氏に説明をしっかり求めていくべきだ」と話した。

【関連記事】馳浩・石川県知事がメディアに仕掛けた「反則技」 定例会見「私物化」から「知る権利」を考える
【関連記事】馳元文科相を厳重注意へ 首相謝罪、セクハラ抗議で
【関連記事】「五輪中毒」の日本 招致・開催に費やした期間は戦後延べ59年間 症状深刻、処方箋は…
【関連記事】「カネと利権まみれ」東京五輪・パラ汚職事件が札幌大会招致に浴びせた冷や水
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/291280

馳浩・石川県知事が口を滑らせた「機密費」のモヤモヤ感 国民に秘密のカネ、2023年度は14億6000万円も計上
2023年11月21日 06時00分

 石川県の馳浩知事が東京五輪の招致活動で国際オリンピック委員会(IOC)委員に贈答品を渡すために使ったと明かした内閣官房報償費機密費)。これまでも不透明な支出が問題となってきたが、時の政権が領収書なしで自由に使えるカネとして実態は依然として闇の中だ。機密費で贈答品を渡していたなら、五輪関係者への贈り物の授受を禁じるIOCの倫理規定に違反する恐れもある。(佐藤裕介

     (馳浩・石川県知事)

 「個別具体的な使途に関するお尋ねには答えを差し控えている」。松野博一官房長官は20日の記者会見で、IOC委員105人の全員に1冊20万円のアルバムを機密費で作成したとする馳氏の発言の真偽について回答を避けた。


◆馳氏は講演で「メモは取らないで」と切り出した

 馳氏は17日の講演で「メモ取らないようにしてください」と念押しした上で、機密費を使ったと明かした。当時の安倍晋三首相から「金はいくらでも出す機密費もある」と言われていたことも紹介。その後、発言を撤回したが、具体的な話の内容からは、その場の思い付きで虚偽の話をしていたとは考えにくい


官房機密費を巡る馳浩・石川県知事の講演での発言要旨 当時首相だった安倍晋三さんから「国会を代表して、オリンピック招致は必ず勝ち取れ」と。今からしゃべること、メモ取らないようにしてくださいね。「馳、金はいくらでも出す官房機密費もあるから」と。
 それで、作戦を練って(開催都市決定の投票権がある)IOC委員のアルバムを作ったんですよ。IOC委員が選手のとき、各競技団体の役員のとき、各大会での活躍の場面を撮った写真、105名のIOC委員全員のアルバムを作って、お土産はそれだけ。
 だけど、そのお土産の額を今から言いますよ。外で言っちゃダメですよ。官房機密費使っているから1冊20万円するんですよ。


◆事実関係を調査するか、松野博一官房長官は答えず

 松野氏は機密費について「国の機密保持上、使途などを明らかにすることが適当でない性格の経費」と指摘。事実関係を調査するかも問われたが、答えなかった
 政府が「国の事務、事業を円滑、効果的に遂行するため、機動的に使える経費」と位置付ける機密費。2023年度予算には、内閣情報調査室(内調)が管理する2億3000万円を含め、14億6000万円が計上されている。毎年度、同程度が支出されているが、支払先や使途の詳細は分からず、事実上、内容をチェックできない
 取り扱い責任者は官房長官で、領収書が要らない政策推進費」や、情報提供の対価として支払う「調査情報対策費」、慶弔費などの「活動関係費」に分類される。18年の最高裁判決では、機密費の支払先や具体的使途は開示できないとされ、開示が認められたのは、月ごとの支払額や「政策推進費」への繰入額など一部に限られた
 過去には国会対策や外遊する議員への餞別(せんべつ)などに使われていたとされる。旧民主党政権では、当時の鳩山由紀夫首相が国会で一定期間後に全面公開する意向を表明し、政権内で検討したが実現には至らなかった


◆五輪関係者への贈答品に使用なら…IOCの倫理規定に抵触

 機密費で贈答品を渡していた場合、贈与を禁じているIOCの倫理規定違反になりかねないが、松野氏は「個別事例に関する取り扱いは、IOCの権限と責任において判断される」と述べるにとどめた。
 東京五輪を巡っては汚職や疑惑が相次いで発覚。当時の五輪招致委員会理事長の竹田恒和氏がシンガポールのコンサルタント会社に送金し、一部がIOC委員の息子に渡ったとされ、フランス当局の捜査対象になるなど、不透明なカネの行方が問題となった。

【関連記事】機密費の使途「答え差し控える」 馳氏の「IOC委員へ贈答」発言で松野官房長官
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●日刊ゲンダイ【辛口の経済評論家 佐高信氏が「いい会社」と就活生に薦めたい企業3社】《城南信用金庫…久遠チョコレート…大川原化工機》

2022年12月19日 00時00分39秒 | Weblog

[※ 『この国の「公共」はどこへゆく』(花伝社)(https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51XYxs4shnL._SX338_BO1,204,203,200_.jpg)]


(20221206[])
日刊ゲンダイの記事【辛口の経済評論家 佐高信氏が「いい会社」と就活生に薦めたい企業3社】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/315317)にて、《■城南信用金庫》《■久遠チョコレート》《■大川原化工機》の三つの「いい会社」が紹介されている。「久遠チョコレート」については存じ上げず、初めて知った。


 城南信用金庫については:

   『●マガイ物ではないモノもある ~城南信金~
   『●財界の総理大臣はもはや大企業の単なる代弁者
   『●経団連は原発推進・復活の第4案を希望?
   『●脱原発は可能: ビジョンある金融機関(城南信金)のトップもいる
   『●城南信金の吉原毅理事長が退任・・・
      脱原発という、「理事長交代後も考え方は引き継がれ」て欲しい
   『●警察や消費者庁の沈黙…「商取引の原則」を無視して、 
            なぜ核発電料金を支払わなければならないのか?
   『●「原子力ムラの言いなり」原子力「寄生」委員会の救い様の無さと、
                   アベ様の「危険な丸投げ・無責任体制」
   『●東電核発電人災から7年: 「村の生活は百年余りにわたり、
                 人生そのもの」…「やっぱりここにいたいべ」
   『●中西宏明経団連会長《再稼働が進まない要因を、
      原発と原爆を同一視する地域住民の理解不足と決めつけ》?
   『●核発電「麻薬」中毒患者・中西宏明経団連会長自ら、
        ニッポンは《民主国家ではない》ことを立証して見せた
   『●「しなやかな反骨」をテーマに東京新聞のシリーズ対談:
       城南信金顧問・吉原毅さん×元文科次官・前川喜平さん
   『●《継承》《前例踏襲ばかり》の大惨事アベ様政権・スガ様…《故
     吉岡斉さん…「原発はリスクを伴う。過大な投資のつけは国民に回る」》
   『●城南信金元理事長・吉原毅さん「原発推進というのは明らかに国民全体の
     幸福に反すると確信したので、それはいけないと主張すべき…」

 大川原化工機については:

   『●人質司法による《身柄拘束は実に約十一カ月間》、大川原化工機の
     大川原社長ら…《こんなにひどいことはないと感じたという》青木理さん
   『●大川原化工機事件…でっち上げ事件、《勾留後に亡くなった1人を
     含め、会社側は起訴取り消しになっても大きな不利益を被りました》

 未来工業はいまどうなのだろう?

   『●「報われない国」の労働環境の「質」の劣化
    「人を大事にする経営で知られる岐阜県の未来工業(電気・ガス設備
     資材)は、全員が正社員で定年も七十歳。昭和四十年の創業以来、
     赤字はなく、社員約八百人の平均年収は六百二十万円(四十三歳)。
     好業績は社員の提案に基づく商品開発力にあるという。かつてと違い、
     大手企業からヒット商品が生まれないのも人件費削減に躍起な経営と
     無縁ではあるまい。/ところが安倍政権は「世界一企業が活動しやすい国」を
     掲げ、解雇しやすい正社員といわれる「限定正社員」など雇用流動化
     力を入れる。派遣労働についても規制緩和を一段と進める方針である」

   『●「報われない国」のこんな労働環境質の悪い中での希望の光
   『●「政策をカネで買う」経団連の企業行動憲章には
          「従業員のゆとりと豊かさを実現する」と謳っている

    【【私説・論説室から】儲かる秘訣を尋ねたら…】《「人材確保、
     人材雇用という時の、人材の『の字が気に入らない。人間は
     材料じゃない。財産の『』、人財と書くべきだ」
      型破りな経営で半世紀近く、目を見張る好業績を続けてきた
     名物経営者が七月末に逝った。岐阜県に本社がある電気設備資材
     メーカー「未来工業」の創業者、山田昭男さん。
      社員をとことん大事にした残業なしパートや派遣社員なし
     八百人の社員は全員正社員だ年間休日はおそらく日本一の百四十日
     有給休暇四十日を合わせれば一年の半分は休日になる。六十代社員の
     平均年収は約七百万円、それが定年の七十歳まで続く。
     「豊かな人生が、やる気を生む」という信念からだ。唯一社員に
     求めたのは常に考えること。アイデア、提案、何でも一件五百円で
     買い取り、それが国内有数のシェアにつながった。》

   『●「優しくすれば、社員もここを守りたいと働いてくれる」:
                 未来工業の創業者のお一人が亡くなる



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https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/315317

辛口の経済評論家 佐高信氏が「いい会社」と就活生に薦めたい企業3社
公開日:2022/12/05 06:00 更新日:2022/12/05 06:00

     (佐高信氏(C)日刊ゲンダイ)

 辛口の経済評論家として知られる佐高信氏の新著、「この国の会社のDNA」(発行/日刊現代)には帯に「裏・就職読本」とある。長年、日本の企業の身勝手、閉鎖性を取材し、警鐘を鳴らし続けてきた筆者が有名企業の「体質=DNA」を痛快に活写した本だが、その内容たるや表の就職読本はもちろん、ネットでもなかなか読めないものばかり、就活生に大いに参考になるからだ。

 例えば、東京電力を紹介するページでは2011年の株主総会の描写がある。入口に「撮影、録音、配信につきましてはご遠慮願います」と書いてあって、佐高氏は仰天したという。過去にも不祥事を起こした企業の株主総会は見てきたが、こんな無反省な会社は初めてだと佐高氏は驚く。同時に、記者が抗議すらしなかったことにがっくりする。そして、<居丈高な掲示に象徴されるように東電は株主に対してだけでなく社会に開かれていない利用者、株主、労働組合、そしてマスコミ、いずれのチェックもきかず、裸の王様になって迷走している>と佐高氏は書くのだ。

 まさに一刀両断、痛快だが、だとすると、そんな佐高氏が「いい会社」として、就活生に薦める企業はどこなのか。これが大いに気になってくる。そこで佐高氏に「これは」という3社をあげてもらった。佐高氏がこの3社についてどう書いたか。全文を紹介しよう。


■城南信用金庫

     (城南信用金庫の吉原毅顧問(C)日刊ゲンダイ)

 城南信金だけでなく、信金界のドンだった小原鐵五郎の遺したセリフがいい。

信用金庫は銀行に成り下がるな

 みんな成り上がりたがるが、「銀行に成り下がるな」は言い得て妙だろう。

 元理事長の吉原毅が元文部官僚の寺脇研前川喜平と語った『この国の「公共」はどこへゆく』(花伝社)によれば、吉原が大学を出て就職試験を受けた時、役員面接とかで、「銀行とは公共的な存在ですよね。私は公共的な仕事がしたいので銀行に勤めたいと思います」と言ったら、きょとんとされたという。

 また、愛読書を聞かれて太宰治の『人間失格』と答えて落とされた。

 信金も銀行と同じように利益だけを求めているのだろうと思ったら、前記の小原の言葉を知らされたのである。

 信金は公共的使命をもった協同組織金融機関であり、「世のため人のために尽くすことがわれわれの使命だ」と小原はためらいもなく言った。

 吉原の祖父は城南信金の常務理事だったが、吉原が4歳の時に強盗に襲われて亡くなっている。小原はその祖父の知人でもあり、信じられる人だと思って城南信金に入った。小原の言葉で有名なのに「貸すも親切、貸さぬも親切」というのもある。

 吉原は2010年に理事長となったが、翌年、あの東日本大震災が起こった。東京電力福島第1原発の大事故で大変なことになる。

 それを機に吉原は脱原発に踏み切った組織の方針をそのようにはっきりと決めたのである。多分、さまざまな圧力があっただろう。いまでもあるに違いない。しかし、城南信金はそれを貫いてきている

原発推進というのは明らかに国民全体の幸福に反すると確信したので、それはいけないと主張すべきだと思いました」と語る吉原は「原発推進で動くカネに目がくらむ企業は、企業としての誇りがなくなるはずです」とも言っている。


■久遠チョコレート

     (QUON(久遠)チョコレート代表の夏目浩次氏の
      インスタグラムから)

 『死刑弁護人』や『ヤクザと憲法』などのユニークなドキュメントをプロデュースしている東海テレビの阿武野勝彦と『俳句界』の2021年11月号で対談した時、彼が「チョコレートな人々」を映画にしようとしていると発言した。テレビで「久遠チョコレート」という50事業所ほど展開している会社を放送したのだが、「その後」を加えて映画化するというのである。阿武野の発言を引く。

「社長の夏目さんはいま40代なんですが、どんどん事業を展開しています。この人は、20代で、障害を持った人たちが最低賃金すらもらえていないという姿を見て、豊橋の商店街にパン屋を出して雇用したんです。その17年後、チョコレートに出会って転換。パンは、焼き損じたり、日が経ったりすると捨てないといけないですが、失敗してもチョコレートは温め直したらもう1回やり直せる。テンパリングなど作業にこだわりのある人に向ているかもということで。付加価値もパンより大きいので利益を貧困地域の子供食堂に充てたりと展開していく」

 放送後に、「使える障害者しか雇っていないんでしょう」という批判が出たので、社長の夏目浩次は「それならば、寝たきりの人もできる仕事を」とチョコレートを破砕する工房をつくった。「使える障害者」というコトバに私はひっかっかる。会社にとって使えるということだろうが、会社を人間に合わせてもいいのではないか会社本位主義をひっくり返す会社としても私はこの会社に注目したが、「社会をたのしくする障害者メディア」が謳い文句の『コトノネ』の42号に、夏目浩次が始めた久遠チョコレートが取り上げられている。

 夏目は都市設計の会社に勤めて「仕方がないを覚えろ」と教えられ、違和感を抱く。

 そして障害者施設と関わりができ、クロネコヤマトの宅急便の創業者、小倉昌男の『福祉を変える経営ー障害者の月給一万円からの脱出』を読んで、施設の人に問うた。

「そもそも1万円なんて月給じゃないよね」

 福祉はおカネじゃないと思っていた彼らはポカンとしたり、嫌な顔をした。

 そして夏目は障害者と共にパン屋を始めたが、見事に失敗する。パン屋は重労働の弱い事業だった。いろいろ考えて次にチョコレートをスタートさせる。

「人はみな凸凹あるわけなので、そのままでいいだろうって、それを無理に標準化させてはいけない。ありのままで、それをどういうふうに、凸凹組み合わせていくかっていうことを、チョコレートが実現させてくれた

 夏目はこう語っているが、仕事に合った人を選ぶより、人に合った仕事をつくり出す方がおもしろかったのである。既製服に合った人を探したり、無理矢理、レディメードの服を着せるより、ひとりひとりに合った服を見つけるか、つくる方に引かれるという夏目の発想は、とりわけ窮屈な日本の企業社会を超える道を示唆している


■大川原化工機

     (起訴取り消しについて思いを語る大川原化工機
      大川原正明社長(C)共同通信社)

 偏狭な政治によって優秀な中小企業が破綻の淵に追い込まれた大川原化工機の事件を語る前に、やはり現在のような中国排除(それに経済安保の名をかぶせる)に抵抗した倉敷絹織(現クラレ)の社長、大原総一郎について触れよう。

 大原社会問題研究所を設立した大原孫三郎の息子だった総一郎は企業の社会的責任を強調し、公害の発生者責任を高唱した

 その総一郎が1960年代に中国向けにビニロン・プラントを輸出しようとして、いわゆる台湾派の政治家や右翼のいやがらせを受ける。しかし、彼は自分の考えを曲げず、1年半にわたる粘り強い説得によって、時の首相、池田勇人や、ワンマン吉田茂、それに池田の次に首相になる佐藤栄作らを説き伏せ、このプラント輸出を認可させた。もちろん、中国との国交回復前で、アメリカや台湾の反対も激しかった。現在とよく似ているだろう。この時の思い出を、のちに総一郎はこう書いている。これは、対中プラント輸出を思いとどまれば、アメリカや台湾から商談が来る。その方がずっといいではないかと、彼を翻意させようとする財界人たちに対する答えでもあった。中国に対する戦争責任も総一郎の思想の根底にはあったのである。

 『世界』3月号に載った青木理のルポ「町工場vs公安警察」という大川原化工機事件についてのドキュメントを読むと、大企業だから大原総一郎は意思を貫くことができたのであって、中小企業は目をつけられたら逃れられないと、改めて経済安保なるものの危険性を痛感せざるをえない

 2020年3月11日、横浜に本社のある化学機械メーカーの大川原化工機の社長ら3人が警視庁公安部に逮捕され、330日以上にもわたって勾留された。生物兵器の製造にも転用可能な化学機械を無許可で中国に不正輸出したという容疑をかけられてだった。

 同社は経営理念に「平和で健康的な社会作りに貢献すると謳うほど平和への貢献にこだわってきた

 しかし、警視庁公安部外事1課の「強引で偏見に満ちた見込み捜査」によって、クロと認定される。そして東京地検が3人を起訴したが、初公判の4日前に検察が起訴を取り消すという異例中の異例の結果になった。それほどムチャな捜査だったということである。

 経済安保なるものが進められていけば、こうした例は増えていくだろう政治という名の歪んだ思想が生活に基づいた経済をつぶしていくのである

 同社は逮捕直後から銀行に融資をストップされ、部品の納入元や取引先との関係も大幅に制約されたという。それらは容易に元に戻らない


 ◇  ◇  ◇


 どうだろうか。どれも個性的で魅力あふれる社風である。佐高氏にどんな基準でこの3社を選んだのかも聞いてみた。

「寄らば大樹で会社に入ろうとする者にすすめる会社はありません。働く意味を求めて入社しようとする者にすすめられる会社を選びました」

 就活生はぜひ、参考にしてほしい。(文中敬称略)
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●《“表なし”なら“裏ばかり”じゃないかと痛烈に皮肉ったのはお笑い芸人の松元ヒロだった。権力といちゃつかないホンモノの反骨芸人》

2022年01月29日 00時00分29秒 | Weblog

[※↑ 映画『テレビで会えない芸人』(tv-aenai-geinin.jp)]


(20220125[])
長野辰次氏による、サイゾーのコラム【深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.669/“無自覚な自主規制”進むテレビの在り方を問うドキュメント『テレビで会えない芸人』】(https://www.cyzo.com/2022/01/post_300748_entry.html)。


【映画『テレビで会えない芸人』予告編】
http://tv-aenai-geinin.jp/trailer.php
tv-aenai-geinin.jp

 《ライブチケットはすぐに完売、会場をいつも爆笑の渦に巻き込む人気お笑い芸人がいる。だが、彼の姿を今のテレビでは見ることがない。鹿児島テレビが制作したドキュメンタリー映画『テレビで会えない芸人』は、そんなひとりの芸人を2年以上にわたって取材撮影したものだ。カメラは芸人の素顔だけでなく、テレビから彼が姿を消すことになった理由も浮かび上がらせている。テレビに出なくなった芸人の名前は、松元ヒロ。1983年にコミックバンド「笑パーティー」を結成し、『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ系)ではダウンタウンらを抑えて優勝している。89年には社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」を立ち上げた。時事ネタを扱う「ザ・ニュースペーパー」はテレビにも引っ張りだこだったが、設立メンバーのひとりだった松元は98年に「ザ・ニュースペーパー」から独立。ソロ公演では以前に増して鋭く政治問題に斬り込むが、テレビで彼のネタを見る機会はなくなってしまった》。

 佐高信さん《“時の人”の滝川クリステルが「おもてなし」とスピーチする映像が繰り返し流れる。それを“表なし”なら“裏ばかり”じゃないかと痛烈に皮肉ったのはお笑い芸人の松元ヒロだった。権力といちゃつかないホンモノの反骨芸人である》。
 ブログ主の好きなのは、断然、『憲法くん』だな。

   『●松元ヒロさん「憲法くん」は語る
   『●「パレスチナ」 『週刊金曜日』
         (2014年9月5日号、1006号)についてのつぶやき

    「■⑧『週刊金曜日』(2014年9月5日号、1006号) / 
     【佐高信の新・政経外科第11回/笑いが殺される日を前に】、
     「「安倍晋三の敵は松元ヒロ」……安倍は「違う」ことが
     嫌いな人で、友達がいません……安倍と同じ考えのコピーの
     ような〝友だち〟はいても、
     異なる考えをもった友だちをもつ幅やゆとりはないという、
     ヒロさんの指摘に私も共感します」」

   『●「ぼくらは差別が見えていない」 『週刊金曜日』
             (2014年5月9日、990号)

    「《松元ヒロさん【写日記その30】、「ドキュメンタリー映画
     『ザ・思いやり予算』…バクレーさんが
     「「ヒロさん、ギャラなんですが……」
     「大丈夫、『予算』がないんでしょ? 私の『思いやり』!」》。
     さすが「憲法くん」」

   『●「放射能と学校給食③」『週刊金曜日』
        (2013年6月7日、946号)についてのつぶやき

   『●『憲法くん』の誇りとは? 《私は六六年間、戦争という名前で
                他国の人々を殺したことがない。それが誇り》
    「東京新聞の竹島勇記者による記事【初恋の少年に誓った不戦 
     渡辺美佐子 映画「誰がために憲法はある」】」
    《「誰がために憲法はある」は危機感なき映画界への挑戦状
     ドキュメンタリー映画「誰がために憲法はある」が注目を集めている。
     これは、芸人・松元ヒロが舞台で演じ続けている日本国憲法を擬人化
     したひとり語り「憲法くん」を基にした作品。
     演じるのは、ベテラン女優の渡辺美佐子(86)。
     この短編を挟んで、初恋の人を疎開先の広島の原爆で亡くした渡辺が
     続けている慰霊の旅と原爆朗読劇のドキュメントが描かれる。
     朗読劇は渡辺が中心となって同世代の女優たちと33年間続けてきた
     もので、今年が最終公演。未来に託す戦争の記憶と女優たちの平和への
     思いが語られる。井上淳一監督(53)…》

   『●《歴史に名前》? 憲法99条無視な違憲な壊憲…《この憲法を
             尊重し擁護する義務を負ふ》はずのアベ様が…
    「マガジン9の記事【こちら編集部/誰がために憲法はある(芳地隆之)】
     …《映画『誰がために憲法はある』が上映され、その後に監督の
     井上淳一さん、製作の馬奈木厳太郎(まなき・いずたろう)さんによる
     舞台挨拶がありました。…一人芝居『憲法くん』の原作者である
     松元ヒロさん…。ここでは、映画全体の語り手である女優、
     渡辺美佐子さんが東京・麻布の小学生だったころ、通学路で顔を
     合わせ、ほのかな恋心を抱いていた水永龍男君のことを》」

   『●《戦争という名前で他国の人々を殺したことがない》
     『憲法くん』の《未来はわれわれ主権者に託されている》
    《「変なうわさを耳にしました。本当でしょうか。私がリストラされる
     かもしれないという話」。女優の渡辺美佐子さん(86)が演じる
     「憲法くん」が静かに語りかける。沖縄市のシアタードーナツで
     上映中のドキュメンタリー映画「誰がために憲法はある」の一場面だ
     …憲法くんの未来はわれわれ主権者に託されている
     無関心ではいられない》

   『●憲法の日に違憲に壊憲したいと言う…松元ヒロさん「私たちがこう言えば
        いいじゃないですか。『憲法に合わなかったら、政府を”変える“』」
   『●「憲法くん」…《「変なうわさを耳にしました。本当でしょうか。
     私がリストラされるかもしれないという話」。…無関心ではいられない》

 デモクラシータイムスの映像【松元ヒロが出ないテレビの裏を掘る 町山智浩さん 池田香代子の世界を変える100人の働き人 61人目 2022.01.13.】(https://www.youtube.com/watch?v=mQYQ_ueQET4)によると、《スタンダップ・コメディアン、松元ヒロを追ったドキュメンタリー映画「テレビで会えない芸人」をめぐって、今、映画やテレビが政治や社会を批判的に描くことがなぜこれほど困難なのか、カリフォルニア在住の町山智浩さんにアメリカの現状と対比しながら、日本の風刺芸とジャーナリズムの問題を深く掘り下げました》。


https://www.youtube.com/watch?v=mQYQ_ueQET4

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https://www.cyzo.com/2022/01/post_300748_entry.html

深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.669
“無自覚な自主規制”進むテレビの在り方を問うドキュメント『テレビで会えない芸人』
2022/01/13 18:00
文=長野辰次(ながの・たつじ)

      (コント集団「ザ・ニュースペーパー」を離れ、
       現在はソロ活動している松元ヒロ)

 ライブチケットはすぐに完売、会場をいつも爆笑の渦に巻き込む人気お笑い芸人がいる。だが、彼の姿を今のテレビでは見ることがない。

 鹿児島テレビが制作したドキュメンタリー映画『テレビで会えない芸人』は、そんなひとりの芸人を2年以上にわたって取材撮影したものだ。カメラは芸人の素顔だけでなく、テレビから彼が姿を消すことになった理由も浮かび上がらせている。

 テレビに出なくなった芸人の名前は、松元ヒロ。1983年にコミックバンド「笑パーティー」を結成し、『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ系)ではダウンタウンらを抑えて優勝している。89年には社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」を立ち上げた。時事ネタを扱う「ザ・ニュースペーパー」はテレビにも引っ張りだこだったが、設立メンバーのひとりだった松元は98年に「ザ・ニュースペーパー」から独立。ソロ公演では以前に増して鋭く政治問題に斬り込むが、テレビで彼のネタを見る機会はなくなってしまった。

 本作は、FNSドキュメンタリー大賞グランプリや日本民間放送連盟賞最優秀賞など多くの賞に選ばれたドキュメンタリー番組の劇場版。鹿児島テレビの四元良隆プロデューサーと牧祐樹ディレクターが共に松元ヒロを取材し、劇場版では共同監督としてクレジットされている。また、ドキュメンタリー好きとして見逃せないのは、『ヤクザと憲法』(15)や『さよならテレビ』(19)でテレビ界に波紋を呼んだ東海テレビ阿武野勝彦プロデューサーが制作に協力していることだ。

 東海テレビの一連のドキュメンタリー作品と同様に、『テレビで会えない芸人』も現代のテレビ局が抱える問題点をクローズアップしていく。松元ヒロがテレビに出なくなったのはなぜか? 序盤、鹿児島テレビの副調整室のモニターに松元が映し出される。そこに流れるのは、制作局長や制作部長ら現場責任者たちの声だ。

「今のテレビは気軽に見られるものが好まれる」
「やっぱり際どいネタを扱っているからでしょう」
「クレームとかトラブルとか、まぁ予防線は張っておきたいという……」

 テレビ局側が松元ヒロを敬遠するようになったのか、それとも松元がテレビから離れていったのか。その真相をカメラは探っていくことになる。


渋谷の交差点、松元ヒロとカメラは違うものを見ていた

      (妻の俊子さんとはパントマイム教室で出会い、
       26歳のときに結婚した)

「安倍総理が何と言ったか知っていますか? 『私が国家だ』と。コカインよりも危ないですよ」

 社会問題を軽妙な笑いに変え、満席の会場を沸かせる松元ヒロ。分厚いネタ帳を手に、稽古場で熱心にリハーサルを重ねる松元をカメラは追い続ける。自宅では、妻・俊子さんと漫才のようなコミカルなやりとりを見せる。終始、穏やかな表情をカメラに見せる松元だった。彼自身は別にテレビ取材そのものを嫌っているわけではないらしい。

 だが、インタビュアーが「(番組で)使っていいところ、悪いところがあると思います?」と問い掛けると、松元は「それを考えながら、テレビに出るのが嫌なんです」と答える。人当たりのよい松元だが、芸人としてのきっちりとした信念があることがうかがえる。

 松元が稽古の合間や公演前の控え室で食べるおにぎりとおかずは、俊子さんがいつも作ってくれるものだ。松元の売れない芸人時代を、俊子さんは働きながら支えてきた。舞台公演で稼ぐようになった松元だが、今も俊子さんには頭が上がらない。

 もうひとり、松元の生き方を大きく変えたのが息子の大地さんだ。「ザ・ニュースペーパー」で人気を得て、テレビにたびたび出ていた松元だが、ある時期から大地さんは父親が出ている番組を見なくなってしまった。

「どうせ、同じことをやってるだけだし」

 ひとり息子の言葉が、松元の胸に突き刺さった。松元は「ザ・ニュースペーパー」を辞め、ソロ活動を始める。ようやく売れっ子になった松元の決断に、俊子さんは反対しなかった。

 松元ヒロの人柄がよくわかるシーンが、冒頭にある。渋谷駅前のスクランブル交差点、大学時代の失敗談をカメラマンに向かってにこやかに語っていた松元だが、白杖を手にした女性がいることに気づき、明るく声を掛ける。白杖の女性は安心して松元の肩に手を載せ、交差点を渡り、電車へと乗車する。

 この場面、松元を取材していたカメラマンとインタビュアーは松元しか視界に入っておらず、松元が声を掛けるまで白杖の女性には気づかずにいた。渋谷のスクランブル交差点は、今の日本を象徴する場所だ。同じ場所にいながら、松元とテレビ局の取材クルーの目にはまったく異なるものが映っていたことになる。取材クルーは取材対象である松元だけを追っていたのに対し、松元は人混みの中にいた白杖の女性にいち早く気づき、自然な形で肩を貸すことができた。

 台本のある劇映画では、決して生まれない1シーンだ。松元の芸人としてというよりも、人間性が現れた瞬間だった


作品への向き合い方に違いがあった2人の監督

     (鹿児島テレビの副調整室。松元ヒロはテレビに出ないのか、
      それとも出せないのか?)

 本作を企画した経緯を、四元良隆監督はこう語る。

四元「15年ほど前、鹿児島生まれの音楽家・吉俣良さんを取材した際に『鹿児島出身で、すごく面白い芸人がいるけど、テレビではやれないネタばかりなんだよ』と教えてもらったんです。それが松元ヒロさんでした。テレビ局に勤めている自分としては、すごく気になったわけです。実際にヒロさんに直接お会いしたのは2019年2月でした。鹿児島での公演はすごく面白かった。でも、面白い人にカメラを向けるのがテレビなのに、なぜテレビはヒロさんを映さないのか疑問に思ったんです。公演を終えたヒロさんとお酒を一緒に飲む機会があり、ヒロさんが上機嫌だったこともあり『カメラを向けてもいいですか』と尋ねたところ、『いいですよ』と快諾してもらいました。すぐに局の了解を取り付け、3月から取材を始めたんです。ヒロさんは本当に取材するとは思っていなかったみたいですね(笑)」

 四元監督は1971年生まれ、牧祐樹監督は1983年生まれ。両監督はひと回り年齢が異なる。牧監督はそれまで地元の情報番組などを担当することが多く、『テレビで会えない芸人』は初めてのドキュメンタリー作品だった。取材当初、2人の間には作品への向き合い方に違いがあったという。

「四元から、東海テレビが制作した『ヤクザと憲法』などのドキュメンタリー作品を勧められて観たところ、『こんな題材もドキュメンタリーになるのか』という驚きがあり、いろんなドキュメンタリーをそれから観るようになったんです。そんな折に四元から『テレビに出ない芸人』を一緒に取材しようと誘われました。面白い企画だなとは思ったんですが、テレビに出ないというのが松元ヒロさんのポリシーなら、そのポリシーを曲げさせることにはならないかと気になりました。でも、四元と一緒に、また自分ひとりでも取材を進めていくうちに、いろんなことに気づかされました。それまではニュースを見ていても、自分はただの情報としか感じていなかったんですが、ヒロさんは決して他人事として考えない。社会の捉え方が、自分とはまるで違うことを思い知らされたんです」

 松元や彼の周囲を取材していくうちに、牧監督は新人のドキュメンタリー監督としていろんなことを吸収していく。牧監督の率直さが、本作の取材を進めていく原動力にもなったようだ。

「残念なことに本編からはカットしたんですが、ヒロさんが20年以上にわたって演じている演目『憲法くん』を題材にした映画『誰がために憲法はある』(19)を撮った井上淳一監督にも取材しました。井上監督は今のテレビの状況を『無自覚な自主規制がはびこっているよね』と語ったんです。その言葉にドキッとしました。テレビ側の人間が自分たちから表現を規制することで、テレビは豊さを失ってしまっていたそして、そのことに気づいていないことがいちばん怖いことだなと思えたんです」

 ドミニカへの移民問題を扱ったドキュメンタリー作品などを手掛けてきた四元監督は、鹿児島テレビの下の世代がドキュメンタリー制作に興味を持つことを待ち望んでいた。四元監督の思惑に、牧監督はうまくハマった格好となった。


6人目のドリフ」と呼ばれた伝説のコメディアン

     (鹿児島のシンボル・桜島を見上げる松元。
      公演だけでなく、別の目的もあった)

 売れない若手時代はテレビに出ることを強く望んでいた松元ヒロだが、今はテレビに出なくても食べていけることに幸せを感じている。作品の中盤、ナイーブな芸人の心情を理解する上で重要な人物が登場する。松元と同世代のベテランコメディアンである、すわ親治だ。すわは「ザ・ドリフターズ」の付き人を長年務め、ブルース・リーの物真似で超人気番組『8時だョ!全員集合』(TBS系)にたびたび出演していた。「6人目のドリフ」とも言われたが、正式なメンバーにはなることなく『8時だョ!全員集合』は放送を終えた。

 松元ヒロとすわ親治は、共に鹿児島出身で、鹿児島実業高校の同級生だった。松元がドリフを離れたすわを「ザ・ニュースペーパー」に誘い、「ザ・ニュースペーパー」は黄金期を築いた。苦労を共にした同郷人同士が酒を飲み交わし、本音を語り合う。2人の会話から、真相が見えてくる。人気を得た「ザ・ニュースペーパー」はテレビに出るようになったが、政治家の実名の言い換えをテレビ局側から求められるようになったスポンサーへの配慮だった権力者に噛みつく「ザ・ニュースペーパー」の牙が抜かれていくのを、松元は黙っていられなかったすわも同じ考えだった。2人は同時に「ザ・ニュースペーパー」を辞めることになる。

 2人が飲む焼酎の瓶のラベルには、「不屈不撓」と書かれている。「不屈不撓」は鹿児島実業の校訓だ。売れっ子芸人としてテレビに出続けることよりも、自分の信念を貫くことを2人は選んだ。いかにも薩摩っ子らしい一本気な性格ではないか。明治政府を辞めて、野に下った西郷隆盛のようでもある。

 鹿児島テレビが制作した初の劇場映画となる『テレビで会えない芸人』に、東海テレビの阿武野勝彦氏をプロデューサーとして招いたのは四元監督だった。ドキュメンタリー作品の授賞式などの場で顔を合わせていたことから交流が始まり、四元監督は企画や構成などで悩むと阿武野プロデューサーに助言をもらうという関係性を築いていた。

四元「いろんなところから『テレビで会えない芸人』は評価をいただき、劇場公開しようという声が出たんです。その際にも阿武野さんには相談に乗ってもらい、ドキュメンタリー作品を大切に扱う東京の映画配給会社『東風』を紹介してもらいました。名古屋にある東海テレビのプロデューサーが、鹿児島テレビの作品にプロデューサーとしてクレジットされるなんて異例のことですよね(笑)。『テレビで会えない芸人』はテレビ放送した30分版、60分版、そして81分の劇場版があるんですが、どの作品も阿武野さんの存在が大きかった。阿武野さんの著書『さよならテレビ』(平凡社新書)にも書かれていましたが、『これからはドキュメンタリーに恩返ししていきたい』という考えを阿武野さんは持っているのではないでしょうか」

 牧監督が語ったように、「無自覚な自主規制」はキー局だけでなく、名古屋や鹿児島のローカル局にも及ぶようになってきている。テレビ離れが進む今、スポンサーを失うようなトラブルは避けたい。また、取材対象者を気遣うあまり、深く踏み込まずに取材を済ませたライトな番組が増えてきているスポンサー、取材先、視聴者からクレームが来ないことを上層部は喜び、若いテレビマンたちはそんな番組づくりを踏襲していくことになる


テレビが忘れてしまったお笑いの本来の力

     (「テレビに出ている芸人はサラリーマン芸人」と立川談志は語った)

 ひとりのお笑い芸人の生き方を追うことで、『テレビで会えない芸人』は今のテレビの在り方を問い掛ける作品となった。メディアリテラシーをテーマにしているという点では、東海テレビの『さよならテレビ』とも共通するが、『さよならテレビ』が非常にシニカルな作風だったのに対し、『テレビで会えない芸人』は見終わった後に温かみを感じさせる作品となっている。松元ヒロという芸人のパーソナリティーが、作品全体に大きく影響している。

 松元ヒロが公演前に必ず行く理髪店がある。そこは作家の永六輔が通っていた店だ。松元が演じる『憲法くん』を、永は高く評価していた。永の直筆色紙が、理髪店には飾ってある。

「生きているということは 誰かに借りをつくること
 生きてゆくということは その借りを返してゆくこと」

 この言葉に励まされ、松元はひとり、舞台へと上がる。

 誰にも迷惑を掛けずに生きようとすれば、世界はどんどん狭くなっていく一方だ。息苦しさも増していく。誰かに借りをつくったのなら、いつか別の誰かにその借りを返せばいい。世界はそうして広がっていく。テレビで会えない芸人を追ったドキュメンタリーは、テレビが忘れていた、誰にも忖度しない本来のお笑いを思い出させてくれる。そして、その笑いの中には社会の風通しをよくする力が備わっている。


テレビで会えない芸人
監督/四元良隆、牧祐樹 プロデューサー/阿武野勝彦
撮影/鈴木哉雄 音楽/吉俣良
出演/松元ヒロ
配給/東風 1月14日(金)より鹿児島ミッテ10、ガーデンズシネマにて先行公開、1月29日(土)よりポレポレ東中野、大阪・第七藝術劇場、京都シネマほか全国順次公開
©2021鹿児島テレビ放送
tv-aenai-geinin.jp


長野辰次
フリーライター。著書に『バックステージヒーローズ』『パンドラ映画館 美女と楽園』など。共著に『世界のカルト監督列伝』『仰天カルト・ムービー100 PART2』ほか。
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●《他局の方がおっしゃったという「東海テレビはまだ持ちこたえていると思った」の根拠となるような底力を感じます》

2020年05月25日 00時00分53秒 | Weblog


2020年1月のサイゾーのインタビュー記事【東海テレビ『さよならテレビ』映画化記念インタビュー前編 テレビは本当に「終わって」いるのか? 東海テレビ自ら現場に切り込むテレビ報道の“自画像”】(https://www.cyzo.com/2020/01/post_227335_entry.html)。
その後編【東海テレビ『さよならテレビ』映画化記念インタビュー後編 ヤクザに人の生死、そして報道の裏側……東海テレビがドキュメンタリーを作り続けるワケ】(https://www.cyzo.com/2020/01/post_227374_entry.html)。
 アップするのが遅くなりました。1月の記事。

 《自らを取材対象とし、テレビ局、特に報道の現場の今をつまびらかにした(ように見えた)このドキュメンタリーは、企画からして挑戦的だった。結果、テレビ局のリアルな姿に真摯に向き合った様子を示したが、見る人によっては「不都合な真実」のようにも受け取られる内容となった。放送関係者の間では賛否両論が吹き荒れ、あなたの、あの人の、あの部署の反応や見解を知りたくて、東海地域の番組だったにもかかわらず、録画DVDが広がっていったのだった。そんな放送業界に激震を与えた東海テレビだが、ドキュメンタリー番組の劇場公開を複数実施しているという顔も持っている》。
 《東海テレビが制作し、東海テレビの放送エリアだけで流れたドキュメンタリー番組『さよならテレビ』では、自らを取材対象とし、テレビ報道の現場をつまびらかにした挑戦的な企画で話題を呼んでいる。放送業界に激震を与えた同作を視聴した森永真弓氏が、ディレクターを努めた圡方宏史と、プロデューサーの阿武野勝彦に、その制作現場について聞いたこのインタビュー。後編では、制作側の意図を超えた“意外な反応”やテレビ番組のあり方のこれからについて聞いた》。

   『●『創 (12月号)』読了 (2/2)
   『●ドキュメンタリー『死刑弁護人』: 
      バッシングされ続ける「死刑弁護人」安田好弘さん
   『●司法権力の〝執念〟: 映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』
   『●子供にもSLAPPする国: 三上智恵監督・
        映画『標的の村 ~国に訴えられた沖縄・高江の住民たち~』
   『●木下昌明さん、『死刑弁護人』映画評
   『●血の通わぬ冷たい国の冷たい司法: 「奥西勝死刑囚(87)
                     ・・・・・・死刑囚の心の叫び」は届かず
   『●無残!……『朝日』は、素人に《人を裁くという経験を通じ、
               死刑と向き合い、是非を考え》させたいらしい

   『●「テレビ業界で煩悩し格闘している人は決して少なくない」
              …「隠された歴史を掘りおこす」地方テレビ局
   『●「自主規制、政権を忖度、報道の萎縮」なテレビ業界で、
              「『よく撮って、知らせてくれた』…お褒めの声」
   『●「自主規制、政権を忖度、報道の萎縮」なテレビ業界で…
             東海テレビ『ヤクザと憲法』の意味が、今、分かる
   『●《新聞を含むマスコミは…「客観中立で、常に事実と
     正論を語る」という自画像を描き、自ら縛られてきた》

   『●東海テレビ…《テレビの危機的な現状を自ら裸になって提示
         …とはいえ…「テレビ局が抱える闇はもっと深い」》
    《東海テレビ制作の映画「さよならテレビ」の試写を見た。
     数々のドキュメンタリー作品を世に問うたことで知られる同社の
     取材班が、なんと、自社の夕方のニュース番組を制作する報道局の
     現場を2年間にわたって追跡し、2018年の同社開局60周年
     記念番組として放送。言論機関としてのテレビの危機的な現状を
     自ら裸になって提示しようという、その蛮勇ともいえる試みが
     話題になった》

 印象に残った一言。《阿武野 当時の社長が、放送を見て私に聞いてきたのは「この番組はテレビに対する愛があるのか?」です。そこで、僕は「愛がなければこんな番組はできません」とはっきり言いました。それで納得してくれました》。

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https://www.cyzo.com/2020/01/post_227335_entry.html


     (映画 ドキュメンタリー 東海テレビ さよならテレビ)

 昨年から、放送関係者の間で「絶対見たほうがいい」と「裏ビデオ」のように出回り、さまざまな場で話題に上がっていたテレビ番組がある。

 東海テレビが制作し、東海テレビ放送地域で流れたドキュメンタリー番組『さよならテレビ』。自らを取材対象とし、テレビ局、特に報道の現場の今をつまびらかにした(ように見えた)このドキュメンタリーは、企画からして挑戦的だった。

 結果、テレビ局のリアルな姿に真摯に向き合った様子を示したが、見る人によっては「不都合な真実」のようにも受け取られる内容となった。放送関係者の間では賛否両論が吹き荒れ、あなたの、あの人の、あの部署の反応や見解を知りたくて、東海地域の番組だったにもかかわらず、録画DVDが広がっていったのだった。

 そんな放送業界に激震を与えた東海テレビだが、ドキュメンタリー番組の劇場公開を複数実施しているという顔も持っている。

 暴力団事務所に100日間密着し、ヤクザたちの日常を描いた『ヤクザと憲法』。「本当の豊かさとは何か」を樹木希林さんのナレーションで問いかける『人生フルーツ』は、劇場公開で26万人を動員している。「放送エリアではなく見る手段がないだけに、お金を払ってでもどうしても見たい」と思わせる、異色かつ力強いドキュメンタリー作品を世の中に生み出し続けている。そんな東海テレビが、自社の報道局の内幕を部分的に映し出したこの作品。そこには、報道と視聴率、テレビ制作者の置かれた労働環境といったさまざまな問題の、リアルな様子が描き出されている。

 テレビ局の赤裸々な姿が、何故ドキュメンタリー番組の対象となるとテレビ局が考えたのか? どんな意図が、どんな思いがあったのか? 今回、映画化を記念して、マスメディアのマーケティング関係の仕事を手掛け、実際に「裏ビデオ」段階で同作を視聴した森永真弓氏が、ディレクターを務めた圡方宏史と、プロデューサーの阿武野勝彦に聞いた。

◇ ◇ ◇

──2018年9月に東海テレビ開局60周年記念番組として放送された『さよならテレビ』が、2020 年1月2日から映画作品として公開されます。そもそもこの企画は、どのようにして始まったのでしょうか?

圡方 プロデューサーの阿武野に、自分たちのテレビ局を舞台にしたドキュメンタリーを作りたいと話したところ、「自画像」というキーワードを出されました。「自画像」という意味では、まず東海テレビ自身を取材しなければならない。なかでも、他の部署ではなく、撮影する自分たちの自画像を描くべきではないかと考え、自分の所属する報道局に、1年7カ月カメラを置いたんです。

 当初は、そこからバラエティ番組の部署などに取材を広げていくとか、ほかのテレビ局にまでいくとか……いろいろな構想もあったのは確かです。しかし取材を重ねるうちに、様々な組織を追うよりも、登場人物たちに迫ったほうがドキュメンタリーとして魅力的になるなと。さらに同じ場所で撮影を続けることで、組織の変化や揺れ動きも浮き上がって見えてくる。結果的に報道局のみに焦点を絞った内容になりました。

阿武野 テレビの歴史は、報道から始まりました。報道は一番根っこの部署です。だからテレビらしさは、報道に凝縮していると思うんです。報道を追いかけることで見えてくる問題は、バラエティなどにも共通すると思うんです。いろいろな部門でカメラを回せば良かったと思うのですが、後日「『さよならテレビ』営業版も作ってほしい」と営業局長から言われました。


「撮るな!」のシーンが業界内で波紋

──ほかの局にも話を広げる可能性があったんですね。映像の中では、報道局にカメラを置こうとすると、部署内に不穏な空気が漂い、撮影スタッフに対してデスクが「撮るな!」と怒りを顕にする部分もありました。あれはネットで書かれがちな「テレビ局の闇!」のようなステレオタイプな悪いイメージを象徴するシーンが、そのまま現れたようにも見えました。

阿武野 闇だなんて。そんな意図はありません。そんなにこの取材は歓迎されていないというジングル程度だったのですが、東京キー局のキャスターが「テレビは今みんなこんなだよ、でもうちはもっとひどい」と言ったので、ちょっとびっくりしました。テレビの業界全体的に、現状を憂う人は沢山いて、「今変われないとまずい」という共通認識がある。そう考えている人たちを刺激したシーンの1つですね。

圡方 そうですね。ただ、あの「撮るな」というシーンを見て、あるテレビ局関係者からは「東海テレビはまだ持ちこたえていると思った」と反応もあったんです。

──「持ちこたえている」というのは……「自分のいる現場よりはマシ」に見えた人もいたということでしょうか?

圡方 いま、テレビ界には、撮られることを嫌だとすら感じなくなっているほど、機械的に仕事をしている人も多いということなんです。特にキー局は組織が大きいですし、仕事がシステマティックになっている分、問題も深いのかもしれません。「撮られることを嫌がるというのは、まだ自意識もあり、撮られる人の気持ちもわかるという人達が集まっている現場の証拠なんじゃないか」ということだと思います。

── 放送後、業界にDVDが出回って、各方面からの感想を聞かれたと思います。「えっ? そんなこと考えるんだ?」と、制作者からするととても驚いたもの、想定外だったものなどはありましたか? 逆に「想定内、想定内」と思ったこととか。

阿武野 全体的に、見る人によって感想が全く異なっていますね。経営者、管理職、社員、組合員、派遣、請負い、アルバイトなどいろいろですね。驚きなのが、「これはみんな演じているのか?」と聞いてくる人も結構多かったですね。

圡方 だいたい全部驚きましたよね。「そんなとこ気になるんだ!」、「そんな解釈するんだ!」って。「最後救われました」って言った人もいて、正直「へえ、そうなんだ」って。

阿武野 そもそもこのDVDがこんなに出回ったことが驚きでしたね。凄まじい数だったと思うんです。東海、北陸、東京だけでなく東北、九州、北海道でも「アレ見ました」と声をかけられましたし、名古屋ローカルの番組の影響がこんなに広がったことが驚きでした。「どうやったら見られますか」と聞かれたこともたくさんありました。ローカルで放送したドキュメンタリーが何の賞を取ったでもなく、こんなに反響があることは、今までないですね。
 その中で、ジャーナリズム関連の本を本棚にずらりと並べていた澤村慎太郎記者のシーンについて、さまざまな人から「あれは本当なのか?」という声をもらいました。「この場面がそんな気になる?」って、ねえ?(圡方氏を見る)

圡方 でしたねえ。


澤村記者の本当の姿はそう簡単に解釈できない

──その澤村記者のシーン、私もかなり気になったんですよ。「今のテレビは大切なものを伝えていないのではないか」と問題意識を投げかける、ジャーナリスト意識が高い澤村記者が、ものすごく熱く語っているのに、映像では本人ではなく執拗なまでに部屋の本棚にずらっと並ぶ、ドキュメンタリ関連の新書が並ぶ様子を映し続けていたのが印象的でした。

阿武野 あれ実は、ロケ用のセットなんです。

──ええええええ!?!?

阿武野 ……と、言うと、みんな「ほーっ」て、信じてしまう(笑)。

──え、あ、ちがうんですね、ほんとに? ちがうんだ、良かった……いや本当に、本当に信じかけましたからね?(笑)。「やだこれ人に言えないじゃん」と思ってしまいましたよ。ああびっくりしました。……一応念の為確認しますけど本当にセットじゃないんですよね?

阿武野 (笑)。それくらい、どこが現実で、どこがフィクションなのかわからなくなってしまうんでしょうね。それこそ、製作者の術中ですよ。

──正直なところ、あの本棚に並ぶ本をずっと見ているうちに、澤村さんは魂を持って行動する真のジャーナリストなのか、それとも、ジャーナリズムの本をひたすら読んでいるだけのジャーナリストに憧れているだけのサラリーマンなのか、どちらなんだろうかと不安を覚えたんですよね……。

阿武野 そうなんです。あの本棚の並びを見て「あんなに様々な本を読んでいる、澤村記者は素晴らしいジャーナリストだ」と感じる人もいました。一方、映像の中には「このネタは今行かないとだめですよ」と圡方にけしかけられ、煮え切らない部分も描かれています。反発しながらも、しっかりドキュメンタリー制作に協力しているシーンも出てくる。澤村記者の本当の姿は、そう簡単に解釈できません。私たち製作者が思う以上に、いろんな見方をされるんだなとも感じました。
 ただ、澤村記者が勉強家であることは確かです。今のテレビ局の記者はあんなに勉強してません。そもそもあの映像に写っている本は、彼の蔵書の本のごく一部だそうです。実に勉強家です。

圡方 僕は澤村記者と話していて「こんなに勉強しているのか」と驚いた方なんです。確かに、映像に写っている本の傾向はイデオロギー的に偏っているように思えますが、彼は、内容はもちろんその背景までをもしっかりと読み込んでいます。右であれ左であれ、あれだけ本を読んでいるテレビマンはあまり見かけません。「事件をどのように報じるべきか?」「メディアはどうあるべきか?」「自分は事件から何を感じているのか?」といった、メディアの倫理を考えて仕事に取り組んでいる人は、今のテレビの世界には少なくなっているんじゃないでしょうか。自分の意見があるというか。もっと上の世代にはいたのかもしれないのですが。
 自分を含め、最近のテレビの人間は「どうやったら見てもらえるか」あるいは、もっと消極的に「どうやったら叩かれないか」と、受け手の反応だけを過剰に意識して制作している人が少なくありません。映像の中にあるように、澤村記者から「テレビの闇はもっと深いのではないか?」と問われて、自分自身も答えられませんでしたからね。

──あれは、本当に言い淀んでいたんですね。「相手の反応をもっと引き出すために敢えて答えない」という手法なのかととらえてしまっていました。実は「ここで黙って更に言わせようとするのはちょっと意地悪だなー」とまで思っていたんですが、考えすぎだったんですね(笑)。そんな、言い淀んでしまった部分を、あえてカットせずに使ったのはなぜでしょうか?

圡方 え、そんな見方をされてたんですね。面白い。あれはもう、本当に答えられなかっただけですよね。意見を持っているという段階で、澤村記者を単純に凄いと思っていました。情けない姿ではありますが、僕自身もまた東海テレビの社員であり、報道局に所属しているメンバーであり、ドキュメンタリーの取材対象の1つなんですよね。そういう意味で、典型的なテレビ局社員の姿として「答えられない」姿を残したほうがいいなと。


いつの日か、東海テレビも生まれ変わるかもしれない

──え? 圡方さんも、取材対象の中の人ということですか?

阿武野 そうです。圡方自身ニュースデスクであり、よく見ると、映像の中で圡方が通常業務中に上司から怒られている姿も映し出されています。自分たちを描く以上、自分の足場までを含めてしっかりと見せていかなければならない。だって、自社の報道局を映している以上、カメラは自分にも向いているんですからね。

──まさに「自画像」として作っているんですね。

阿武野 はい。カメラを自分に向けるには、尋常じゃない覚悟が必要です。よく、他のテレビ局の人が「うちではこんな企画はできない」と言うのですが、とても残念に思います。「できない」のではなくやらないだけ。それは、覚悟もないまま発せられる言葉なんです。
 今回の企画を通じて、さまざまなテレビ局の方々と勉強会をしました。今のテレビは破局に向かって切迫しているんじゃないか、自分たちの時代感覚はどうなのか?これをきっかけに、若い人たちがいろいろな表現にチャレンジしてくれたら嬉しいと、いろいろなところに出向きました。名古屋発で描いた自画像が、いろいろなところで、いろんな受け止められ方をして、いつの日か、東海テレビも生まれ変わるかもしれない。
 『さよならテレビ』は、テレビの世界に波風を立てました。この波風を追い風にして、若い人たちには冒険して欲しいんです。


インタビュー|森永真弓

構成|萩原雄太(かもめマシーン)

阿武野勝彦
1959 年生まれ。同志社大学新聞学科卒業、81 年東海テレビ入社。アナウンサーを経てドキュメンタリー制作。 主なディレクター作品に「村と戦争」(95・放送文化基金賞優秀賞)、「約束~日本一のダムが奪うもの~」(07・ 地方の時代映像祭グランプリ)など。プロデュース作品に「とうちゃんはエジソン」(03・ギャラクシー大賞)、「裁判長のお弁当」(07・同大賞)、「光と影光市母子殺害事件 弁護団の 300 日~」(08・日本民間放送連盟賞最優秀賞)など。 劇場公開作は『平成ジレンマ』(10)、『死刑弁護人』(12)、『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(12)、『ホームレス理事長 退学球児再生計画』(13)、『神宮希林』(14)、『ヤクザと憲法』(15)、『人生フルーツ』(16)、『眠る村』(18)でプロデューサー、『青空どろぼう』(10)、『長良川ド根性』(12)で共同監督を務める。個人賞として、日本記者クラブ賞(09)、芸術選奨文部科学大臣賞(12)、放送文化基金賞(16)など。東海テレビドキュメンタリー劇場として、菊池寛賞(18)。

圡方宏史
1976年生まれ。上智大学英文学科卒業、98年東海テレビ入社。制作部で情報番組やバラエティ番組のAD、ディレクターを経験したのち09年に報道部に異動。遊軍としてメイン企画コーナーのVTRを担当する。11年、12年に日本の農業や交通死亡事故をテーマにした啓発キャンペーンCMなどを製作。『ホームレス理事長 退学球児再生計画』(13)でドキュメンタリー映画を初監督。公共キャンペーン・スポット「震災から3年~伝えつづける~」で、第52回ギャラクシー賞CM部門大賞、2014年ACC賞ゴールド賞を受賞。公共キャンペーン・スポット「戦争を、考えつづける。」で2015年ACC賞グランプリ(総務大臣賞)を受賞。2016年、監督第2作となる『ヤクザと憲法』(15)を劇場公開し大反響を呼ぶ。
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https://www.cyzo.com/2020/01/post_227374_entry.html

東海テレビ『さよならテレビ』映画化記念インタビュー後編
ヤクザに人の生死、そして報道の裏側……東海テレビがドキュメンタリーを作り続けるワケ
文=日刊サイゾー編集部(@cyzo)

     (映画 東海テレビ さよならテレビ ドミュメンタリー)

 東海テレビが制作し、東海テレビの放送エリアだけで流れたドキュメンタリー番組『さよならテレビ』では、自らを取材対象とし、テレビ報道の現場をつまびらかにした挑戦的な企画で話題を呼んでいる。

 放送業界に激震を与えた同作を視聴した森永真弓氏が、ディレクターを努めた圡方宏史と、プロデューサーの阿武野勝彦に、その制作現場について聞いたこのインタビュー。後編では、制作側の意図を超えた“意外な反応”やテレビ番組のあり方のこれからについて聞いた。

◇ ◇ ◇

──『さよならテレビ』の制作後、社内ではどのような反響があったのでしょうか? 作中に「試写会は必ずする」という約束が出てきましたが、結局試写会の様子は描かれていませんよね。

圡方 作品として全体を見たときに最後に、更に社内でのハレーションを加える必要はないなと思ったので入れませんでした。ちなみに試写で揉めたということはなかったです。どちらかといえば阿武野プロデューサーの作戦が凄くて……。直す時間がないというオンエアの2~3日前に試写をやって、感想を聞く場もなく即解散という。まああのあと各々は飲み会なんかして話し合ったりしたのかなあと思いますけど。

阿武野 ドキュメンタリーは、取材対象に放送前に見せないものです。身内を描こうが、外部を描こうが、それは同じで良いと。でも、行きがかり上、試写会を開くと約束してしまった。だけど、試写をしたら、それで終わり。ありがとうございましたと。放送直前に、ああだこうだ言われても困りますし、意見聞いてもそれを反映して編集し直すことはしないですからね。いつもと同じですが、取材者と取材対象は、放送について議論する必要はないと思いました。意見は、放送後にいつでもたっぷり寄せなさいよと。

──放送後、意見を聞く場をもうけたのですか?

阿武野 放送終了後に、全社に呼びかけて質疑応答のティーチ・インを開催しました。かなり厳しい反応も飛び交いましたね。特に、50代以上のベテラン層からは「とんでもないものを放送した」「東海テレビのイメージを毀損しているんじゃないか」「敢えてよくないイメージだけを切り取って作っているのではないか」という意見を浴びせかけられました。

圡方 年齢やキャリアの長さで反応は違いましたね。年齢を重ねた社員は、仕事と自分のアイデンティティが一体化している人も多い。そうなると、テレビのマイナス面を描かれたことが、あたかも自分自身が傷つけられたように感じられたようです。

──そんな反応を浴びて、どのように返答したのでしょうか?

阿武野 「自分のつま先だけを見て言わないでほしい。もっと遠くに視線を投げてほしい」と反論しました。50代のテレビマンは、まだテレビの影響力が大きいうちに退職を迎えられる、いわば逃げ切り世代です。しかし、もっと先を見て手を打っていかなければ、若い世代にこの組織をつないでいけません。ティーチ・インでは、若い世代は、この番組を「面白いと素直に言えない組織はヤバイ」と言ったし、「もっと自由に表現をしていいんだ」ということに気づいてくれたようでしたね。


■この作品を見た上層部の反応は?

──テレビ業界の中でも、世代によって反応が異なるんですね。もう1つ気になるのが、これを見た上層部の反応です。どのように見たのでしょうか?

阿武野 当時の社長が、放送を見て私に聞いてきたのは「この番組はテレビに対する愛があるのか?」です。そこで、僕は「愛がなければこんな番組はできません」とはっきり言いました。それで納得してくれました。

──なるほど。上層部の理解があったからこそ、業界全体の話題をさらうような企画が成立したんですね。他局の方がおっしゃったという「東海テレビはまだ持ちこたえていると思った」の根拠となるような底力を感じます。
 さてこれまで、東海テレビのドキュメンタリーは『人生フルーツ』や、『ヤクザと憲法』など11本が映画化されていますが、今回『さよならテレビ』も映画として公開されました。

圡方 『さよならテレビ』の場合、放送の時点から映画化が決まっていたわけではなかったです。テレビバージョンをつくったあとに、これは全国の人々に見てもらったほうがいいということになり、映画化の話が進んでいったんです。

阿武野 これまで、東海テレビのドキュメンタリーは11本を映画として公開してきましたが、いつでも公開する時には恐怖を覚えます。テレビで放送することも怖いけれども、映画の観客は、映画館でお金を支払って見に来ますよね。そんな人々の反響はいつもすごく怖いし、その分、とても楽しみです。

──テレビ放送版と映画版両方を見させていただいて感じたことがあります。テレビ放送版は「テレビの報道現場の今はどうなっているのか」がテーマですが、映画版になってそこに「ドキュメンタリーとはなにか」というテーマが加わったんじゃないか、と。

圡方 へえ! それはまた新しい感想です。どのへんでそのように感じられました?

──テレビ放送版よりも作品の長さがあることによって、シーンが増えてますよね。その増えた分の中に、敢えてきつい表現を選ぶならば「露悪的」というか、「実はここ、こういう仕込みをしてました」と制作のネタバラシが多く含まれている印象を受けまして。ありのままを切り取るはずのドキュメンタリーでそこを見せるというのは、問題提起したいことのひとつなのかな、と感じたんです。

圡方 それは考えすぎかもしれません(笑)。そもそもの制作の工程をお話すると、まず今回の映画版とほぼ同じ長さのものを作ったんです。で、そこから削ったのがテレビ版です。もともと映画になったらいいね、と意識して作ったというのもありますし。その後、映画も作ろうということで、もともとの長さのものを生かしたという形ですね。なので、映画に作り変えるときになにかテーマを足したということはないんです。たまたまそう見えたってことなんじゃないでしょうか。

──なるほど……。映画版でも、テレビ版でも、作り手側が恣意的に加えた変化はないということなんですね。いやたしかに、深読みしすぎでした(笑)。
 ところで、ドキュメンタリーを映画で上映することに対して、東海テレビは積極的ですが、ネット配信やDVD販売などはしていませんよね。これはなぜなのでしょうか?

阿武野 みんなが流れていく方向に行くのはあまり好きではないというのもありますね。一人の世界で、ネットで楽しんでもらうよりも、映画館に足を運んでもらい、不特定多数の人とともに、周囲の息遣いを感じながら作品を見てもらいたいというのが希望です。テレビがパーソナルメディアになっていっているからこそ、ネット配信やDVDといったよりパーソナルな方向ではなく、映画というソーシャルな方に向かうことが大事なのではないかと考えています。

──パーソナルな形で受容されてしまう一方、より多くの人々に見てもらうことがでるのがネット配信の魅力です。それを捨てでもやらないのは、どんな考えからなのでしょうか?

阿武野 ネット配信の場合、どうしてもお手軽で「消費」というイメージがあります。そうではなく、自分たちの作品の、もっと大事な手渡し方があるのではないか。それに、もしも、これまでの作品もネット配信をしていたら、ここまで東海テレビのドキュメンタリーに注目してもらえることはなかったでしょう。映画館でしか見られないからこそ、特別感がある。ただ消費されるものにならないような手渡し方の工夫があってもいいんじゃないかなと

圡方 僕自身、通勤途中などでNetflixを見ていますが、どうしても細切れになってしまいますよね。映画館で見た時には涙するほど感動的だったはずの作品が、配信で通勤時間で細かく割って少しづつ見ると、あの時の感動がすっかりと抜け落ちてしまうんです。ディレクターとしては、自分の作ったドキュメンタリーがそのように消費されるのはやはり寂しいなと思ってしまうんですよね。最後まで集中して見た結果、生まれるリアクションを見たいんです。
 映画館ならば、最初から最後まで集中して見てもらうことができる。そして、上映後には見た人のリアクションにも直接触れることができます。テレビやネットなどでは、視聴者のリアクションを見ることはできないですからね。


■観客の反応が帰ってくる場所に身を置くと気持ちが生き返る

阿武野 私たちの製作スタッフは、映画館に足を運び「お客さんがこんなふうに笑っていた」「こんなポイントで泣いていた」と報告しあいます。テレビとは違って、観客の反応が帰ってくる場所に身を置くと、作り手としての気持ちが生き返るような気がします。ネット配信に比べれば少ない人数なのでしょうが、そんな反応を得ることは代え難いものです。

──では最後に。『さよならテレビ』は、映画館でどんな反応が返ってくると思いますか?

阿武野 怖いですよね。テレビも不特定多数に出す怖さがありますが、映画はお金を出して映画館に観に来てくれる生身の人たちですから、凄く怖いです。でも、それは、すごく楽しみでもあります。

圡方 自分たちのことを描いているので、極論すれば「これはドキュメンタリーなのか」さえも自分ではよくわからないんです。自分自身20年以上テレビの現場で働いているベテラン選手なので、用語とか業務の流れとか当たり前に感じていることが多すぎて、一般の人たちが見て何がわからないのかもわからないんですよね。どこに常識のラインを置くかということもとても気をつけました。

──業界で話題になったときとはまた違った種類の感想も出てくるかもしれないですね。

圡方 おそらく、みんなが「満足せず」に帰るのではないかと思っています。『さよならテレビ』は、テレビのいい部分を描くわけでもなく、かといって、ありがちな『テレビの闇』を描いているわけでもない。テレビを取り巻く構造には問題が多いものの、そこで働く個人を見れば、決して憎めないことがわかります。スッキリとわかりやすい結論を得られる内容ではないんです。よくまとまっていた、って言われるのが作り手としては一番悲しいんですよね。


インタビュー|森永真弓
構成|萩原雄太(かもめマシーン)
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●東海テレビ…《テレビの危機的な現状を自ら裸になって提示…とはいえ…「テレビ局が抱える闇はもっと深い」》

2020年01月06日 00時00分26秒 | Weblog


日刊ゲンダイのコラム【高野孟 永田町の裏を読む/「さよならテレビ」はテレビ局が抱える“闇”の一端が見える】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/263030)。

 《東海テレビ制作の映画「さよならテレビ」の試写を見た。数々のドキュメンタリー作品を世に問うたことで知られる同社の取材班が、なんと、自社の夕方のニュース番組を制作する報道局の現場を2年間にわたって追跡し、2018年の同社開局60周年記念番組として放送。言論機関としてのテレビの危機的な現状を自ら裸になって提示しようという、その蛮勇ともいえる試みが話題になった》。

   『●『学校が教えないほんとうの政治の話』(斎藤美奈子著)読了
                …《あなたの政治的ポジションを見つけて…》
    《だいたいみんな、このごろ、まちがえてんのよね。
     「偏らないことがいいことだ」「メディアは中立公正、不偏不党であるべきだ」
     「両論を併記しないのは不公平だ」。そういう寝言をいっているから、
     政治音痴になるのよ、みんな。》
    《あのね、政治を考えるのに「中立」はないの。メディアの役目は
     「中立公正、不偏不党な報道」ではなく「権力の監視」なんです。
     それ、常識。》
    《党派性をもたずに政治参加は無理である。》

 アベ様の政で〝唯一うまく行っている〟《メディアコントロール》。「自主規制、政権を忖度、報道の萎縮」なテレビ業界で…。アベ様のNHK下足番新聞など、メディアがアベ独裁広報機関・広報紙・広報誌となって久しい。そんな中、東海テレビは注目に値する。
 《言論機関としてのテレビの危機的な現状を自ら裸になって提示…とはいえ…「テレビ局が抱える闇はもっと深い」》。《メディア再生の試み》はどこまで功を奏しただろうか。

   『●『創 (12月号)』読了 (2/2)
    「森達也さん『極私的メデェア論』第38回「視点が違えば世界は違う」
     …《フジテレビで一本のドキュメンタリー番組が放送された。タイトルは
     「光と影~光市母子殺害事件弁護団の300日」。…プロデューサーの
     名前は阿武野勝彦。そしてディレクターは斎藤潤一。…テレビ業界で
     煩悩し格闘している人は決して少なくない。…「鬼畜弁護士を被写体に
     するお前が鬼畜だ」と罵倒されたという。…非当事者である僕たちが、
     本当の意味で共有など出来るはずがない》」

   『●ドキュメンタリー『死刑弁護人』: 
      バッシングされ続ける「死刑弁護人」安田好弘さん
   『●司法権力の〝執念〟: 映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』
   『●子供にもSLAPPする国: 三上智恵監督・
        映画『標的の村 ~国に訴えられた沖縄・高江の住民たち~』
   『●木下昌明さん、『死刑弁護人』映画評
   『●血の通わぬ冷たい国の冷たい司法: 「奥西勝死刑囚(87)
                     ・・・・・・死刑囚の心の叫び」は届かず
   『●無残!……『朝日』は、素人に《人を裁くという経験を通じ、
               死刑と向き合い、是非を考え》させたいらしい

   『●「テレビ業界で煩悩し格闘している人は決して少なくない」
              …「隠された歴史を掘りおこす」地方テレビ局
    「優れたドキュメンタリーが、東海テレビ琉球朝日放送南海放送
     といった地方のテレビ局で生み出され、そして映画化される。
     『死刑弁護人』や『標的の村』、『放射線を浴びたX年後』といった作品
     である。
      東海テレビ阿武野勝彦プロデューサーは《映画にすることで、
     作品は命を永らえることができる》、森達也さんは《テレビ業界で煩悩し
     格闘している人は決して少なくない》、そして、木下昌明さん
     《隠された歴史を掘りおこす》と言う」

   『●「自主規制、政権を忖度、報道の萎縮」なテレビ業界で、
              「『よく撮って、知らせてくれた』…お褒めの声」
    「『LITERA 本と雑誌の知を再発見』(…)の編集部による
     インタビュー記事【東海テレビ・阿武野プロデューサーを直撃! 
     ヤクザの人権、犯罪弁護団、安保批判…萎縮状況の中で
     なぜ東海テレビだけが踏み込んだドキュメンタリーをつくれるのか】」
    「「圧力、自主規制、政権を忖度、報道の萎縮…テレビ業界」で
     「異彩を放つ刺激的なドキュメンタリー」を放ち続ける東海テレビ。
     阿武野勝彦氏は「ど真ん中の仕事…ドキュメンタリーの真ん中」であり、
     そんな仕事には「『よく撮って、知らせてくれた』…
     お褒めの声のほうが多い」そうだ」

   『●「自主規制、政権を忖度、報道の萎縮」なテレビ業界で…
             東海テレビ『ヤクザと憲法』の意味が、今、分かる
    《東海テレビが半年間、ヤクザに密着したドキュメンタリー映画
     「ヤクザと憲法」…▼暴排条例人ごとと思っていたが、別の法律が
     ブーメランのように自分の身に降りかかろうとしている… 
     ▼…金田勝年法相のあいまいな答弁の理由の一つが鮮明になった》


   『●《新聞を含むマスコミは…「客観中立で、常に事実と
     正論を語る」という自画像を描き、自ら縛られてきた》
    「沖縄タイムスの阿部岳さんのコラム【[大弦小弦]
     「さよならテレビ」、とテレビが言う。】…《東海テレビ
     制作したドキュメンタリー番組のタイトルである…
     ▼新聞を含むマスコミは逆に「客観中立で、常に事実と正論を語る
     という自画像を描き、自ら縛られてきた…▼澤村ディレクターは今、
     「番組はメディア再生の試みだと受け止めている」と話す。
     さよならマスコミ、さよなら予定調和、さよなら自主規制。
     こんにちは、自由で新しい表現。(阿部岳)》」

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https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/263030

高野孟 ジャーナリスト
永田町の裏を読む
「さよならテレビ」はテレビ局が抱える“闇”の一端が見える
2019/10/10 06:00

     (東海テレビ公式HPから)

 東海テレビ制作の映画「さよならテレビ」の試写を見た。数々のドキュメンタリー作品を世に問うたことで知られる同社の取材班が、なんと、自社の夕方のニュース番組を制作する報道局の現場を2年間にわたって追跡し、2018年の同社開局60周年記念番組として放送。言論機関としてのテレビの危機的な現状を自ら裸になって提示しようという、その蛮勇ともいえる試みが話題になった。それをさらに映像シーンを追加して劇場用の映画として仕立て直したのがこの作品である。

 そのニュース番組は視聴率が低迷していて、同時間帯の各局比較でほぼ常時4位。キャスターを交代させ、グルメ系のコーナーが受けがいいと見ればそちらに傾きそうになったり、見た目に面白いだけのいわゆる「絵になる」シーンを多用したりと四苦八苦。報道局長は見学に来た小学生たちに「権力を監視するのが報道の使命だ」と建前を語るが、現実にはそんな青くさいことを言うスタッフはおらず、ただ一人、契約社員として加わっている50歳のフリー記者のSが周囲の反応にめげそうになりながらも「共謀罪」の問題で番組を作って気を吐いている

 「働き方改革」とかで残業が月100時間を超えることは絶対禁止とお達しがあり、サラリーマン社員としてはそれに従わざるを得ないけれども、視聴率を上げるために取材を増やそうとすれば、契約社員や下請け制作会社からの派遣社員にしわ寄せがいくばかり。そういう中で、「Z印」の番組も増えていく。Zは「ぜひもの」、スポンサー企業からの注文通りの「よいしょ番組」である

 このような、テレビのニュース番組の制作現場の悪循環スパイラルともいうべき現実が、生々しく描かれていて、そこにこの作品の価値がある。

 テレビ放映を見た同社の重役が「会社のイメージを毀損した」と取材班を激しく非難したそうだが、むべなるかな。とはいえ、長年にわたりテレビ報道の現場で仕事をした経験がある私から見ると、この描き方はまだ甘すぎる。社内取材ゆえの奥歯にモノが挟まったかの表現では、私なら何を指摘しようとしているのか容易に想像がつくけれども、一般の観客にそれが伝わるかどうか。

 終わり近くでSが語っているように「テレビ局が抱える闇はもっと深い」のである。ともあれ、映画は来年1月2日から東京・ポレポレ東中野と名古屋・シネマテークでロードショー公開されるので、ぜひご覧下さい。
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●《新聞を含むマスコミは…「客観中立で、常に事実と正論を語る」という自画像を描き、自ら縛られてきた》

2019年04月27日 00時00分47秒 | Weblog

[『学校が教えないほんとうの政治の話』(斎藤美奈子著、ちくまプリマ―新書257)↑]



沖縄タイムスの阿部岳さんのコラム【[大弦小弦]「さよならテレビ」、とテレビが言う。】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/408962)。

 《東海テレビが制作したドキュメンタリー番組のタイトルである…▼新聞を含むマスコミは逆に「客観中立で、常に事実と正論を語るという自画像を描き、自ら縛られてきた…▼澤村ディレクターは今、「番組はメディア再生の試みだと受け止めている」と話す。さよならマスコミ、さよなら予定調和、さよなら自主規制。こんにちは、自由で新しい表現。(阿部岳)》

   『●『学校が教えないほんとうの政治の話』(斎藤美奈子著)読了
                …《あなたの政治的ポジションを見つけて…》
    《だいたいみんな、このごろ、まちがえてんのよね。
     「偏らないことがいいことだ」「メディアは中立公正、不偏不党であるべきだ」
     「両論を併記しないのは不公平だ」。そういう寝言をいっているから、
     政治音痴になるのよ、みんな。》
    《あのね、政治を考えるのに「中立」はないの。メディアの役目は
     「中立公正、不偏不党な報道」ではなく「権力の監視」なんです。
     それ、常識。》
    《党派性をもたずに政治参加は無理である。》

 「自主規制、政権を忖度、報道の萎縮」なテレビ業界で…。アベ様のNHK下足番新聞など、メディアがアベ独裁広報機関・広報紙・広報誌となって久しい。そんな中、東海テレビは注目に値する。
 以前の東京新聞の記事【地方TV局からスクリーンへ ドキュメンタリーの魅力発信】で、《東海テレビ・阿武野勝彦プロデューサー…「ヤクザと憲法」を作ったが、昔なら「ヤクザ」は放送できないと思ってしまっていた。知らないうちに思考停止になっていたが、何かを考えるようになった。停止している思考を回してみると、豊かな表現につながる映画化によってテレビにも豊かな世界を描く人がいると観客に気付いてもらえた》。

   『●『創 (12月号)』読了 (2/2)
    「森達也さん『極私的メデェア論』第38回「視点が違えば世界は違う」
     …《フジテレビで一本のドキュメンタリー番組が放送された。タイトルは
     「光と影~光市母子殺害事件弁護団の300日」。…プロデューサーの
     名前は阿武野勝彦。そしてディレクターは斎藤潤一。…テレビ業界で
     煩悩し格闘している人は決して少なくない。…「鬼畜弁護士を被写体に
     するお前が鬼畜だ」と罵倒されたという。…非当事者である僕たちが、
     本当の意味で共有など出来るはずがない》」

   『●ドキュメンタリー『死刑弁護人』: 
      バッシングされ続ける「死刑弁護人」安田好弘さん
   『●司法権力の〝執念〟: 映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』
   『●子供にもSLAPPする国: 三上智恵監督・
        映画『標的の村 ~国に訴えられた沖縄・高江の住民たち~』
   『●木下昌明さん、『死刑弁護人』映画評
   『●血の通わぬ冷たい国の冷たい司法: 「奥西勝死刑囚(87)
                     ・・・・・・死刑囚の心の叫び」は届かず
   『●無残!……『朝日』は、素人に《人を裁くという経験を通じ、
               死刑と向き合い、是非を考え》させたいらしい

   『●「テレビ業界で煩悩し格闘している人は決して少なくない」
              …「隠された歴史を掘りおこす」地方テレビ局
    「優れたドキュメンタリーが、東海テレビ琉球朝日放送南海放送
     といった地方のテレビ局で生み出され、そして映画化される。
     『死刑弁護人』や『標的の村』、『放射線を浴びたX年後』といった作品
     である。
      東海テレビ阿武野勝彦プロデューサーは《映画にすることで、
     作品は命を永らえることができる》、森達也さんは《テレビ業界で煩悩し
     格闘している人は決して少なくない》、そして、木下昌明さん
     《隠された歴史を掘りおこす》と言う」。

   『●「自主規制、政権を忖度、報道の萎縮」なテレビ業界で、
              「『よく撮って、知らせてくれた』…お褒めの声」
    「『LITERA 本と雑誌の知を再発見』(…)の編集部による
     インタビュー記事【東海テレビ・阿武野プロデューサーを直撃! 
     ヤクザの人権、犯罪弁護団、安保批判…萎縮状況の中で
     なぜ東海テレビだけが踏み込んだドキュメンタリーをつくれるのか】」
    「「圧力、自主規制、政権を忖度、報道の萎縮…テレビ業界」で
     「異彩を放つ刺激的なドキュメンタリー」を放ち続ける東海テレビ。
     阿武野勝彦氏は「ど真ん中の仕事…ドキュメンタリーの真ん中」であり、
     そんな仕事には「『よく撮って、知らせてくれた』…
     お褒めの声のほうが多い」そうだ」

   『●「自主規制、政権を忖度、報道の萎縮」なテレビ業界で…
             東海テレビ『ヤクザと憲法』の意味が、今、分かる
    《東海テレビが半年間、ヤクザに密着したドキュメンタリー映画
     「ヤクザと憲法」…▼暴排条例人ごとと思っていたが、別の法律が
     ブーメランのように自分の身に降りかかろうとしている… 
     ▼…金田勝年法相のあいまいな答弁の理由の一つが鮮明になった》

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https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/408962

[大弦小弦]「さよならテレビ」、とテレビが言う。
2019年4月15日 08:04

 「さよならテレビ」、とテレビが言う。東海テレビが制作したドキュメンタリー番組のタイトルである。東海エリアで昨年9月、1度放送されただけなのに、手から手へとDVDが渡り、口コミで議論が広がっている

▼土方(ひじかた)宏史(こうじ)ディレクターが社内にカメラを向ける。上司が勝手に取材対象にされてる「やめろ」と怒る。視聴率アップと残業代カットが同時に命じられる。舞台裏の矛盾と苦悩を生々しく描く

▼前代未聞の番組作りを、それでも「ぬるい」と言い放つのは被写体の一人である澤村慎太郎ディレクター。「現実を都合よく切り取って、テレビ的現実を生産してるだけじゃないか」。そのシーンもまた、番組に収める

▼人間が取材テーマや相手を選び、番組に仕上げる以上、純粋な客観報道はあり得ない。必ず作り手の意図が入る。そのことを徹底して、正直に、告白する

▼新聞を含むマスコミは逆に「客観中立で、常に事実と正論を語るという自画像を描き、自ら縛られてきた。インターネットの普及などでより多様な情報に触れた市民が不信を抱き、離れていったのは当然なのかもしれない

▼澤村ディレクターは今、「番組はメディア再生の試みだと受け止めている」と話す。さよならマスコミ、さよなら予定調和、さよなら自主規制。こんにちは、自由で新しい表現。(阿部岳
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●「自主規制、政権を忖度、報道の萎縮」なテレビ業界で…東海テレビ『ヤクザと憲法』の意味が、今、分かる

2017年06月10日 00時00分11秒 | Weblog

[※ 東京新聞(2017年3月8日)↑]



琉球新報のコラム【<金口木舌>「ヤクザと憲法」に見る共謀罪】(http://ryukyushimpo.jp/column/entry-503963.html)。

 《東海テレビが半年間、ヤクザに密着したドキュメンタリー映画「ヤクザと憲法」…▼暴排条例人ごとと思っていたが、別の法律がブーメランのように自分の身に降りかかろうとしている… ▼…金田勝年法相のあいまいな答弁の理由の一つが鮮明になった》。

   『●「官憲が内心に踏み込んで処罰して、
     人権を著しく侵害した戦前、戦中の治安維持法」が亡霊のように…
   『●戦争で唯一得た平和憲法を壊憲…「日本は
      自由と民主主義を失うだけで、代わりに得るものは何もない」
   『●アベ様や「政府のアシスト」に努める「メディアの欺瞞」と
               「メディアが三流ならば、政治も社会も三流」

 「自主規制、政権を忖度、報道の萎縮」なテレビ業界で…、東海テレビによるドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』の意味が、今、分かる。《暴排条例人ごとと思っていたが、別の法律がブーメランのように自分の身に降りかかろうとしている》し、まさに、《金田勝年法相のあいまいな答弁の理由の一つが鮮明になった》。

   『●「自主規制、政権を忖度、報道の萎縮」なテレビ業界で、
              「『よく撮って、知らせてくれた』…お褒めの声」
    「『LITERA 本と雑誌の知を再発見』(…)の編集部による
     インタビュー記事【東海テレビ・阿武野プロデューサーを直撃! 
     ヤクザの人権、犯罪弁護団、安保批判…萎縮状況の中で
     なぜ東海テレビだけが踏み込んだドキュメンタリーをつくれるのか】」
    「「圧力、自主規制、政権を忖度、報道の萎縮…テレビ業界」で
     「異彩を放つ刺激的なドキュメンタリー」を放ち続ける東海テレビ。
     阿武野勝彦氏は「ど真ん中の仕事…ドキュメンタリーの真ん中」であり、
     そんな仕事には「『よく撮って、知らせてくれた』…
     お褒めの声のほうが多い」そうだ」

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http://ryukyushimpo.jp/column/entry-503963.html

<金口木舌>「ヤクザと憲法」に見る共謀罪
2017年5月28日 06:00

 銀行口座を解約される。宅配便や出前の配達を拒否される。幼稚園の登園を断られる-。これらは反社会的勢力と言われるヤクザとその家族が置かれた状況である

東海テレビが半年間、ヤクザに密着したドキュメンタリー映画「ヤクザと憲法」の一場面だ。組の幹部が全国から集めた暴力団排除条例(暴排条例)の“実害”を説明する。「ヤクザとその家族は人権侵害を受けている

▼次のシーンで法の下の平等をうたう憲法14条が映し出される。見方によっては憲法違反ともとれる暴排条例。ヤクザに人権はあるのか。家族には?

▼暴排条例を人ごとと思っていたが、別の法律がブーメランのように自分の身に降りかかろうとしている。衆院で可決された「共謀罪」の趣旨を含んだ「組織犯罪処罰法改正案」である

犯罪の実行前に逮捕可能な共謀罪。どんな思想を持ち行動しているのか、監視が強まる懸念がある。憲法が保障する思想・良心、表現の自由を侵害しかねない。監視対象とするか否かは当局次第。暴排条例同様、自分には関係ないと言いきれるのか

▼監督は、暴排条例が暴力団の存続危機となるほど効果を上げたのはアウトかセーフの不明確な『線引き』あいまいな規則の方が効果的だと条例は教えてくれる」と著書で指摘する。金田勝年法相のあいまいな答弁の理由の一つが鮮明になった。
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●「自主規制、政権を忖度、報道の萎縮」なテレビ業界で、「『よく撮って、知らせてくれた』…お褒めの声」

2016年11月04日 00時00分08秒 | Weblog


LITERA 本と雑誌の知を再発見』(http://lite-ra.com/)の編集部によるインタビュー記事【東海テレビ・阿武野プロデューサーを直撃! ヤクザの人権、犯罪弁護団、安保批判…萎縮状況の中でなぜ東海テレビだけが踏み込んだドキュメンタリーをつくれるのか】(http://lite-ra.com/2016/11/post-2663.html)。

 《圧力、自主規制、政権を忖度、報道の萎縮……そんな言葉がしきりに聞かれているテレビ業界において、異彩を放つ刺激的なドキュメンタリーが放映されているのを知っているだろうか。名古屋を拠点とする、東海テレビの作品だ》。

   『●「テレビ業界で煩悩し格闘している人は決して少なくない」
              …「隠された歴史を掘りおこす」地方テレビ局
    「優れたドキュメンタリーが、東海テレビ琉球朝日放送南海放送
     といった地方のテレビ局で生み出され、そして映画化される。
     『死刑弁護人』や『標的の村』、『放射線を浴びたX年後』といった作品
     である。
      東海テレビ阿武野勝彦プロデューサーは《映画にすることで、
     作品は命を永らえることができる》、森達也さんは《テレビ業界で煩悩し
     格闘している人は決して少なくない》、そして、木下昌明さん
     《隠された歴史を掘りおこす》と言う」。

 「圧力、自主規制、政権を忖度、報道の萎縮…テレビ業界」で「異彩を放つ刺激的なドキュメンタリー」を放ち続ける東海テレビ。阿武野勝彦氏は「ど真ん中の仕事…ドキュメンタリーの真ん中」であり、そんな仕事には「『よく撮って、知らせてくれた』…お褒めの声のほうが多い」そうだ。

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http://lite-ra.com/2016/11/post-2663.html

東海テレビ・阿武野プロデューサーを直撃!
ヤクザの人権、犯罪弁護団、安保批判…萎縮状況の中でなぜ東海テレビだけが踏み込んだドキュメンタリーをつくれるのか
インタビュー編集部 2016.11.02

     (東海テレビ・阿武野勝彦

 圧力、自主規制、政権を忖度、報道の萎縮……そんな言葉がしきりに聞かれているテレビ業界において、異彩を放つ刺激的なドキュメンタリーが放映されているのを知っているだろうか。名古屋を拠点とする、東海テレビの作品だ。
 光市母子殺害事件の弁護団に密着した『光と影』(2008)、戸塚ヨットスクールの今を描いた『平成ジレンマ』(2010)、ヤクザの人権問題に切り込んだ『ヤクザと憲法』(2015)など、ここ数年、東海テレビが放送したキュメンタリーの数々は物議をかもしてきた。
 しかし、東海テレビのドキュメンタリーは放送中止になることもなく、現在も定期的に地上波でチャレンジングな新作が公開されているばかりか、近年では映画版として再編集され、全国のミニシアターを中心に上映も行われている。
 大口のスポンサーもつかず、縮小していくテレビドキュメンタリーの世界で、フジテレビ系列の東海テレビがなぜ、多様な作品を制作し、放送し続けることができるのか。それ以前に、トラブルを避けたがるテレビマンがほとんどのなかで、なぜこういう作品をつくろうとするのか。

   「たとえば、障害のある人を取材対象にして何だか観たことの
    あるような“いい話”の番組って、ありますよね。障害のある人を
    主人公にするのが悪いと言っているんじゃなくて、ステレオタイプに
    描くのは、安易なやり方で、むしろ失礼だと思うんですよ。あるいは
    タレントを海外に連れて行って、ありきたりな感想を述べるのを
    ありがたがったりするような“ありがち”な番組。私はそれ、
    ドキュメンタリーじゃないんじゃないの?って思う。制作者の志
    どこにあるのだろうと思っちゃいますね」

 そうサラリと業界批判をしてのけるのは、監督やプロデューサーとして一連のドキュメンタリーを支えてきた東海テレビの阿武野勝彦。1981年、アナウンサーとして同局に入社後、報道局記者、営業局業務部長などを経験しながら、『ガウディへの旅』(1990)、『村と戦争』(1995)、『黒いダイヤ』(2005)など多数のドキュメンタリーのディレクターを務めてきた。東海テレビのお家芸である「司法シリーズ」と呼ばれる一連の作品群でも、同局の齊藤潤一とのタッグで『裁判長のお弁当』(2007)や前述『光と影』、『死刑弁護人』(2012)などを手がけ、数々の賞を受賞。「異端」「型破り」ともいわれる放送人だ。
 まず、阿武野に聞きたいのは、普通の地上波が扱わないような“危険な”テーマに踏み込んで、これまで圧力や規制、クレームなどを受けたことがなかったのか、ということだった。しかし、阿武野はこんな拍子抜けするような返事をする。

   「いや、私たちがやっていることは、ど真ん中の仕事。キワモノでも
    なければ、トンガっているわけでもなくて、ドキュメンタリーの真ん中
    当たり前のことを当たり前にやっているという認識しかないので。
    クレームなんかもそんなにこないですよ。むしろテレビを観てくれた
    みなさんからは『よく撮って、知らせてくれた』というお褒めの声のほうが
    多いくらい」

 が、個別に聞いてみると、やはり局内外でのトラブルはないわけではない。たとえば、光市母子殺害事件を扱った『光と影』。この事件では、被害者遺族の訴えがメディアで盛んに取り上げられ、被告の元少年を「極刑にせよ」という世論が過熱彼を弁護する弁護団もまた「鬼畜」とバッシングを受けた。その「鬼畜弁護団」側にカメラを入れた『光と影』の制作中、阿武野は東海テレビの当時の社長と番組を挟んで、直接相対したという。

   「『光と影』は少々揉めましたね。制作が7、8割方進んでいるところで
    突然、先代の社長ですが、私を呼び出し『鬼畜を弁護する鬼畜弁護団
    それを番組にするお前は鬼畜だ!』『お前は狂ってる!』というような
    ことを言われましたね。社長に狂人扱いされるなんて中々ないですよね。
    でも、これは私が辞表出して済む話ではないんですよって。
    東海テレビの名前を出して、私たちは弁護団と取材をする、
    されるという関係になっている。その途中で社長の鶴の一声というか、
    圧力というか、で番組をやめるわけにはいかない
    『社長が制作を止めるんですよ、よろしいんですね? 相手は腕っこきの
    弁護団ですよ? 訴えられるのは、社長ですよ』とお話しましたね。
    当時の報道局長と編成局長も、どういう形であってもいいから番組に
    しようと言ってくれて、放送することが出来ましたね」

 キー局のフジテレビともいろいろあったようだ。もともとフジテレビ系列では、地方局制作のドキュメンタリーが全国ネットで放送される機会はほとんどない。例外は「FNSドキュメンタリー大賞」に応募し、ノミネート作として深夜に放送されるぐらいだ。いわば地方局にとって唯一、全国の視聴者を獲得できる“出口”。しかし、阿武野たちは、数年前から「FNSドキュメンタリー大賞」についてはノミネート枠を、他の部署に譲った。なぜか。
 きっかけは、『ホームレス理事長 退学球児再生計画』(2013)を巡っての、東海テレビ社内の対応とフジテレビからの放送謝絶だった。ドロップアウトした高校球児たちに「再び野球と勉強の場を」と謳うNPOを取材した本作には、金策に奔走する理事長が取材スタッフに土下座して借金を懇願したり、闇金にまで手をだすなど、かなり“危うい”場面がある。なかでも作中で監督が球児にビンタを連発するシーンは、名古屋での放送時に物議を醸した。フジテレビはこの番組について放送しない決定をした。

   「終わったことですし、話すと長くなるんですけど(笑)。まあ、
    あのビンタのシーンでもめたんですよ。フジテレビは番組考査にかける、
    という話しになった。ようは、番組を事前にチェックしてウチで
    放送できるかどうか検討します、というわけですね。でも、これまで
    そういうことはしてこなかったはずですし、各局で放送した内容を
    そのまま放送するのが前提だったはず。何でそうなったのか説明もなく、
    これからどうするかも伝えられず、その対応が理解できなかった。
    信頼関係が崩れたと思いましたね。だから、私たちはこの仕組みには
    乗れないと。喧嘩した訳ではなく、番組、ドキュメンタリー、
    放送についての考え方が違う以上、仕方がない、
    ご遠慮申し上げることにしたんですね」

 こうした姿勢は時として、暴走に映ることもある。たとえば『平成ジレンマ』は“体罰の代名詞”と化している戸塚ヨットスクールの今に密着した作品だが、激しい批判が起きた。本サイトから見ても、体罰肯定論の宣伝につながるような危うさを感じざるをえなかった。
 しかし、阿武野はこうした批判も、ドキュメンタリーには付きものだと思っている。それは彼が求めているものが、右か左か、正義か悪かという二元論的な価値観を超えたもっと深いところにあるからだろう。その深い場所に光をあてるためならば、ときに世間の流れの逆側に立って物事を切り取ることもいとわないそういう覚悟に裏打ちされているような気がする。

   「ありがちなドキュメンタリーは、誰も求めていないと思うんです。
    決まり切った美談のようなものを求めているという風に制作者が
    思っているとしたら、大きな勘違い。そんな時代じゃないよって
    思うんです」

   「今、みんなどうやってリスクを回避するかにとても繊細ですよね。
    そういう教育を受けているから仕方がないと思います。でも、
    私たちのところには、リスクだらけのところに突っ込んでいって
    何かとんでもないドブの中から宝物を引っ張りだすぐらいの力を
    持っている人間が、いるんです」

 たしかに、この姿勢がなければ、この息苦しいテレビの世界で、あんな作品をつくり続けるのは不可能だろう
 しかし、同時に彼は、ただ猛進するだけでもない。たとえば、物議をかもすような題材を扱うにあたり、阿武野は必ずクレームを担当する部署に、事前に想定される問答集をつくって手渡しているという。また、作品についても、たんに撮ったものをすべて出すということではなく、ギリギリのところでバランスをとっているようだ。
 戦後70年にあたる昨年、8月、東海テレビは『戦後70年 樹木希林 ドキュメンタリーの旅』という全6回のシリーズを行った。これは、女優・樹木希林が番組に関連する場所や人を旅し、更に、毎回ゲストを訪ね、過去に全国の地方局が制作してきた戦争の記憶を紡ぐドキュメンタリーについて語り合うという内容だ。
 今、開催されている特集上映「東海テレビドキュメンタリーの世界」にも、このシリーズから同局制作の『村と戦争』(第4回)と『いくさのかけら』(第5回/2005)が組み込まれているが、第1回であった『父の国 母の国』(関西テレビ制作/2009)では、ゲストに笑福亭鶴瓶が登場し、政治についてきちっとした主張をした。当時、国会での強行成立が間近に迫っていた新安全保障関連法そして安倍政権による憲法9条の空文化に対して、こう強い言葉で批判した。

   「いま、法律を変えようとしているあの法律もそうでしょうけど、
    それも含めて、いまの政府がああいう方向に行ってしまうっていうね、
    これ、止めないと絶対いけないでしょうね」

   「こんだけね、憲法をね、変えようとしていることに、違憲や言うてる人が
    こんなに多いのにもかかわらず、お前なにをしとんねんっていう」

 この鶴瓶の痛烈な安保・安倍批判は、スポーツ紙などにも取り上げられ、大きな反響を呼んだ。テレビ地上波で、それも人気商売の芸能人がここまで踏み込んだ政治的発言をするのは、昨今、異例中の異例と言っていい。プロデューサーとして同シリーズを統括した阿武野は、反響は織り込み済みだったのかという質問に対し、静かに頷く。だが実は、その編集には細心の注意が払われていた。

   「放送前に、鶴瓶さんのプロダクションの社長と話をしました。
    そのままでいいですというのが姿勢でした。ここまで大きく育てて
    くれたのは落語であり、テレビの世界でしっかり根を張ることもできた。
    社会にお返ししなくちゃという根底を鶴瓶さんは持っていらっしゃる。
    その上での発言だったんです。しかし、個人を激しく批判している
    ようなところは割愛したんです。ダマってやってしまえばそれは
    芸能人の、命をとる可能性がある。だから取材対象は
    しっかり守るという原則は堅持したんです。収録の場で鶴瓶さんは
    “全部使ってくれええで”って言って帰りましたけど、全部託してくれた
    という信頼感に、私たちがどうお返えしするか、丸めるだけでもなく、
    そのままが最高という単純なものでもなく、つまり、大胆であり、
    なおかつ繊細でないといけないんです、この仕事は」

 影の部分に光をあてる。ただ、それを誠実に為すことが、どれだけ困難か。しかし、それでも阿武野たちはあきらめずにそのための方法を模索し続けている。

   「いま、ドキュメンタリーを観るひとは決して多くない。視聴率はとれない。
    スポンサーが付きにくい。しかも問題は起こりやすい(笑)。
    他局の人間と話すと『東海テレビのようにはウチはできません』
    なんてよく聞きますよ。でも、組織や上司や他人のせいにして
    『できませんと言った瞬間に、もうやれなくなるんです
    自分で自分にダメ出ししているんじゃないですか?」

 注目を集めている映画公開も、テレビドキュメンタリーが直面する困難を克服するために始めたものだった。

   「映画化を始めたのは2011年です。単館を繋ぐ形だから収容できる
    お客さんの数は、大層なものじゃないけど、実際に観ている人の
    息遣いを感じられて、何よりスタッフが生き返った。それに、
    映画なら制作年を打つことで繰り返し放送することもできます。
    希望しても叶えることのできない全国ネットへのこだわりがなくなった
    のも、映画で公開しているから、ということが大きかった」

 映画を観た人がテレビに帰ってきてくれる、そんな構図もあるのではないかと阿武野は言う。だからDVD化も今のところするつもりはないという。
 2017年1月2日には、その映画化第10作にあたる『人生フルーツ』(監督・伏原健之)が公開する。これに先立ち、10月29日(土)から11月18日(金)までの期間、東京・ポレポレ東中野で「東海テレビドキュメンタリーの世界」と題して、劇場初公開を含む全22作品の特集上映が開催される(公式サイト)。
 こうした作品は、自主規制や制約、あるいは上司の一言にとらわれ、がんじがらめになっているマスコミ関係者にこそぜひ観てもらいたい。

(インタビュー・構成 編集部)


■特集上映「東海テレビドキュメンタリーの世界」
10月29日(土)〜11月18日(金)まで、東京・ポレポレ東中野にて公開、ほか全国順次。各作品の上映スケジュールなど、詳しくは公式ホームページ(http://tokaidoc.com/)にて。また、書籍『ヤクザと憲法――「暴排条例」は何を守るのか』(東海テレビ取材班/岩波書店)も10月29日に発売。
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●「テレビ業界で煩悩し格闘している人は決して少なくない」…「隠された歴史を掘りおこす」地方テレビ局

2016年11月03日 00時00分02秒 | Weblog


東京新聞の砂上麻子記者による記事【地方TV局からスクリーンへ ドキュメンタリーの魅力発信】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2016103002000175.html)。

 《地方テレビ局のドキュメンタリー映画の先駆けとなったのが、東海テレビ…。11月3日には「ドキュメンタリーの現在」と題して、映画監督の森達也さんや東海テレビの阿武野勝彦さんによるシンポジウムも行われる。また12~18日には「標的の村」や「みんなの学校」など東海テレビ以外の地方局によるドキュメンタリー映画も特集上映…阿武野勝彦プロデューサー(57)に番組を映画化する意義について聞いた》。

 優れたドキュメンタリーが、東海テレビ琉球朝日放送南海放送といった地方のテレビ局で生み出され、そして映画化される。『死刑弁護人』や『標的の村』、『放射線を浴びたX年後』といった作品である。
 東海テレビ阿武野勝彦プロデューサーは《映画にすることで、作品は命を永らえることができる》、森達也さんは《テレビ業界で煩悩し格闘している人は決して少なくない》、そして、木下昌明さん《隠された歴史を掘りおこす》と言う。

   『●『創 (12月号)』読了 (2/2)
    「森達也さん『極私的メデェア論』第38回「視点が違えば世界は違う」
     …《フジテレビで一本のドキュメンタリー番組が放送された。タイトルは
     「光と影~光市母子殺害事件弁護団の300日」。…プロデューサーの
     名前は阿武野勝彦。そしてディレクターは斎藤潤一。…テレビ業界で
     煩悩し格闘している人は決して少なくない。…「鬼畜弁護士を被写体に
     するお前が鬼畜だ」と罵倒されたという。…非当事者である僕たちが、
     本当の意味で共有など出来るはずがない》」

   『●ドキュメンタリー『死刑弁護人』:
      バッシングされ続ける「死刑弁護人」安田好弘さん
    「監督は、東海テレビの斎藤潤一さん。ディレクターは阿武野勝彦さん。
     ヒットすべき、多くの人に是非見てもらいたい映画ですが…
     難しいでしょうかね。死刑制度について考えを巡らせる良い機会になる
     と思うのですが…」
    《阿武野勝彦プロデューサーは映画にすることで、作品は命を永らえる
     ことができる」と話す。昨年、戸塚ヨットスクールの戸塚宏校長を取材した
     「平成ジレンマ」、四日市公害訴訟を取り上げた「青空どろぼう」を
     劇場公開、今回が第三弾。一年半で三本というのは制作者の
     強い思いだろう》

   『●司法権力の〝執念〟: 映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』
    《事件発生当初から蓄積した圧倒的な記録と証言を再検証し、
     本作を作り上げたのは、『平成ジレンマ』『死刑弁護人』の
     齊藤潤一斎藤潤一)(脚本・監督)と阿武野勝彦(プロデューサー)。
     これは、東海テレビ放送の名物ドキュメンタリー「司法シリーズ」を
     手掛ける二人が、カメラが入ることが許されない独房の死刑囚を
     描き出す野心作である》
    《wataitakeharu 東海テレビの司法ドキュメンタリーの中でも、
     名張毒ぶどう酒シリーズは、どれも秀作だが、今回の『約束』
     (2月16日から劇場公開)はその中でも最高傑作だった。 
     http://t.co/75pUkmi9 恐るべし東海テレビの執念、そして、
     別の意味で恐るべし、司法権力の“執念”!02/10 05:22》

   『●子供にもSLAPPする国: 三上智恵監督・
        映画『標的の村 ~国に訴えられた沖縄・高江の住民たち~』
    《木下昌明の映画の部屋・第166回 ●三上智恵監督『標的の村
     「オスプレイ」反対運動の真実――本土には伝えられない「沖縄」》
    《作品は三上が一人で取り組んだものではなく、沖縄の琉球朝日放送
     というローカル局が、三上を中心とした報道スタッフを編成、テレビの
     枠を超えて映画として仕上げた。 最近、この種のドキュメントが目につく
     愛知・東海テレビ放送の『青空どろぼう』、愛媛・南海放送
     『放射線を浴びたX年後』など。その地域放送局ならではの豊富な
     映像資料を使い、過去から引きずっている事件に焦点をあてて、
     隠された歴史を掘りおこす

   『●木下昌明さん、『死刑弁護人』映画評
    「「木下昌明の映画の部屋」(http://www.labornetjp.org/Column/)より、
     齊藤潤一監督『死刑弁護人』の映画評。安田好弘弁護士についての映画」

   『●血の通わぬ冷たい国の冷たい司法: 「奥西勝死刑囚(87)
                     ・・・・・・死刑囚の心の叫び」は届かず
    《▼その生涯を描いた東海テレビ製作の映画『約束』で、仲代達矢さん
     演じる死刑囚は、拘置所の屋上の運動場で叫ぶ。「死んでたまるか、
     生きてやる」。それは無実を信じ続けた家族の心の叫びでもある
     ▼母タツノさんは、貧しい暮らしに耐えながら面会に通い、
     手紙で励まし続けた。「してない事はしたというな。
     しんでもしないというてけ」「ほしいものがあれば母ははだかになっても
     かってやるから手紙でおしえてくれ」》

   『●無残!……『朝日』は、素人に《人を裁くという経験を通じ、
               死刑と向き合い、是非を考え》させたいらしい
    《映画「ふたりの死刑囚」(東海テレビ放送製作、ポレポレ東中野など
     1月16日公開)は、冤罪を訴える2人の死刑囚と家族の半生を
     追ったドキュメンタリー…「袴田事件」の袴田巌死刑囚(79)…
     「名張毒ぶどう酒事件」の犯人とされ、10月に獄中死した
     奥西勝死刑囚(享年89)》
    《仲代達矢(83)主演で奥西死刑囚の生涯を描いた映画「約束」を
     手掛けた東海テレビの齊藤潤一報道部長(48)がプロデュースし、
     後輩で警察や司法を担当した鎌田麗香記者(30)が監督を務めた》

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2016103002000175.html

【放送芸能】
地方TV局からスクリーンへ ドキュメンタリーの魅力発信
2016年10月30日 朝刊

 地方テレビ局が製作したドキュメンタリー映画の上映が相次いでいる。フェイスブックやツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)や口コミで評判が広がり、全国的なヒットにつながる作品も出ている。ドキュメンタリー番組に割り当てられる全国放送の枠が減る中、地方局は自局制作の番組を劇場版に再編。映画館で上映することで新たな観客を掘り起こそうとしている。 (砂上麻子)


 「見たい人に届けるにはどうしたらいいのか。浮かんだのが映画だった」。映画「みんなの学校」の監督を務めた関西テレビ(大阪市)ディレクターの真鍋俊永さん(47)は語る。

 普通の子どもと障害がある子どもが同じ教室で学ぶ大阪市立大空小学校の一年間に密着し、二〇一三年五月に放送された。その後、フジテレビ系列局による「FNSドキュメンタリー大賞」にノミネートされ、全国で深夜に放送。文化庁芸術祭大賞を受賞した後はNHKのBSプレミアムでも放送された。

 映画化に当たって、四十七分の番組に未使用の場面も追加、百六分に再編し、一五年に劇場公開した。

 これまで約三万三千人の観客を動員、現在も全国で自主上映会が続いている。真鍋さんは「テレビは放送して終わりだが、映画になって作品の寿命が長くなりうれしい」と話す。

 地方テレビ局のドキュメンタリー映画の先駆けとなったのが、東海テレビ(名古屋市)が一〇年に製作した「平成ジレンマ」。一九八〇年代に体罰事件で社会問題になった戸塚ヨットスクールの“その後”を取り上げた。同作が話題となり、同局はさらに八番組を映画化。他局も追随し、米軍基地をテーマにした琉球朝日放送の「標的の村」などが全国公開された。

 今年は「ヤクザと憲法」(東海テレビ)、「ふたりの桃源郷」(山口放送)、「五島のトラさん」(テレビ長崎)と公開が続く。「ヤクザと-」は観客動員が四万人に上り、ドキュメンタリー映画としては異例のヒットを記録した。これらの作品を公開した映画館「ポレポレ東中野」(東京都中野区)の大槻貴宏支配人(49)は「地方の課題や生活を長期的な視点で取材するのは地方局の役割。各局が競っていい作品を送り出してほしい」と期待を寄せる。


◆東中野で特集上映

 ポレポレ東中野で、東海テレビが制作したドキュメンタリー番組の特集上映「東海テレビドキュメンタリーの世界」が11月18日まで行われている。

 独房から無実を訴え続けた奥西勝死刑囚を俳優仲代達矢が演じた「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」や、暴力団員の人権を問う「ヤクザと憲法」、来年1月から全国順次公開する最新作「人生フルーツ」など劇場版の10作品と、テレビ放送した12作品を上映する。

 11月3日には「ドキュメンタリーの現在」と題して、映画監督の森達也さんや東海テレビの阿武野勝彦さんによるシンポジウムも行われる。また12~18日には「標的の村」や「みんなの学校」など東海テレビ以外の地方局によるドキュメンタリー映画も特集上映される。

 問い合わせはポレポレ東中野=(電)03(3371)0088=へ。


◆観客の反応がいい刺激に

 東海テレビ・阿武野勝彦プロデューサー

 東海テレビで数多くのドキュメンタリー番組を手がけ、映画化にも携わってきた阿武野勝彦プロデューサー(57)に番組を映画化する意義について聞いた。

 -ドキュメンタリー番組を映画化しようと思ったきっかけは。

 テレビで放送する時間が減り、放送できても深夜など見る人が限られている。地方でじっくり作っても、全国ネットでは視聴率が取れない、賛否が分かれるなどの理由で放送しにくくなっている。いくら良い番組を作っても、情報発信が地方で留まってしまう状況を変えたかった。


 -映画化の手応えは。

 テレビでは視聴者の様子まで分からないが、映画は観客の反応を間近に感じることができ、テレビのスタッフにもいい刺激になる。

 -ドキュメンタリー番組は一年間に何本制作しているのか。

 東海テレビでは年間七~八本制作し、土日に不定期で放送している。最近、ドキュメンタリーの番組を撮っているスタッフが映画化を期待しているが、必ず映画化するわけではない。


 -映画にする番組はどうやって選ぶのか。

 取材した題材を二時間ほどに編集した第一稿を見た段階で「全国の人に見てもらいたい」と思った瞬間に映画にすると決める。番組制作費で映画化する費用はまかなうようにしている。ただ宣伝費は一本五百万ほどかかり、もうかる事業ではない。


 -映画化に期待することは。

 「ヤクザと憲法」を作ったが、昔なら「ヤクザ」は放送できないと思ってしまっていた。知らないうちに思考停止になっていたが、何かを考えるようになった。停止している思考を回してみると、豊かな表現につながる映画化によってテレビにも豊かな世界を描く人がいると観客に気付いてもらえた。
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●司法権力の〝執念〟: 映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』

2013年02月14日 00時00分26秒 | Weblog


綿井健陽さんの『逆視逆考PRESS』(http://watai.blog.so-net.ne.jp/2013-02-10)で、映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(http://yakusoku-nabari.jp/introduction/http://yakusoku-nabari.jp/story/)のことを知りました。

   『●『創(2009年5月号)』
   『●高い冤罪の可能性: 名張毒ブドウ酒事件
   『●名張毒ぶどう酒事件という冤罪
   『●『冤罪File(No.10)』読了
   『●強大な氷山の一角としての冤罪発覚
   『●「疑わしきは罰する」名張毒ぶどう酒事件、あ~っため息が・・・

 名張毒ぶどう酒事件について、昨年5月末、第7次再審請求差戻審で名古屋高裁が再審の求めを却下している。綿井さんの言うように、正に「別の意味で恐るべし、司法権力の“執念”」である。

   「名古屋高裁刑事二部(下山保男裁判長)は二十五日午前、
    弁護側が提出した新証拠は「毒物がニッカリンTではないことを
    示すほどの証明力はなく、確定判決に合理的な疑いは生じない」として、
    検察側の異議を認め奥西勝死刑囚(86)の再審を開始しない
    と決定した。いったんは再審を開始すると判断した名古屋高裁刑事
    一部の決定(二〇〇五年)を取り消した。」
    (http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012052502000260.html
      (『●「疑わしきは罰する」名張毒ぶどう酒事件、あ~っため息が・・・』) 

 警察、検察、裁判所・・・・・・なぜここまで頑なに再審を拒むのか?

   「名張毒ぶどう酒冤罪事件の第7次再審請求差戻審で、またしても、
    名古屋高裁は開きかけた扉をあっさりと閉じてしまった。
    本当にまじめに新証拠の審査を行っているのか? 奥西勝死刑囚は
    無実の罪で囚われ、すでに86歳だそうだ。警察や裁判所の罪を
    糊塗したままで、冤罪は続いていく」

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http://watai.blog.so-net.ne.jp/2013-02-10

Twitterまとめ投稿 2013/02/10

wataitakeharu 
NHK放送文化研究所のシリーズ、『制作者研究』はどれも興味深い。ネット上でも全文がPDF閲覧できる。http://t.co/jbF8tvpO 個人的には、現代センター代表・吉永春子さんの登場を期待している。吉永さん、お元気だろうか?02/10 05:52

wataitakeharu 東海テレビの司法ドキュメンタリーの中でも、名張毒ぶどう酒シリーズは、どれも秀作だが、今回の『約束』(2月16日から劇場公開)はその中でも最高傑作だった。 http://t.co/75pUkmi9 恐るべし東海テレビの執念、そして、別の意味で恐るべし、司法権力の“執念”!02/10 05:22

wataitakeharu 昨日(9日・土)のTBS「報道特集」で放送された死刑執行の実態。http://t.co/2yA4BR8t 巡田忠彦記者による3回目の死刑リポートは、この番組の名物シリーズ企画となりつつある。東海テレビの司法ドキュメンタリー番組・映画と同じく、僕はこれからも必ず観ると思う。02/10 05:10

wataitakeharu 先日の高円寺ドキュメンタリー祭で、森口豁さん取材の沖縄ドキュメンタリー番組を観た人は、ぜひ以下のテキスト(PDFで全文閲覧可能)も読んでほしい。http://t.co/gIuIIc3Z あのETV特集放射能汚染地図」の七沢潔ディレクターが丹念に調べた森口豁さんの足跡。02/10 04:53
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http://yakusoku-nabari.jp/introduction/

何度裏切られても、彼が信じ続ける。
裁判所が事実と良心に従って、
無実を認めてくれると。

獄中から無実を訴え続けている死刑囚がいます。奥西勝、86歳。昭和36年、三重県名張市の小さな村の懇親会で、ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡しました。「名張毒ぶどう酒事件」です。奥西は一度は犯行を自白しますが、逮捕後、一貫して「警察に自白を強要された」と主張、1審は無罪。しかし、2審で死刑判決。昭和47年、最高裁で死刑が確定しました。戦後唯一、無罪からの逆転死刑判決です。
事件から51年――際限なく繰り返される再審請求と棄却。その間、奥西は2桁を越える囚人が処刑台に行くのを見送りました。いつ自分に訪れるか分からない処刑に怯えながら
あなたは、その恐怖を、その孤独を、その人生を、想像することができますか?


これは、冤罪ではないか。
司法は、獄中死を望んでいるのか?

事件発生当初から蓄積した圧倒的な記録と証言を再検証し、本作を作り上げたのは、『平成ジレンマ』『死刑弁護人』の齊藤潤一斎藤潤一(脚本・監督)と阿武野勝彦(プロデューサー)。これは、東海テレビ放送の名物ドキュメンタリー「司法シリーズ」を手掛ける二人が、カメラが入ることが許されない独房の死刑囚を描き出す野心作である。
そして、奥西勝を演じるのは日本映画界の至宝、仲代達矢。息子の無実を信じ続ける母・タツノ役に、樹木希林。ナレーションをつとめるのは、寺島しのぶ
そう、本作は映画とジャーナリズムが日本の司法に根底から突きつける異議申立なのだ。


半世紀近く拘置所に閉じ込められている
奥西さんの心境は測りしれません。
私がこの状況に追い込まれたらどうなるか、
そういう気持ちで演じました。
60年俳優をやってきた中で、
私にとって記念碑的な作品です。
  ――――――――――― 仲代達矢


http://yakusoku-nabari.jp/story/

独房から無実を訴え続けている死刑囚がいる。奥西勝、86歳。昭和36年、三重県名張市の小さな村の懇親会で、ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した。逮捕された奥西は「警察に自白を強制された」と訴え、無実を主張。1審は無罪だったものの、2審は逆転死刑判決。そして昭和47年、最高裁で死刑が確定した。奥西は、死刑執行の恐怖と闘いながら、いまも再審を求め続けている

奥西の無実を信じているのが、母、タツノ。事件で村を追われ、見知らぬ町で独り暮らしを始めた。内職をして電車賃を稼ぎ、月に1度、名古屋拘置所にいる息子に会いに行く。タツノは奥西に969通の手紙を送った。「お金のあるあいだ、湯たんぽを貸してもらい、牛乳も飲みなさい」「やっていないのは、おっかあが一番知っている」「長い間の苦労は毎日、涙いっぱいですよ」再審を待ち続ける母。奥西はタツノと約束をする。“無実を晴らして、必ず帰る” しかし、その約束は果たされることなく、母は昭和63年、84歳で亡くなった。

そしてもう一人、奥西を支え続けたのが支援者の川村富左吉※(73歳)。確定死刑囚への面会は、肉親と弁護士以外許されていないが、川村は法務省に掛け合い奥西との面会を許される。川村は奥西との面会を10冊のノートに記録した。「起床7時。運動毎日50分。運動は3坪ほどの部屋で歩くばかり」「作業、朝7時40分頃から袋貼り。午後4時に終わる。報酬は月2千円」「正月の食事、鯛の塩焼き・数の子・餅・赤飯・みかん・菓子。普段は米麦6対4」「息子が突然、面会に来た。20数年ぶり。嬉しかった」「誰かの死刑が執行された。一斉放送のニュースが突然切れたのでおかしいと思った」「胃がんの手術。3分の2を切除」

事件から44年後の平成17年4月、名古屋高裁は奥西の再審開始を決定した。川村と奥西は名古屋拘置所の面会室のガラス越しに握手。「今度は晴れて、塀の外で握手をしましょう」と二人は約束した。しかし、喜びもつかの間、検察が異議申し立てをし、再審は棚上げとなった。そして、その半年後、川村は病に倒れ、この世を去る。奥西との約束を果たすことができずに…。

平成18年、奥西の再審開始決定は名古屋高裁の別の裁判官によって取り消されたが、2009年、最高裁は名古屋高裁に審理を差し戻し。平成24年、名古屋高裁は再び、再審開始決定を取り消した――。

司法は、何を望んでいるのだろうか?

                               ※川村富左吉の「吉」の字の“土”は下が長い
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●ドキュメンタリー『死刑弁護人』: バッシングされ続ける「死刑弁護人」安田好弘さん

2012年06月26日 00時00分34秒 | Weblog


東京新聞の記事(http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2012062202000122.html)。『週刊金曜日』の記事の一部(http://www.kinyobi.co.jp/backnum/tokushu/tokushu_kiji.php?no=2514)。最後に映画『死刑弁護人』WP(http://shikeibengonin.jp/)の予告編(http://shikeibengonin.jp/tra.html)を勝手に貼らせてもらいました。

 全く知りませんでした。安田好弘さんについて『死刑弁護人』という映画が出来たそうです。

   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(1/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(2/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(3/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(4/4)
   『●『特捜検察の闇』読了(1/3)
   『●『だまされることの責任』読了(1/3)

監督は、東海テレビの斎藤潤一さん。ディレクターは阿武野勝彦さん。ヒットすべき、多くの人に是非見てもらいたい映画ですが・・・・・・難しいでしょうかね。死刑制度について考えを巡らせる良い機会になると思うのですが・・・・・・。
 『週刊金曜日』創刊900号(http://www.kinyobi.co.jp/news/wp-content/uploads/2012/06/120622-003trim.pdf)の表紙は安田さん。この映画について、安田さんに対する森達也さんのインタビュー記事。メディアに対する距離感や、結果として死刑存置を思いとは逆に後押ししてしまったという意識など、いろいろ考えさせられるインタビュー。

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2012062202000122.html

秀作ドキュメント劇場公開 東海テレビ「死刑弁護人」
2012年6月22日 朝刊

 テレビで放送された優れたドキュメンタリー番組が、東京都内の映画館で相次いで上映されている。ドキュメンタリーは内容が高く評価されても、放送が深夜帯だったり、全国ネットではなかったりということが多い。劇場公開で、テレビでは見られなかった人にも作品に触れるチャンスが広がっている。 (宮崎美紀子)

 劇場公開にいち早く取り組んできたのは、東海テレビ(名古屋市、フジテレビ系)。「死刑弁護人」を、三十日から東京・ポレポレ東中野で上映する。
 オウム真理教事件和歌山毒カレー事件光市母子殺害事件など、死刑事件の担当で知られる安田好弘弁護士を追った作品だ。東海地方では昨年十月に放送され、文化庁芸術祭優秀賞を受賞するなど注目されたが、首都圏では未放送だった。
 監督は斉藤潤一ディレクター。「裁判長のお弁当」「光と影~光市母子殺害事件 弁護団の300日~」など、司法をテーマに制作してきた。「光と影~」の取材で、信念を曲げない安田弁護士の生き方に興味を持ったのが今回のきっかけだ。
 作品は、世間からバッシングを受ける安田さんに深く入り込んでいる。「カメラ嫌いの人なので、懐に飛び込もうと思った。取材の後は必ず一緒に食事に行った。本来なら一歩引くべきかもしれないが、密着しないと撮れなかった」と斉藤さん。事件を取材し、放送して終わり、ではなく「なぜ起きたのか、何が原因なのかを一つずつ拾い上げていくのがドキュメンタリー」と語る。「映画館でのお客さんの反応が、次の作品の糧になる」
 阿武野勝彦プロデューサーは「映画にすることで、作品は命を永らえることができる」と話す。
 昨年、戸塚ヨットスクールの戸塚宏校長を取材した「平成ジレンマ」、四日市公害訴訟を取り上げた「青空どろぼう」を劇場公開、今回が第三弾。一年半で三本というのは制作者の強い思いだろう。

    ■ ■ ■ 

 地方のドキュメンタリー制作者の熱い思いは、東京の大手民放局へも波及している。
 十六日から東京・ヒューマントラストシネマ有楽町で公開中の「劇場版 ライバル伝説~光と影~」は、TBSの二つのスポーツドキュメンタリーをもとに、未公開映像を加えて再編集した。同局がドキュメンタリー番組を劇場公開するのは初めて。座席数約六十のミニシアターだが、満員の回が出るなど好調な滑り出しだ。
 テレビ版では分かりやすさのために再現ドラマや冒頭のあおり映像が入っていたが、劇場版では削られ、印象が異なる。
 「東海テレビの試みに大きな影響を受けた」という菊野浩樹プロデューサーは「劇場でチケットを買ってもらったのを見ただけで感動した」と話す。
 今年二月、東京・オーディトリウム渋谷がRKB毎日放送(福岡市、TBS系)の故木村栄文ディレクターの特集上映を行った。好評のため、二十四日から再上映となった。

    ■ ■ ■ 

 東海テレビの三本と木村栄文さんの特集上映を配給した「東風」の木下繁貴代表は「ドキュメンタリーは、この五年ほどで劇場で頻繁に上映されるようになった」と話す。
 小規模な劇映画がヒットしにくくなったのに対し、一定数の動員が見込めるため、ミニシアターが興味を示しているという。
 木下さんは「若い人もドキュメンタリーに目を向けている。もうかるかというと、リスクもあるが、こういう試みが今後一般的になっていくのでは」と話している。
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http://www.kinyobi.co.jp/backnum/tokushu/tokushu_kiji.php?no=2514

2012年6月22日 900号 特集記事

死刑弁護人 安田好弘

この国の刑事司法の矛盾を体現している弁護士がいる。安田好弘さん(六四歳)だ。
彼ほど、事実に徹底的にこだわり、被疑者・被告に寄り添う弁護士は少ない
そのため、困難な刑事事件が集中し、「あんな悪者を弁護するのか」と、新聞やテレビに叩かれ続けている
安田さんを主人公にした映画『死刑弁護人』が公開されるのを機に、刑事弁護とはなにかをあらためて考える。

●「赦すという前提があれば死刑囚の意識は変わる」
 聞き手 森達也

法廷は民意に
大きく影響され、
民意はメディアに
影響されている――森

死刑廃止派は
鬼畜だとのイメージを
多くの人が
持ってしまった――安田

◆齊藤潤一監督に聞く
「死刑について考えるきっかけに」

悪魔の弁護士と呼ばれてもなお、安田好弘氏は死刑弁護を引き受け続ける、その理由は――。安田弁護士に密着したドキュメンタリー映画『死刑弁護人』が6月30日より公開される。映画の見所を齊藤監督に聞いた。

国策捜査
 死刑判決が確定した光市母子殺害事件の元少年  
 弁護団への猛烈な批判と変更された死刑基準
 青木理

●冤罪阻止の最後の砦
 刑事弁護人が抱える困難
 北方 農夫人

死刑や無期判決が予想される重大事件ほど弁護士の労力負担は大きく、
弁護費用が持ち出しになる場合も多い。安田好弘弁護士に重大事件が
集中する背景には、この国の刑事司法の歪みがある。
・・・・・・。
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http://shikeibengonin.jp/tra.html
   ・・・・・・ブログ主: すいません映像を勝手に貼らせてもらいました

『死刑弁護人』劇場予告編

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●『創 (12月号)』読了 (2/2)

2009年01月06日 07時54分43秒 | Weblog
『創 (200812月号)
「「ファーラム90」が発表したデータ 異例! 確定死刑囚77人の獄中メッセージ」(p.62-72)。袴田巌氏、大道寺将司氏。

森達也さん『極私的メデェア論』第38回「視点が違えば世界は違う」(pp.100-103)。伝聞に対する江川さんの抗議。尻切れトンボな印象。「フジテレビで一本のドキュメンタリー番組が放送された。タイトルは「光と影~光市母子殺害事件弁護団の300日」。・・・プロデューサーの名前は阿武野勝彦。そしてディレクターは斎藤潤一。・・・テレビ業界で煩悩し格闘している人は決して少なくない。・・・「鬼畜弁護士を被写体にするお前が鬼畜だ」と罵倒されたという。・・・非当事者である僕たちが、本当の意味で共有など出来るはずがない」。AMLで知ったブログ主もこの番組を見た。また、「・・・蓮池さんが語る内容・・・大手新聞やテレビの報道番組などではほとんど紹介されないことだ。・・・脱力するほどに分かりやすい」。

雨宮処凛さん、「45年間にわたり一着45万円のスーツを年間10着仕立てるおしゃれな首相。・・・敷地だけで6200000000円。・・・『華麗なる一族』の東京宅を見に行きましょう」。で、ゆでダコ坊主主導によるコウボウ (「防」でなく「暴」)
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