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●「自主規制、政権を忖度、報道の萎縮」なテレビ業界で、「『よく撮って、知らせてくれた』…お褒めの声」

2016年11月04日 00時00分08秒 | Weblog


LITERA 本と雑誌の知を再発見』(http://lite-ra.com/)の編集部によるインタビュー記事【東海テレビ・阿武野プロデューサーを直撃! ヤクザの人権、犯罪弁護団、安保批判…萎縮状況の中でなぜ東海テレビだけが踏み込んだドキュメンタリーをつくれるのか】(http://lite-ra.com/2016/11/post-2663.html)。

 《圧力、自主規制、政権を忖度、報道の萎縮……そんな言葉がしきりに聞かれているテレビ業界において、異彩を放つ刺激的なドキュメンタリーが放映されているのを知っているだろうか。名古屋を拠点とする、東海テレビの作品だ》。

   『●「テレビ業界で煩悩し格闘している人は決して少なくない」
              …「隠された歴史を掘りおこす」地方テレビ局
    「優れたドキュメンタリーが、東海テレビ琉球朝日放送南海放送
     といった地方のテレビ局で生み出され、そして映画化される。
     『死刑弁護人』や『標的の村』、『放射線を浴びたX年後』といった作品
     である。
      東海テレビ阿武野勝彦プロデューサーは《映画にすることで、
     作品は命を永らえることができる》、森達也さんは《テレビ業界で煩悩し
     格闘している人は決して少なくない》、そして、木下昌明さん
     《隠された歴史を掘りおこす》と言う」。

 「圧力、自主規制、政権を忖度、報道の萎縮…テレビ業界」で「異彩を放つ刺激的なドキュメンタリー」を放ち続ける東海テレビ。阿武野勝彦氏は「ど真ん中の仕事…ドキュメンタリーの真ん中」であり、そんな仕事には「『よく撮って、知らせてくれた』…お褒めの声のほうが多い」そうだ。

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http://lite-ra.com/2016/11/post-2663.html

東海テレビ・阿武野プロデューサーを直撃!
ヤクザの人権、犯罪弁護団、安保批判…萎縮状況の中でなぜ東海テレビだけが踏み込んだドキュメンタリーをつくれるのか
インタビュー編集部 2016.11.02

     (東海テレビ・阿武野勝彦

 圧力、自主規制、政権を忖度、報道の萎縮……そんな言葉がしきりに聞かれているテレビ業界において、異彩を放つ刺激的なドキュメンタリーが放映されているのを知っているだろうか。名古屋を拠点とする、東海テレビの作品だ。
 光市母子殺害事件の弁護団に密着した『光と影』(2008)、戸塚ヨットスクールの今を描いた『平成ジレンマ』(2010)、ヤクザの人権問題に切り込んだ『ヤクザと憲法』(2015)など、ここ数年、東海テレビが放送したキュメンタリーの数々は物議をかもしてきた。
 しかし、東海テレビのドキュメンタリーは放送中止になることもなく、現在も定期的に地上波でチャレンジングな新作が公開されているばかりか、近年では映画版として再編集され、全国のミニシアターを中心に上映も行われている。
 大口のスポンサーもつかず、縮小していくテレビドキュメンタリーの世界で、フジテレビ系列の東海テレビがなぜ、多様な作品を制作し、放送し続けることができるのか。それ以前に、トラブルを避けたがるテレビマンがほとんどのなかで、なぜこういう作品をつくろうとするのか。

   「たとえば、障害のある人を取材対象にして何だか観たことの
    あるような“いい話”の番組って、ありますよね。障害のある人を
    主人公にするのが悪いと言っているんじゃなくて、ステレオタイプに
    描くのは、安易なやり方で、むしろ失礼だと思うんですよ。あるいは
    タレントを海外に連れて行って、ありきたりな感想を述べるのを
    ありがたがったりするような“ありがち”な番組。私はそれ、
    ドキュメンタリーじゃないんじゃないの?って思う。制作者の志
    どこにあるのだろうと思っちゃいますね」

 そうサラリと業界批判をしてのけるのは、監督やプロデューサーとして一連のドキュメンタリーを支えてきた東海テレビの阿武野勝彦。1981年、アナウンサーとして同局に入社後、報道局記者、営業局業務部長などを経験しながら、『ガウディへの旅』(1990)、『村と戦争』(1995)、『黒いダイヤ』(2005)など多数のドキュメンタリーのディレクターを務めてきた。東海テレビのお家芸である「司法シリーズ」と呼ばれる一連の作品群でも、同局の齊藤潤一とのタッグで『裁判長のお弁当』(2007)や前述『光と影』、『死刑弁護人』(2012)などを手がけ、数々の賞を受賞。「異端」「型破り」ともいわれる放送人だ。
 まず、阿武野に聞きたいのは、普通の地上波が扱わないような“危険な”テーマに踏み込んで、これまで圧力や規制、クレームなどを受けたことがなかったのか、ということだった。しかし、阿武野はこんな拍子抜けするような返事をする。

   「いや、私たちがやっていることは、ど真ん中の仕事。キワモノでも
    なければ、トンガっているわけでもなくて、ドキュメンタリーの真ん中
    当たり前のことを当たり前にやっているという認識しかないので。
    クレームなんかもそんなにこないですよ。むしろテレビを観てくれた
    みなさんからは『よく撮って、知らせてくれた』というお褒めの声のほうが
    多いくらい」

 が、個別に聞いてみると、やはり局内外でのトラブルはないわけではない。たとえば、光市母子殺害事件を扱った『光と影』。この事件では、被害者遺族の訴えがメディアで盛んに取り上げられ、被告の元少年を「極刑にせよ」という世論が過熱彼を弁護する弁護団もまた「鬼畜」とバッシングを受けた。その「鬼畜弁護団」側にカメラを入れた『光と影』の制作中、阿武野は東海テレビの当時の社長と番組を挟んで、直接相対したという。

   「『光と影』は少々揉めましたね。制作が7、8割方進んでいるところで
    突然、先代の社長ですが、私を呼び出し『鬼畜を弁護する鬼畜弁護団
    それを番組にするお前は鬼畜だ!』『お前は狂ってる!』というような
    ことを言われましたね。社長に狂人扱いされるなんて中々ないですよね。
    でも、これは私が辞表出して済む話ではないんですよって。
    東海テレビの名前を出して、私たちは弁護団と取材をする、
    されるという関係になっている。その途中で社長の鶴の一声というか、
    圧力というか、で番組をやめるわけにはいかない
    『社長が制作を止めるんですよ、よろしいんですね? 相手は腕っこきの
    弁護団ですよ? 訴えられるのは、社長ですよ』とお話しましたね。
    当時の報道局長と編成局長も、どういう形であってもいいから番組に
    しようと言ってくれて、放送することが出来ましたね」

 キー局のフジテレビともいろいろあったようだ。もともとフジテレビ系列では、地方局制作のドキュメンタリーが全国ネットで放送される機会はほとんどない。例外は「FNSドキュメンタリー大賞」に応募し、ノミネート作として深夜に放送されるぐらいだ。いわば地方局にとって唯一、全国の視聴者を獲得できる“出口”。しかし、阿武野たちは、数年前から「FNSドキュメンタリー大賞」についてはノミネート枠を、他の部署に譲った。なぜか。
 きっかけは、『ホームレス理事長 退学球児再生計画』(2013)を巡っての、東海テレビ社内の対応とフジテレビからの放送謝絶だった。ドロップアウトした高校球児たちに「再び野球と勉強の場を」と謳うNPOを取材した本作には、金策に奔走する理事長が取材スタッフに土下座して借金を懇願したり、闇金にまで手をだすなど、かなり“危うい”場面がある。なかでも作中で監督が球児にビンタを連発するシーンは、名古屋での放送時に物議を醸した。フジテレビはこの番組について放送しない決定をした。

   「終わったことですし、話すと長くなるんですけど(笑)。まあ、
    あのビンタのシーンでもめたんですよ。フジテレビは番組考査にかける、
    という話しになった。ようは、番組を事前にチェックしてウチで
    放送できるかどうか検討します、というわけですね。でも、これまで
    そういうことはしてこなかったはずですし、各局で放送した内容を
    そのまま放送するのが前提だったはず。何でそうなったのか説明もなく、
    これからどうするかも伝えられず、その対応が理解できなかった。
    信頼関係が崩れたと思いましたね。だから、私たちはこの仕組みには
    乗れないと。喧嘩した訳ではなく、番組、ドキュメンタリー、
    放送についての考え方が違う以上、仕方がない、
    ご遠慮申し上げることにしたんですね」

 こうした姿勢は時として、暴走に映ることもある。たとえば『平成ジレンマ』は“体罰の代名詞”と化している戸塚ヨットスクールの今に密着した作品だが、激しい批判が起きた。本サイトから見ても、体罰肯定論の宣伝につながるような危うさを感じざるをえなかった。
 しかし、阿武野はこうした批判も、ドキュメンタリーには付きものだと思っている。それは彼が求めているものが、右か左か、正義か悪かという二元論的な価値観を超えたもっと深いところにあるからだろう。その深い場所に光をあてるためならば、ときに世間の流れの逆側に立って物事を切り取ることもいとわないそういう覚悟に裏打ちされているような気がする。

   「ありがちなドキュメンタリーは、誰も求めていないと思うんです。
    決まり切った美談のようなものを求めているという風に制作者が
    思っているとしたら、大きな勘違い。そんな時代じゃないよって
    思うんです」

   「今、みんなどうやってリスクを回避するかにとても繊細ですよね。
    そういう教育を受けているから仕方がないと思います。でも、
    私たちのところには、リスクだらけのところに突っ込んでいって
    何かとんでもないドブの中から宝物を引っ張りだすぐらいの力を
    持っている人間が、いるんです」

 たしかに、この姿勢がなければ、この息苦しいテレビの世界で、あんな作品をつくり続けるのは不可能だろう
 しかし、同時に彼は、ただ猛進するだけでもない。たとえば、物議をかもすような題材を扱うにあたり、阿武野は必ずクレームを担当する部署に、事前に想定される問答集をつくって手渡しているという。また、作品についても、たんに撮ったものをすべて出すということではなく、ギリギリのところでバランスをとっているようだ。
 戦後70年にあたる昨年、8月、東海テレビは『戦後70年 樹木希林 ドキュメンタリーの旅』という全6回のシリーズを行った。これは、女優・樹木希林が番組に関連する場所や人を旅し、更に、毎回ゲストを訪ね、過去に全国の地方局が制作してきた戦争の記憶を紡ぐドキュメンタリーについて語り合うという内容だ。
 今、開催されている特集上映「東海テレビドキュメンタリーの世界」にも、このシリーズから同局制作の『村と戦争』(第4回)と『いくさのかけら』(第5回/2005)が組み込まれているが、第1回であった『父の国 母の国』(関西テレビ制作/2009)では、ゲストに笑福亭鶴瓶が登場し、政治についてきちっとした主張をした。当時、国会での強行成立が間近に迫っていた新安全保障関連法そして安倍政権による憲法9条の空文化に対して、こう強い言葉で批判した。

   「いま、法律を変えようとしているあの法律もそうでしょうけど、
    それも含めて、いまの政府がああいう方向に行ってしまうっていうね、
    これ、止めないと絶対いけないでしょうね」

   「こんだけね、憲法をね、変えようとしていることに、違憲や言うてる人が
    こんなに多いのにもかかわらず、お前なにをしとんねんっていう」

 この鶴瓶の痛烈な安保・安倍批判は、スポーツ紙などにも取り上げられ、大きな反響を呼んだ。テレビ地上波で、それも人気商売の芸能人がここまで踏み込んだ政治的発言をするのは、昨今、異例中の異例と言っていい。プロデューサーとして同シリーズを統括した阿武野は、反響は織り込み済みだったのかという質問に対し、静かに頷く。だが実は、その編集には細心の注意が払われていた。

   「放送前に、鶴瓶さんのプロダクションの社長と話をしました。
    そのままでいいですというのが姿勢でした。ここまで大きく育てて
    くれたのは落語であり、テレビの世界でしっかり根を張ることもできた。
    社会にお返ししなくちゃという根底を鶴瓶さんは持っていらっしゃる。
    その上での発言だったんです。しかし、個人を激しく批判している
    ようなところは割愛したんです。ダマってやってしまえばそれは
    芸能人の、命をとる可能性がある。だから取材対象は
    しっかり守るという原則は堅持したんです。収録の場で鶴瓶さんは
    “全部使ってくれええで”って言って帰りましたけど、全部託してくれた
    という信頼感に、私たちがどうお返えしするか、丸めるだけでもなく、
    そのままが最高という単純なものでもなく、つまり、大胆であり、
    なおかつ繊細でないといけないんです、この仕事は」

 影の部分に光をあてる。ただ、それを誠実に為すことが、どれだけ困難か。しかし、それでも阿武野たちはあきらめずにそのための方法を模索し続けている。

   「いま、ドキュメンタリーを観るひとは決して多くない。視聴率はとれない。
    スポンサーが付きにくい。しかも問題は起こりやすい(笑)。
    他局の人間と話すと『東海テレビのようにはウチはできません』
    なんてよく聞きますよ。でも、組織や上司や他人のせいにして
    『できませんと言った瞬間に、もうやれなくなるんです
    自分で自分にダメ出ししているんじゃないですか?」

 注目を集めている映画公開も、テレビドキュメンタリーが直面する困難を克服するために始めたものだった。

   「映画化を始めたのは2011年です。単館を繋ぐ形だから収容できる
    お客さんの数は、大層なものじゃないけど、実際に観ている人の
    息遣いを感じられて、何よりスタッフが生き返った。それに、
    映画なら制作年を打つことで繰り返し放送することもできます。
    希望しても叶えることのできない全国ネットへのこだわりがなくなった
    のも、映画で公開しているから、ということが大きかった」

 映画を観た人がテレビに帰ってきてくれる、そんな構図もあるのではないかと阿武野は言う。だからDVD化も今のところするつもりはないという。
 2017年1月2日には、その映画化第10作にあたる『人生フルーツ』(監督・伏原健之)が公開する。これに先立ち、10月29日(土)から11月18日(金)までの期間、東京・ポレポレ東中野で「東海テレビドキュメンタリーの世界」と題して、劇場初公開を含む全22作品の特集上映が開催される(公式サイト)。
 こうした作品は、自主規制や制約、あるいは上司の一言にとらわれ、がんじがらめになっているマスコミ関係者にこそぜひ観てもらいたい。

(インタビュー・構成 編集部)


■特集上映「東海テレビドキュメンタリーの世界」
10月29日(土)〜11月18日(金)まで、東京・ポレポレ東中野にて公開、ほか全国順次。各作品の上映スケジュールなど、詳しくは公式ホームページ(http://tokaidoc.com/)にて。また、書籍『ヤクザと憲法――「暴排条例」は何を守るのか』(東海テレビ取材班/岩波書店)も10月29日に発売。
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●「テレビ業界で煩悩し格闘している人は決して少なくない」…「隠された歴史を掘りおこす」地方テレビ局

2016年11月03日 00時00分02秒 | Weblog


東京新聞の砂上麻子記者による記事【地方TV局からスクリーンへ ドキュメンタリーの魅力発信】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2016103002000175.html)。

 《地方テレビ局のドキュメンタリー映画の先駆けとなったのが、東海テレビ…。11月3日には「ドキュメンタリーの現在」と題して、映画監督の森達也さんや東海テレビの阿武野勝彦さんによるシンポジウムも行われる。また12~18日には「標的の村」や「みんなの学校」など東海テレビ以外の地方局によるドキュメンタリー映画も特集上映…阿武野勝彦プロデューサー(57)に番組を映画化する意義について聞いた》。

 優れたドキュメンタリーが、東海テレビ琉球朝日放送南海放送といった地方のテレビ局で生み出され、そして映画化される。『死刑弁護人』や『標的の村』、『放射線を浴びたX年後』といった作品である。
 東海テレビ阿武野勝彦プロデューサーは《映画にすることで、作品は命を永らえることができる》、森達也さんは《テレビ業界で煩悩し格闘している人は決して少なくない》、そして、木下昌明さん《隠された歴史を掘りおこす》と言う。

   『●『創 (12月号)』読了 (2/2)
    「森達也さん『極私的メデェア論』第38回「視点が違えば世界は違う」
     …《フジテレビで一本のドキュメンタリー番組が放送された。タイトルは
     「光と影~光市母子殺害事件弁護団の300日」。…プロデューサーの
     名前は阿武野勝彦。そしてディレクターは斎藤潤一。…テレビ業界で
     煩悩し格闘している人は決して少なくない。…「鬼畜弁護士を被写体に
     するお前が鬼畜だ」と罵倒されたという。…非当事者である僕たちが、
     本当の意味で共有など出来るはずがない》」

   『●ドキュメンタリー『死刑弁護人』:
      バッシングされ続ける「死刑弁護人」安田好弘さん
    「監督は、東海テレビの斎藤潤一さん。ディレクターは阿武野勝彦さん。
     ヒットすべき、多くの人に是非見てもらいたい映画ですが…
     難しいでしょうかね。死刑制度について考えを巡らせる良い機会になる
     と思うのですが…」
    《阿武野勝彦プロデューサーは映画にすることで、作品は命を永らえる
     ことができる」と話す。昨年、戸塚ヨットスクールの戸塚宏校長を取材した
     「平成ジレンマ」、四日市公害訴訟を取り上げた「青空どろぼう」を
     劇場公開、今回が第三弾。一年半で三本というのは制作者の
     強い思いだろう》

   『●司法権力の〝執念〟: 映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』
    《事件発生当初から蓄積した圧倒的な記録と証言を再検証し、
     本作を作り上げたのは、『平成ジレンマ』『死刑弁護人』の
     齊藤潤一斎藤潤一)(脚本・監督)と阿武野勝彦(プロデューサー)。
     これは、東海テレビ放送の名物ドキュメンタリー「司法シリーズ」を
     手掛ける二人が、カメラが入ることが許されない独房の死刑囚を
     描き出す野心作である》
    《wataitakeharu 東海テレビの司法ドキュメンタリーの中でも、
     名張毒ぶどう酒シリーズは、どれも秀作だが、今回の『約束』
     (2月16日から劇場公開)はその中でも最高傑作だった。 
     http://t.co/75pUkmi9 恐るべし東海テレビの執念、そして、
     別の意味で恐るべし、司法権力の“執念”!02/10 05:22》

   『●子供にもSLAPPする国: 三上智恵監督・
        映画『標的の村 ~国に訴えられた沖縄・高江の住民たち~』
    《木下昌明の映画の部屋・第166回 ●三上智恵監督『標的の村
     「オスプレイ」反対運動の真実――本土には伝えられない「沖縄」》
    《作品は三上が一人で取り組んだものではなく、沖縄の琉球朝日放送
     というローカル局が、三上を中心とした報道スタッフを編成、テレビの
     枠を超えて映画として仕上げた。 最近、この種のドキュメントが目につく
     愛知・東海テレビ放送の『青空どろぼう』、愛媛・南海放送
     『放射線を浴びたX年後』など。その地域放送局ならではの豊富な
     映像資料を使い、過去から引きずっている事件に焦点をあてて、
     隠された歴史を掘りおこす

   『●木下昌明さん、『死刑弁護人』映画評
    「「木下昌明の映画の部屋」(http://www.labornetjp.org/Column/)より、
     齊藤潤一監督『死刑弁護人』の映画評。安田好弘弁護士についての映画」

   『●血の通わぬ冷たい国の冷たい司法: 「奥西勝死刑囚(87)
                     ・・・・・・死刑囚の心の叫び」は届かず
    《▼その生涯を描いた東海テレビ製作の映画『約束』で、仲代達矢さん
     演じる死刑囚は、拘置所の屋上の運動場で叫ぶ。「死んでたまるか、
     生きてやる」。それは無実を信じ続けた家族の心の叫びでもある
     ▼母タツノさんは、貧しい暮らしに耐えながら面会に通い、
     手紙で励まし続けた。「してない事はしたというな。
     しんでもしないというてけ」「ほしいものがあれば母ははだかになっても
     かってやるから手紙でおしえてくれ」》

   『●無残!……『朝日』は、素人に《人を裁くという経験を通じ、
               死刑と向き合い、是非を考え》させたいらしい
    《映画「ふたりの死刑囚」(東海テレビ放送製作、ポレポレ東中野など
     1月16日公開)は、冤罪を訴える2人の死刑囚と家族の半生を
     追ったドキュメンタリー…「袴田事件」の袴田巌死刑囚(79)…
     「名張毒ぶどう酒事件」の犯人とされ、10月に獄中死した
     奥西勝死刑囚(享年89)》
    《仲代達矢(83)主演で奥西死刑囚の生涯を描いた映画「約束」を
     手掛けた東海テレビの齊藤潤一報道部長(48)がプロデュースし、
     後輩で警察や司法を担当した鎌田麗香記者(30)が監督を務めた》

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2016103002000175.html

【放送芸能】
地方TV局からスクリーンへ ドキュメンタリーの魅力発信
2016年10月30日 朝刊

 地方テレビ局が製作したドキュメンタリー映画の上映が相次いでいる。フェイスブックやツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)や口コミで評判が広がり、全国的なヒットにつながる作品も出ている。ドキュメンタリー番組に割り当てられる全国放送の枠が減る中、地方局は自局制作の番組を劇場版に再編。映画館で上映することで新たな観客を掘り起こそうとしている。 (砂上麻子)


 「見たい人に届けるにはどうしたらいいのか。浮かんだのが映画だった」。映画「みんなの学校」の監督を務めた関西テレビ(大阪市)ディレクターの真鍋俊永さん(47)は語る。

 普通の子どもと障害がある子どもが同じ教室で学ぶ大阪市立大空小学校の一年間に密着し、二〇一三年五月に放送された。その後、フジテレビ系列局による「FNSドキュメンタリー大賞」にノミネートされ、全国で深夜に放送。文化庁芸術祭大賞を受賞した後はNHKのBSプレミアムでも放送された。

 映画化に当たって、四十七分の番組に未使用の場面も追加、百六分に再編し、一五年に劇場公開した。

 これまで約三万三千人の観客を動員、現在も全国で自主上映会が続いている。真鍋さんは「テレビは放送して終わりだが、映画になって作品の寿命が長くなりうれしい」と話す。

 地方テレビ局のドキュメンタリー映画の先駆けとなったのが、東海テレビ(名古屋市)が一〇年に製作した「平成ジレンマ」。一九八〇年代に体罰事件で社会問題になった戸塚ヨットスクールの“その後”を取り上げた。同作が話題となり、同局はさらに八番組を映画化。他局も追随し、米軍基地をテーマにした琉球朝日放送の「標的の村」などが全国公開された。

 今年は「ヤクザと憲法」(東海テレビ)、「ふたりの桃源郷」(山口放送)、「五島のトラさん」(テレビ長崎)と公開が続く。「ヤクザと-」は観客動員が四万人に上り、ドキュメンタリー映画としては異例のヒットを記録した。これらの作品を公開した映画館「ポレポレ東中野」(東京都中野区)の大槻貴宏支配人(49)は「地方の課題や生活を長期的な視点で取材するのは地方局の役割。各局が競っていい作品を送り出してほしい」と期待を寄せる。


◆東中野で特集上映

 ポレポレ東中野で、東海テレビが制作したドキュメンタリー番組の特集上映「東海テレビドキュメンタリーの世界」が11月18日まで行われている。

 独房から無実を訴え続けた奥西勝死刑囚を俳優仲代達矢が演じた「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」や、暴力団員の人権を問う「ヤクザと憲法」、来年1月から全国順次公開する最新作「人生フルーツ」など劇場版の10作品と、テレビ放送した12作品を上映する。

 11月3日には「ドキュメンタリーの現在」と題して、映画監督の森達也さんや東海テレビの阿武野勝彦さんによるシンポジウムも行われる。また12~18日には「標的の村」や「みんなの学校」など東海テレビ以外の地方局によるドキュメンタリー映画も特集上映される。

 問い合わせはポレポレ東中野=(電)03(3371)0088=へ。


◆観客の反応がいい刺激に

 東海テレビ・阿武野勝彦プロデューサー

 東海テレビで数多くのドキュメンタリー番組を手がけ、映画化にも携わってきた阿武野勝彦プロデューサー(57)に番組を映画化する意義について聞いた。

 -ドキュメンタリー番組を映画化しようと思ったきっかけは。

 テレビで放送する時間が減り、放送できても深夜など見る人が限られている。地方でじっくり作っても、全国ネットでは視聴率が取れない、賛否が分かれるなどの理由で放送しにくくなっている。いくら良い番組を作っても、情報発信が地方で留まってしまう状況を変えたかった。


 -映画化の手応えは。

 テレビでは視聴者の様子まで分からないが、映画は観客の反応を間近に感じることができ、テレビのスタッフにもいい刺激になる。

 -ドキュメンタリー番組は一年間に何本制作しているのか。

 東海テレビでは年間七~八本制作し、土日に不定期で放送している。最近、ドキュメンタリーの番組を撮っているスタッフが映画化を期待しているが、必ず映画化するわけではない。


 -映画にする番組はどうやって選ぶのか。

 取材した題材を二時間ほどに編集した第一稿を見た段階で「全国の人に見てもらいたい」と思った瞬間に映画にすると決める。番組制作費で映画化する費用はまかなうようにしている。ただ宣伝費は一本五百万ほどかかり、もうかる事業ではない。


 -映画化に期待することは。

 「ヤクザと憲法」を作ったが、昔なら「ヤクザ」は放送できないと思ってしまっていた。知らないうちに思考停止になっていたが、何かを考えるようになった。停止している思考を回してみると、豊かな表現につながる映画化によってテレビにも豊かな世界を描く人がいると観客に気付いてもらえた。
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●司法権力の〝執念〟: 映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』

2013年02月14日 00時00分26秒 | Weblog


綿井健陽さんの『逆視逆考PRESS』(http://watai.blog.so-net.ne.jp/2013-02-10)で、映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(http://yakusoku-nabari.jp/introduction/http://yakusoku-nabari.jp/story/)のことを知りました。

   『●『創(2009年5月号)』
   『●高い冤罪の可能性: 名張毒ブドウ酒事件
   『●名張毒ぶどう酒事件という冤罪
   『●『冤罪File(No.10)』読了
   『●強大な氷山の一角としての冤罪発覚
   『●「疑わしきは罰する」名張毒ぶどう酒事件、あ~っため息が・・・

 名張毒ぶどう酒事件について、昨年5月末、第7次再審請求差戻審で名古屋高裁が再審の求めを却下している。綿井さんの言うように、正に「別の意味で恐るべし、司法権力の“執念”」である。

   「名古屋高裁刑事二部(下山保男裁判長)は二十五日午前、
    弁護側が提出した新証拠は「毒物がニッカリンTではないことを
    示すほどの証明力はなく、確定判決に合理的な疑いは生じない」として、
    検察側の異議を認め奥西勝死刑囚(86)の再審を開始しない
    と決定した。いったんは再審を開始すると判断した名古屋高裁刑事
    一部の決定(二〇〇五年)を取り消した。」
    (http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012052502000260.html
      (『●「疑わしきは罰する」名張毒ぶどう酒事件、あ~っため息が・・・』) 

 警察、検察、裁判所・・・・・・なぜここまで頑なに再審を拒むのか?

   「名張毒ぶどう酒冤罪事件の第7次再審請求差戻審で、またしても、
    名古屋高裁は開きかけた扉をあっさりと閉じてしまった。
    本当にまじめに新証拠の審査を行っているのか? 奥西勝死刑囚は
    無実の罪で囚われ、すでに86歳だそうだ。警察や裁判所の罪を
    糊塗したままで、冤罪は続いていく」

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http://watai.blog.so-net.ne.jp/2013-02-10

Twitterまとめ投稿 2013/02/10

wataitakeharu 
NHK放送文化研究所のシリーズ、『制作者研究』はどれも興味深い。ネット上でも全文がPDF閲覧できる。http://t.co/jbF8tvpO 個人的には、現代センター代表・吉永春子さんの登場を期待している。吉永さん、お元気だろうか?02/10 05:52

wataitakeharu 東海テレビの司法ドキュメンタリーの中でも、名張毒ぶどう酒シリーズは、どれも秀作だが、今回の『約束』(2月16日から劇場公開)はその中でも最高傑作だった。 http://t.co/75pUkmi9 恐るべし東海テレビの執念、そして、別の意味で恐るべし、司法権力の“執念”!02/10 05:22

wataitakeharu 昨日(9日・土)のTBS「報道特集」で放送された死刑執行の実態。http://t.co/2yA4BR8t 巡田忠彦記者による3回目の死刑リポートは、この番組の名物シリーズ企画となりつつある。東海テレビの司法ドキュメンタリー番組・映画と同じく、僕はこれからも必ず観ると思う。02/10 05:10

wataitakeharu 先日の高円寺ドキュメンタリー祭で、森口豁さん取材の沖縄ドキュメンタリー番組を観た人は、ぜひ以下のテキスト(PDFで全文閲覧可能)も読んでほしい。http://t.co/gIuIIc3Z あのETV特集放射能汚染地図」の七沢潔ディレクターが丹念に調べた森口豁さんの足跡。02/10 04:53
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http://yakusoku-nabari.jp/introduction/

何度裏切られても、彼が信じ続ける。
裁判所が事実と良心に従って、
無実を認めてくれると。

獄中から無実を訴え続けている死刑囚がいます。奥西勝、86歳。昭和36年、三重県名張市の小さな村の懇親会で、ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡しました。「名張毒ぶどう酒事件」です。奥西は一度は犯行を自白しますが、逮捕後、一貫して「警察に自白を強要された」と主張、1審は無罪。しかし、2審で死刑判決。昭和47年、最高裁で死刑が確定しました。戦後唯一、無罪からの逆転死刑判決です。
事件から51年――際限なく繰り返される再審請求と棄却。その間、奥西は2桁を越える囚人が処刑台に行くのを見送りました。いつ自分に訪れるか分からない処刑に怯えながら
あなたは、その恐怖を、その孤独を、その人生を、想像することができますか?


これは、冤罪ではないか。
司法は、獄中死を望んでいるのか?

事件発生当初から蓄積した圧倒的な記録と証言を再検証し、本作を作り上げたのは、『平成ジレンマ』『死刑弁護人』の齊藤潤一斎藤潤一(脚本・監督)と阿武野勝彦(プロデューサー)。これは、東海テレビ放送の名物ドキュメンタリー「司法シリーズ」を手掛ける二人が、カメラが入ることが許されない独房の死刑囚を描き出す野心作である。
そして、奥西勝を演じるのは日本映画界の至宝、仲代達矢。息子の無実を信じ続ける母・タツノ役に、樹木希林。ナレーションをつとめるのは、寺島しのぶ
そう、本作は映画とジャーナリズムが日本の司法に根底から突きつける異議申立なのだ。


半世紀近く拘置所に閉じ込められている
奥西さんの心境は測りしれません。
私がこの状況に追い込まれたらどうなるか、
そういう気持ちで演じました。
60年俳優をやってきた中で、
私にとって記念碑的な作品です。
  ――――――――――― 仲代達矢


http://yakusoku-nabari.jp/story/

独房から無実を訴え続けている死刑囚がいる。奥西勝、86歳。昭和36年、三重県名張市の小さな村の懇親会で、ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した。逮捕された奥西は「警察に自白を強制された」と訴え、無実を主張。1審は無罪だったものの、2審は逆転死刑判決。そして昭和47年、最高裁で死刑が確定した。奥西は、死刑執行の恐怖と闘いながら、いまも再審を求め続けている

奥西の無実を信じているのが、母、タツノ。事件で村を追われ、見知らぬ町で独り暮らしを始めた。内職をして電車賃を稼ぎ、月に1度、名古屋拘置所にいる息子に会いに行く。タツノは奥西に969通の手紙を送った。「お金のあるあいだ、湯たんぽを貸してもらい、牛乳も飲みなさい」「やっていないのは、おっかあが一番知っている」「長い間の苦労は毎日、涙いっぱいですよ」再審を待ち続ける母。奥西はタツノと約束をする。“無実を晴らして、必ず帰る” しかし、その約束は果たされることなく、母は昭和63年、84歳で亡くなった。

そしてもう一人、奥西を支え続けたのが支援者の川村富左吉※(73歳)。確定死刑囚への面会は、肉親と弁護士以外許されていないが、川村は法務省に掛け合い奥西との面会を許される。川村は奥西との面会を10冊のノートに記録した。「起床7時。運動毎日50分。運動は3坪ほどの部屋で歩くばかり」「作業、朝7時40分頃から袋貼り。午後4時に終わる。報酬は月2千円」「正月の食事、鯛の塩焼き・数の子・餅・赤飯・みかん・菓子。普段は米麦6対4」「息子が突然、面会に来た。20数年ぶり。嬉しかった」「誰かの死刑が執行された。一斉放送のニュースが突然切れたのでおかしいと思った」「胃がんの手術。3分の2を切除」

事件から44年後の平成17年4月、名古屋高裁は奥西の再審開始を決定した。川村と奥西は名古屋拘置所の面会室のガラス越しに握手。「今度は晴れて、塀の外で握手をしましょう」と二人は約束した。しかし、喜びもつかの間、検察が異議申し立てをし、再審は棚上げとなった。そして、その半年後、川村は病に倒れ、この世を去る。奥西との約束を果たすことができずに…。

平成18年、奥西の再審開始決定は名古屋高裁の別の裁判官によって取り消されたが、2009年、最高裁は名古屋高裁に審理を差し戻し。平成24年、名古屋高裁は再び、再審開始決定を取り消した――。

司法は、何を望んでいるのだろうか?

                               ※川村富左吉の「吉」の字の“土”は下が長い
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