あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

描かれた伊勢物語 王朝の恋 ・ 出光美術館

2008-02-12 15:39:19 | 日本美術
今夜のお話は、こんな女のひとさ。

昔男ありけり。

雅なマメおとこが出会った
様々なおなご衆の色々をお話取り混ぜ、
絵がその世界を深めてくれる。

執念深い血みどろはやはり清姫のようで恐ろしい。
幼なじみは心安い。
屏風になった伊勢物語は人気のグッドチョイスなのだ。
品定め本のようでもあり、
恋路の不思議な物語は、いつの世も読む人を
引き込んでくれるものなのだ。

125段の つひにゆく
昔男わづらいて、心地しぬべくおぼえければ
つひにゆく道とはかねてききしかど
昨日今日とは思はざりしを

初冠して以来、業平56才で人生を終えるまでの
ひとり男としての物語。

又兵衛のなんとも色っぽい「梓弓」
女が宮使いのため3年待つといって別れた男を慕い続けたが
待てど暮らせど男が来ないので、
ついに諦め、新しく夫を向かえるその時に男が現れる。
やっと待ちかねた男が訪ねてきて、いざ、ここで戸を開けよというのに
女は、この期に及んで新しい夫に操を立てる。
しかし男が去った後もなお、思いが募るばかりで
指からしたたる血で岩に書きつける。
充分いじらしいけれど、
血で歌を書くとはすぎて、
恐ろしい、執念沸々といったらない。
身をよじる思いがしっとり又兵衛が描く。
あぁ~あなた、今このタイミング!!!

映画「卒業」のように結婚式に昔男が
略奪に来る、
この方がおなごはうれしいのに。

この物語を語る人々は、
おなごはずっと新しい夫に添い遂げていけるのだろうかとか、
去っていった男はこんな女だから、
去っていって良かったのだよとか、
そんな話で盛り上がるのでしょう。
男は場当たり、
女は、執念過剰。

一方、「伝、宗達」の絵は、どちらかいうと、
執念がなく、雅なカルタ絵のよう。
まとまってあれだけの絵がずらり並ぶ、
それだけでも圧巻だ。
緑の岩色絵が美しい。

たくさんの画題にもなった伊勢物語、
なぜそんなに慕われてきたのか、
それを辿るきっかけにもいい企画だった。
「恋」の話をするのも、
旬があるようではあるけれど。

伊勢物語、まだまだ面白い逸話が残っていそうだ。
昔も今もあんまりかわらないのかも??
源氏より糸の絡みが少ないから、とっつきやすそうです。

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8 コメント

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伊勢物語 (とら)
2008-02-12 22:46:27
伊勢物語の主人公は今も昔も皆の噂の種。
どの美術ブロガーも今回はアートを忘れて、
この男の人格批評に打ち込んでますね。
実はわたしも・・・TBします。
返信する
Unknown (oki)
2008-02-13 12:20:55
今年は源氏物語千年なのに、伊勢物語とは出光もひねくれてますね。
源氏の展覧会はこの夏に横浜美術館であるようです。

http://www.nhk-p.co.jp/tenran/

僕はこの展覧会はパスして出光は次の西行に行く予定。
返信する
とら さま (あべまつ)
2008-02-13 14:10:59
こんにちは。
伊勢物語の不思議な力にちょっと
はまっています。
とらんの楽しい記事拝読しました。
男はいつもお馬鹿さん♪
ついでに女もお馬鹿さん。
いい組み合わせですよね。
私もとらさんの記事、引っぱってきます~
返信する
oki さま (あべまつ)
2008-02-13 14:15:05
今年は源氏の千年記念なのですね。
あの長い物語をものにする目標を学生時代に持ちつつ、未だに虫食い状態。
西行、私も行きます。
今一番熱い男、と思っている西行です。
対極の男語りの伊勢を持ってきた出光、
私はいい企画と思ったのですよ~
夏の横浜、良さそうですね★
返信する
伊勢は (Tak)
2008-02-13 22:08:50
源氏物語中にも登場します。

系列的にみると伊勢物語あってこそ
源氏物語という大作が生まれたことになります。

同じ歌物語の大和物語よりも
さっぱりすっきりしていて
何より「歌」が生き生きしている
伊勢物語は古典ナンバー1の名作です。
返信する
Unknown (すぴか)
2008-02-14 10:09:49
あべまつさんのすてきな伊勢物語拝聴しました、
という感じです。昨日源氏物語の時代を書いた
山本淳子さんのわくわくインタヴューをきいて
なるほどなあと思ったところなので、やっぱり
古典に強いですね。私も見てきましたが、何を
見てるのだか、さっぱりです。あの雰囲気には
すごいものを感じましたが、絵をみるのに
精一杯でした。家につんである伊勢物語を
付け焼刃でみています。
返信する
Tak さま (あべまつ)
2008-02-14 22:20:29
こんばんは。
>系列的にみると伊勢物語あってこそ
 源氏物語という大作が生まれたことになります。

Takさんの仰るとおり、伊勢は源氏の底流となっていると今頃納得がいっているところです。
雅な方々は、みんな当然知っている歌物語から、
色々と盛り上がり、
方々、様々広がっていったのでしょうね~
歌、恐ろしいほどの深さです。
屏風絵になったものはやはり、極上の美しい場面だったことがよくわかりました。
返信する
すぴか さま (あべまつ)
2008-02-14 22:42:50
こんばんは。
拙い記事を読んでくださり、嬉しく思います。
この展覧会のお陰で、伊勢物語を引っ張り出して、
ざっと追っかけてみたところです。
学生時代の思い込みなどが吹っ切れて、
今の方がずっと場面に引き込まれるのは
なぜでしょう。
恋の話はいつの世もあれやこれやと悩ましいものですが、そこに歌がある、そのことがずっと素敵に感じました。
伊勢物語、老いてからの道のりもいい味出ています。
古典の楽しさをようやく気が付いたところです。
源氏、お勉強されているんですね。
今年はことに源氏物語千年ですから、
心落ち着かせて、じっくり取り組めたらと願っているところです。
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