あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

猿之助歌舞伎の魅力 ・目黒雅叙園

2010-10-27 14:06:37 | 日本美術
その猿之助氏、今年の文化功労賞に選ばれた。
なんというタイミング。
おめでたいこと倍増です。

ばっちい弥太郎、おめでとう。

とも言いたくなる。

今年の文化功労賞に選ばれた輝かしい人々の
芸術性に今一度敬意を敬意を評したい。
サユリスト、感涙でしょう~

水木しげる氏、今年は当たり年ですね。
細江英公氏の写真は常に濃密です。
日本文学で貢献されてきた方々に
光があたったのは嬉しい限りです。

文化・芸術は人々に光明をもたらしてきたことを
続けてこられた情熱を
日本人としてやっぱり誇りに思いたいというニュースでした。

それはさておき、
目黒雅叙園です。
ここの百段階段の恐ろしくもテンコもりもりには
毎回開いた口を閉められないが、
今回の猿之助衣装は
ゴテ部屋を完璧に噛み砕き食いちぎっていました。

驚きましたね。
あの漁礁の間がタコ衣装に沈んで見えたのですから。

スーパー歌舞伎の猿之助といえば
宙吊りの歌舞伎というイメージ。
その衣装もまた古典的なものはもちろんある中、
超、歌舞伎。

雅叙園の入り口にはヤマトタケルの真っ赤な衣装でお出迎え。
冠飾も音を立ててゆらゆらしていそうう。
否が応でも派手な夢世界に心奪われます。


会場までの間に横尾忠則の手によるのポスター
唐十郎も猿之助も彼の手になると
摩訶不思議ワールドに。
ノエルさんは夏休みに大阪国際で横尾展を見てきたそう。
私はもっと前に世田谷美で冒険王を堪能した。

ここの百段階段は実は一段足りないのです、
とエレベーターでご案内の方から聞いた。
じゃぁ白階段だわ。とエレベーターの中で盛り上がった。

怪談話は怖いけれど、
階段は体が怖い。
(北海道ではあぁつかれた、をこわい、こわいといいます。)
下足袋をぶら下げて、下から順番に見て回る。

 十畝の間 歌舞伎の歴史と猿之助三代

 ひろびろとした天井も高く、床の間も広々。
 そこに猿之助ゆかりの沢瀉の印がデザインされた衣装が次々と並ぶ。
 四谷怪談忠臣蔵、夏祭り浪花鑑、双喋々曲輪日記などなどから。
 派手渋粋系。

 漁礁の間 ヤマトタケル海と山と神話の邂逅


 床柱の樵の浮き彫りがものすごい部屋。
 そこに大タコを背負った打ち掛けと大海老を貼り付けた打ち掛けが
 見る人の目をこれでもかと惹きつけ、ギンギンギラギラ。
 浦島太郎の竜宮城ではこんな打ち掛けもあったかもしれないと。
 もりもり太ったタコは既に増殖を諦め、
 腐食寸前に背中に張り付いている。

 ビーズデザイナーで著名な毛利臣男氏のデザインとか。
 あのイケメンの涼しい顔でこのデザインをされたのか~

 他、伊吹山の姥神、山神が沢山の布の短冊を集めた
 衣装を纏って威厳を表していたが、
 何しろタコとエビがものすごすぎ。
 この部屋に展示作品が勝ち誇っているのを初めて見た。


 草丘の間 多彩 衣装に息づく動植物

 猿之助歌舞伎の中でも花形役者が勢揃い。
 南総里見八犬伝の犬山道節、犬塚信乃、犬田小文吾などの衣装。
 忠臣蔵の暁星五郎、石川五右衛門など。

 静水の間 「黒塚」の世界
 
 ここはぐっと暗い部屋となり、
 安達原をイメージされて作られたインスターレーションのよう。
 大きな鎌口のような三日月も仕掛けられているし、
 糸巻きも陰湿なイメージに置かれていた。
 畳の上には黒いネットのようなものがしかれ、
 いよいよ怪しい空気。
 
 鬼女は女の純真がマックスです。

 朱、挽茶扇面八変わり壷織の衣装はチラシに使われた。
 能衣装を思わせるこの衣装は実に重厚、かつ絢爛。


 星光の間 歌舞伎の華 女方

 ここの部屋は一番女性らしい部屋。
 描かれている草花が可憐だ。
 歌舞伎の花形、女方(形、ではなく)の衣装。
 傾城如月実は土蜘蛛の精
 打ち掛けに蜘蛛の巣を配して本性を暗示してます。
 蜘蛛の巣、で松園を思い出しますね~
 更科前 実は戸隠山の鬼女
 こういった具合に女性は実は違う顔を持っている、
 そういう衣装は女性の本質にも迫ります。
 お気をつけあそばせ。

 清方の間 澤瀉屋 舞踏の世界
 
 茶室風のこの部屋は鏑木清方の世界。
 扇面の美女たちが四季の移ろいを彩っています。
 以前、「浮世風呂」のなめくじを亀治郎が可憐に
 踊っていたことを思い出し、
 なめくじをどう、なめくじらしく踊るのか、
 よくもまぁこんなジメジメな生き物を踊ることにしたものだなぁと
 感心もしたし、
 亀治郎がなよなよなめくじを踊ったのにも
 感嘆した。
 その衣装、と冠飾も。
 三助は端折って粋だった。
 
 頂上の間 猿之助歌舞伎の歩み

 今年3月に市川猿之助が制定した
 「猿之助四十八撰」を紹介。
 その資料を見る目が相当疲労していて
 字を追いかけられなかった・・・
 
 それでももう一回漁礁の間に降りていって
 大タコと大海老に悩殺されに行った。

ふ~~~。
ものすごいパワーでした。

それでへとへとになった私たちは
雅叙園の東京チャイニーズに引き寄せられるように
吸いこまれ、
滋味あふれる二十四節気ランチで
眼とお腹を癒したのでした。

病み上がりのノエルさんは至ってお元気。
かつて私も経験した入院ネタで盛り上がりつつ、
主婦と母のネタも交え、楽しいランチのひとときをご一緒した。

それから私たちは庭園美術館を目指し、
雅叙園バスで急坂を登っていったのだった。

猿之助さんの文化功労賞をお祝いすることによって
ボツ原稿になりかけた雅叙園記事がアップできて
肩の荷を下ろすこともでき
ほっとしている。

人の手による夢の世界は
恐ろしいほどの情熱と執着と技術があってのことと
改めて感じいった雅叙園の猿之助世界だった。

絢爛たるサイトをクリックしてみてください。

展示会は終了しましたがサイトでその様子が垣間見れます。

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2 コメント

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お腹いっぱいでした(笑) (noel)
2010-10-29 20:41:09
濃くて楽しい時間をご一緒できてよかったです~♪
なんだか衣装そのものが生きてるみたいというか(怖?)すごいパワーを発してましたよね。あの衣装を負けずに着こなすオモダカ屋の面々、あっぱれです!!

人生万事塞翁が馬ですが、今後ともよろしくお願いします♪
返信する
noel さま (あべまつ)
2010-10-29 21:48:06
こんばんは。

コメントありがとうございます。
思い出すだけでも色の力にヤラれてしましますが、楽しいい時間でした。

パワーを吸い取られたか、頂いたのか判然としませんが(笑)ものすごい仕事をする人々でしたね。

仰る通り、塞翁が馬、禍転じて福となる、でございます。これからもお付き合いよろしくお願いいたします。
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