あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

ルーシー・リー 展(内覧会) ・国立新美術館

2010-04-28 17:35:57 | 美術展
彼女のたたずまいはどこかヘップバーンの老年期とかぶって、
強固な精神力とは裏腹な
人々を包み込む温和な笑顔が愛らしい。

よくいらしたわね、さ、今コーヒーを入れますから
ここにおかけになってお待ちくださいな。

そういって使い慣れた背もたれのある椅子を差し出した。
彼女がキッチンから戻ってくる間
しばし彼女の手から生まれた
沢山の陶器が部屋の飾り棚を占領しているのを楽しく眺めて待った。

そんな何気ない日常が彼女の陶器には沢山詰まっている。

バウハウスから学び、アール・デコから離れた
質実剛健の中でも用の美にも通じる
素朴な手作りの温かさを重んじる質の深さ。

使うものはその人の生活空間にリンクしている。

コペンハーゲンや、リモージュ、ミントン、
などからイメージする洋食器の豪奢なイメージから離れている。

使う色のなんと日本的な自然の色合い。
きっと批判も沢山浴びてきたことだろう。

日本の工芸、用の美を提唱した柳宗悦の強い影響をえた
バーナード・リーチが彼女の陶作にも影響したことは
作品を見れば合点がいく。
しかし、彼女のそれはリーチから離れて、
ルーシーになっていることの凄さに驚く。

一貫して、ルーシーはルーシーであり続けていた。

まるで尼僧のような洗いざらしの木綿のような人だと思った。

生涯親交を深めた
ハンス・コパーの存在も忘れられない。

近々、汐留でそのコパー展が企画されているのが
楽しみだ。

手作りのクッキーのような陶器は
生活になじんだだろうか。
薄作りの、唇でかんだらパリンと砕けそうな
ひらりとゆがんだ朝顔のような花びらの口。
ひょろりと伸びたそろり系の首。
小さな腰と台は不安定を心配させるが、
実はしっかりしているらしい。

きりきりと刻まれた細かな線。
時々ほんのりとピンクがにじんだり、
はっとするようなブルーが見込みに使われたり。
萩のような分厚い釉薬がへばりついてたり。

展示ケースには圧倒的な数を一列に林立させて、
ぐるりを取り囲めるスタイルにした。

静かに彼女の作陶を年代順に並べ、
所々に写真や手帳、映像などがちりばめられ、
淡々とルーシーの世界に誘う。

リーチから贈られたという、
李朝の白磁壷が威厳を放って 独立のケースに鎮座していた。

一箇所 暗転の部屋があって、
そこに入ると夢の煌き、ボタンコーナーであった。
小さきものはそれだけで心ときめくが、
今はボタンやさんが街から消えてしまった。
一つ一つを愛らしく作られたボタンの見本市。
ノスタルジックな場所でもあった。

全体を通しての透明感は
まるで教会のようだった。

彼女の揺るがない陶器への轆轤への忠信が
清清しさにもつながる。
しかし、西洋の人々は彼女の作品を受け入れてくれたのであろうか?

そんな心配はまるで関係なく、
50代過ぎて活動は円熟し、益々活発な活動を展開し、
その情熱は80歳になっても衰えることなく続き、
ついには大英勲章第三位叙勲、という栄誉を得る。
凄くないですか?
93歳で亡くなるまで生涯現役。
私が50代だと嘆いていたら、笑われます。

ぜひぜひ、一度ならずとも緑深まるこの時期に
国立新美術館へ、ルーシーに会いにお出かけください。

ショップにも甘い誘いが微笑んで待っています。

画像は内覧会場内で。関係者にお許しを得ています。
コーヒーと手作りケーキ食べたくなります。

野の花を一輪そっと飾りたくなります。

追記 今回のイヤホンガイドは樋口可南子さん、
   実に心地よい声でガイドしてくれます。 
   こんな経験、めったにないのでした。
   図録もルーシーらしい、愛らしいサイズ。
   作品のような図録でした。

画像もアップしました。
こちら

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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やっぱり・・ (ちょろり)
2010-05-19 21:10:11
そんなにいいですか~・・
やっぱり、観に行くことにします~♪

細川家も凄そうで、こちらも・・!

返信する
ちょろり さま (あべまつ)
2010-05-20 21:46:40
こんばんは。

お久しぶりです~
ルーシー・リーは陶芸家の方ならば
きっと何かを感じられると思いますよ~

細川家はもう、殿様コレクションですから、
ハンパなくパナイっていう展覧です。
ぜひ!
返信する

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