あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

アジアへの憧憬  ・大倉集古館

2007-09-15 22:43:26 | 美術展
大倉集古館は今年随分通った。
特に中国やアジア関係のコレクションは
日本の美術品に目がいっている時代に
いい目の付け所をしたものだと感心する。

また、展覧会を重ねるごとに出品リストなども充実してきた。
アンケートのなせる技かもしれない。
願いをくみ取ることは、ひいては美術館の命存続にも繋がるわけだ。

喜八郎さん、良かったね。

今回は、アジア中心の出品。
ほとんどが中国からのもの。
他に、タイやインド、ネパール、ミャンマー、韓国のものはそれぞれ数点。

紀元前8世紀から、20世紀まで、時代も広範囲にわたっている。

そんな中、
目にとまったものだけ列挙してみる。

1階の奥から、
金属ものが並ぶ。
刀銭、銅剣、鏡、などなど。
金属のものに、まだなじみが薄く、親しく近くによっていない。

その奥に民衆信仰の神様達。
50センチほどの身長で、お顔に親しみが持てる。
案外どこにでも神様を感じていたのだそうだ。
中国の宗教は、仏教に決まっていると思ってはいるけれど、
今はどうなの?
こんな、温かなお顔の神様達がいたことが嬉しい気持ちにさせてくれた。

たっぷりした円筒の涼しげな龍泉窯の青磁香炉
このうす青緑色は色は龍泉窯の色だ。
隣に青花人物図鉢 明のもの。
躍動感溢れる騎馬人物狩り図の絵付けは珍しいのではないだろうか?

ぐるっと回って、
灰陶加彩の武人達。
お墓の主を守ってきたのだ。

二階に上がると、
書物の展示。

13,14世紀頃の書物の中、
八種画譜という本は、唐詩とともに、絵も添えられ、
木版のように見えた。
日本の浮世絵のお手本になったのだろうか?
細かな線彫りが職人技。
本となったのだから、これは印刷?
小さな本を入れる愛おしい木箱。
素晴らしい配色の布を使った本のカバー。
こういう工芸に会うと、ついついうっとりしてしまう。

これから3品が今回の一番の目玉となった。

「清明上河図」
清時代の町中の様々を描き込んだもの。
これが屏風になれば、洛中洛外図になりそう。
描き込みの細かさは尋常ではない。
紙ではなく絹物に描かれているようで、
全体が黄ばんでしまっているけれど、
それでも人々の営みは手に取るように伝わってくる。

信長や、秀吉はこの様なものを観て、
さぞうっとりし、即座に発注したことだろう。

「官女図巻」
日本の湯女図を思い出した。
官女の様々な仕事を現し、女性の魅力もよりどりみどり
スタイルブックのようでもある。
衣装や、簪、持ち物の様々をチェックできる。

「金剛般若経」
仏様のお話が細かな線書きで描かれ、
何話かの後、漢字で説話が書かれているようだった。
澁澤龍彦の高丘親王を思い出す。
人間の顔を付けた鳥が二羽、橋の擬宝珠に止まっている絵などは、
まさに親王が見ていそうだった。
これは、もう少し内容を教えて欲しいと願った。

後は、堆朱の工芸品、螺鈿の箱、
如来様、
タイに金箔を貼られたような緩やかなお顔の
小柄な仏様達。
画像に用いた、「過去五十仏と仏伝図」
横に五体の仏様が十段になり、
下にいる仏様のお出ましをお守りしているよう。
いい色使いだと思った。
涅槃図ではなく、
仏様がベッドで横になっているお姿もあった。
インドの菩薩様達はなぜかエキゾチックで悠然として見える。

先に上げた、図巻3作品に会えたことがいい収穫となった。
中国という恐ろしく広く、歴史の長い国から、
様々を学んできた日本人達。
そのルーツがここ、大倉でたっぷり味わうことができるのは、
やはり、大倉喜八郎氏の情熱的な収集に寄る事なのだ。
伊東忠太氏の建築の雰囲気と、
中国の出品がとてもよく似合うのだった。

裏庭のテーブルでちょっと一息つくのも一興。

この展覧会は、今月30日まで。

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