あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

Story of ...  ・東京国立博物館 表慶館

2009-04-29 15:59:39 | 海外美術
カルティエが1847年にパリに設立されて以来、
様々な人々に愛され続けてきた。

日仏交流150周年記念の特別展。

それにしても凄いダイヤモンドの煌めきと、
それを一層、一段と輝かせた、
工房の技。
ストーリーとは、身につけた類い希な人々の
ストーリーなのだが、
カルティエ工房自身の歴史、
ストーリーでもあった。

日本の宝石文化は、仏様を飾った宝冠や、胸飾り
ぐらいしか思い出せない。
ガラス、翡翠、水晶、珊瑚 瑪瑙(めのう)
帯留めや、指輪などはずっと近代になってからだ。
そういえば、ダイヤモンドを最初に目にした日本人は誰なのだろう?

フラットなアジア人には、ダイヤが目立ちすぎて、
身につけた本人が消えてしまいそう。

彫りの深い、瞳の大きな、輝く微笑みと純白の歯をもち、
すらりとした長身のふくよかな身体。
それを包む流れる豊かな巻き毛。
エキゾチックな惚れ惚れする容姿がなければ、
ダイヤは輝かない。
その差は、意外にも大きな事だと思った。
容姿があまりにも美しいことは、
罪深い話だと、恐ろしくもなった。

場内はダウンライトで、作品達が一層輝けるようになっている。
見ている人達は、ケースの中で、キラキラしている
ネックレス、ブローチ、時計、ティアラなどに
張り付いて、輝きの工芸にため息を吹きかける。
宝石泥棒が生まれて納得するのだ。

もし、あの信長がこの存在を知っていたら、
と妄想する。
秀吉は、名茶器の一つをもらうより、
ずっとわかりやすかったのではないだろうか。

1階は、
ロシアのエナメル、エジプト文明、ペルシャ、インド、
中国や、日本の工芸に影響されてきた作品群があって、
楽しい。
ミステリークロックという不思議なムーブメントを持つ
時計達。美しすぎる。

2階では、カルティエを身につけた人々の物語。
マハラジャ、ヤダヴィンドラ・シン殿下の儀式用ネックレス。
これには、ただもうお口あんぐり。
ピンクパンサー現れませんように。

グレース・ケリーのティアラ、ネックレス。
モナコの妃殿下になった、銀幕の絶世の美女。
なんと神々しい。

圧巻は、メキシコの大女優、
マリア・フェリックス。
彼女は無類の爬虫類好きで、本物の子ワニ2匹を
ガラス瓶に入れて、
「彼らをモデルにして」とカルティエに注文したそうだ。
「急がないと大きくなっちゃうわよ」と。
1匹には1023個、60,02カラットの
イエローダイヤモンド。
もう一匹には1060個、66,86カラットの
エメラルド。
目にはエメラルドと、ルビーが嵌め込まれ、
超リアルな重量感たっぷりのワニネックレスができあがった。
二匹は離してブローチにもなるという気の利かせよう。
それを手にした彼女は、
「私がこれを身につけないで、誰がつけるの?」
そううっとりノタモウタ。

この子ワニネックレスが似合う人、
彼女以外、誰もいません、今もこれからも。

映像が、作品のバックから流れてきて、
そのジュエリーとの物語がそっと語られる。
この展示方法はとても映画的だった。

これでもか、の素晴らしいジュエリー達は、
この建物のなかで、持ち主から離れて、
静かになっている。

また、一階に下りると、
カルティエ工房での作業が映像になっている。
この工房の映像はとても興味深く、
一々の作業の重なりが、あの高貴な輝きを生んでいる。

最後に、現代の作品。
水の中に閉じ込められたダイヤモンド一つが漂う。
涼しい作品だ。

こうして、一連の作品で様々な物語が生まれてきたこと、
カルティエのStory...ということだった。

吉岡徳仁氏の監修は表慶館で一花咲かせたように思った。
会期末まで、もう一度見に行ってこようと思う。

美しい展覧会の様子は、こちらから

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (一村雨)
2009-04-29 22:22:35
私がこれを身につけないで、誰がつけるの?
この驚くばかりの自信。
いやはや、女性というのはスバラシイ・・・
返信する
一村雨 さま (あべまつ)
2009-04-29 22:55:28
こんばんは。

早速のコメントありがとうございます。
アタシも女性の一端にいるのですが、
まったく別世界の女性達がいることをしりました。
いやはや・・・宝石の魔法の凄さよ~~
単純に驚喜しました。
返信する
Unknown (もか)
2009-04-30 18:28:46
こんにちは☆ここのところ、稀世の美を沢山ご覧ですね!
"Story of…”という展覧会名の意味がやっとわかりました。
美しいものには、それにふさわしい人物が存在し、ふさわしい物語が生まれるものなのですね。

私は昨日、表慶館を横目にやっと阿修羅♪でした。次にはこちらも観に行きたいです。
返信する
もか さま (あべまつ)
2009-04-30 22:49:35
こんばんは。

ふと思うと、今、上野には、恐ろしくなるほどのお宝が集合です。
この、表慶館も想像を絶するお宝がぎっしり、
ザックザク。
恐ろしや、恐ろしや。
分相応の、平和な生活にホッとすることも
大切ですね~
凡人で良かったとも思うのです。

阿修羅は、依然として高い評価の大人気展でしょう。
GW明けに、落ち着いて見に行きたいと思っています。
返信する
Unknown (もか)
2009-06-09 10:05:50
たびたび、こんにちは。
終了間際に駆け込み鑑賞、TBありがとうございました!
返信する
もか さま (あべまつ)
2009-06-09 15:33:05
こんにちは。

今回カルティエにはまってしまって、
2回見に行きました。
見せ方、これは様々よい刺激になった美術館もあろうかと。
久しぶりに美しい企画展示と出会いました。
返信する

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