あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

MASKSー 仮の面 ・千葉市美術館

2010-08-10 23:54:02 | 美術展
少し前に横浜そごう美術館で
元民藝館の尾久さんコレクションの中のお面や、
細川の殿コレクションでも垂涎の能面を拝見した。

それと現在、東博の法隆寺館でも伎楽面が公開されている。

遠い昔から、現代までのヒーローは
仮面を被っている。
変身し、仮面をつけて登場するアニメのキャラクターも
数知れず。
仮の姿に身を隠して真実を語るのが得意な民族のようだ。
各地に広がるマスコットたちも!

今回の展覧会は
日本をはじめ、アジア、アフリカ、オセアニアをまたいだ
仮面の展示。西洋の仮面がないのがオシイ!

最初に現れたのが愛すべき木菟土偶達。
縄文の頃から人以上のかたちに何かの力を託していたということか。
面のはじまり、でもあるのだ。

鉢巻鬼神面
頭に鉢巻を巻いた状態の面。
鉢巻をすることでやはり普通以上の力が発揮。
いざ戦わん!の気合たっぷりだ。

鬼神面の阿吽2面セットのもので、
これらは奉納されるもの。

壁面に素朴な質感の奄美地方の面がづらり。
これらも奉納された。

岩のような大きな面がケースの中で
ひしめいていた。
東北・宮城方面の竈面。
解説に興味深いことが書かれてあった。
 これは人がかぶるための面ではなく、
 台所の竈近くの柱に掛けられて祀られる竈神
 なのだといいます。多くの起源譚において、
 卑しい身分の醜い男や童、排泄物や死体といった
 嫌われる存在が家に富裕をもたらし、
 以来竈神として祀られるようになったと
 つたえられているのも面白いことです。
 (千葉美SCENE NEWS より 飯島吉晴「竈神と厠神」)

興味深い解説と実際の竈神の無骨なご面相に愛着を感じた。

高砂と翁の屏風が展示してあった。
誰の作かはメモをしなかったので不明だが、
端正な顔立ちの老人たちだった。

そして、翁面。
長寿はなんといってもめでたいことだし、
願わくば長生きしたいものと皆が望んでいる。
慈悲深いシワと微笑ましい眼と
包容力ある口元なのだ。

鬼と翁が現れたあとは蛇。
般若面というのは般若坊という僧侶からだという話と、
源氏物語の六条御息所の怨霊を祓ったのが
般若経だったからという話があるそうだが、
いずれにしても蛇は女の嫉妬恨みつらみの鬼面の化身。
おおこわ。

執着と執念が恨みに変わるとき。

もう少しこの執念があったならば、
人生が変わる局面があったかもしれない。

そして不動明王の顔や多聞天の顔が現れた。
怨念の解放と浄化をしませんと。

異界の顔、天狗も登場。

日本の面が続いたところで、
突然質量がとてつもなく大きな面が現れた。
なんて大きな顔なのだろう。

カメルーンから王様の顔がやってきた。
冠にはトカゲのモチーフが透かし模様となっている。
ふっくらした頬は富裕を表しているとか。
所蔵しているアフリカンアートミュージアムは
伊豆高原にあって、一度は行きたいと思っているところだ。
次回両親と会う時に足を伸ばしてみよう。
どれもが平穏で静かな顔立ちで、大きさが威嚇的、圧倒的。

アフリカの土着要素たっぷりな面にひきつけられた。

次に目に止まったのは
韓国からのもの。
瓢箪に紙を張り子にしたようなもので、
仮面劇が終わったら劇が終わるごとに焼却処分されるから、
残っている面の数が少ないのだそうだ。
使ったら燃やしてしまう。
使うことによって危険な気配が残ることを避けたのか。
忌み嫌うものであったのだろう。
それぞれの国の習慣や風習を知ることで
一層意味深いものと感じられる。

面は人の顔のもの、鳥類などの動物の顔も沢山ある。
昔から動物たちと生活を一緒にくらしてきたのだ。
カラス、豹、獅子、牛、羊、蛇、竜・・・

中に異様なヘアスタイルの人面があった。
頭上から3方向に螺旋を描いて飛び出ている髪の毛。
このデザインに恐れいったのだが、
実はこの面は勝ち取った生首を使っていたのだそうだが
さすがに植民地化したときに異論が出て
木や羊皮などで作り替えるようになったとか。
ナイジェリアの人頭の頭上面。
頭の上に勝ち取った生首を誇らしげに載せて
勝利を祝ったのだろう。おそろしや。
日本も大将の頭は大事な証拠品であったけれど。
菅原伝授だわ。

面は死者の代わりにもなった。
愛すべき人の顔はいつまでも大切にしたい。
弔う気持ちは聖霊となり、復活を祈る。

能面になり、菩薩面にもなる。
やはり能面の凄さは抜きん出ている。
ものを作る技量と表現力と高い精神性は
他の追随を許さないのではないだろうか。

チラシにもなったナイジェリアの王様の顔。
オ二(王)の面オバルフォン
ブロンズの表情がとても高貴で美しい。
毛髪と髭が植毛されていたような小さな穴が開けられていた。
従うべき人の人相だ。

最後に日本の作家
若林奮 面シリーズ。
鉄で様々を作ったアーティストが小さな面を作っていた。
目隠しされた面が静かな内なる力を見せていた。

一つ一つの面がそれぞれに濃厚な力を発しているので、
ものすごいパワーに振り回されてしまった。
鑑賞後はへとへと。

場内の使い方、照明のこだわり、
作品群の構成、どれもがとても充実した展示だと思った。

照明については関わった方のインタビュー記事が
千葉美シーン・ニュースC`sに掲載されていて、
興味深かった。
この小さな情報冊子がきゅっとしまった記事でいい。

次回は田中一村。
蔵の美術館まで行ったことが思い出される。

少々の休憩の後また奮起して、勅使河原蒼風の展示会場に
移動したのだった。

15日まで。夏休みの濃い時間をぜひ。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (harada)
2010-08-11 14:38:42
いつももったいぶって書いていますね。
返信する
harada さま (あべまつ)
2010-08-11 15:44:17
はじめまして。

haradaさま、初コメント恐縮です。
これからもこの空気で参りますので、
あしからず、でございます。
返信する
ごぶさたです (飾釦)
2010-08-16 22:34:48
あべまつ様

ごぶさたしています。
私もMASK展に駆け込みで行ってきました。
客は少なくゆっくり見れ、仮面も迫力があったので、とてもいい展覧会でした。おしゃるようにユーロッパ系の仮面がないのは残念でした。
返信する
Unknown (テツ)
2010-08-17 15:48:52
こんにちは。

展示冒頭の土偶に「あべまつさんだ」と反応してしまいました。

仮面たちがほんとに濃密な空間を生み出していましたね。

若林奮の面が、とってつけたような展示ではなく
あの世界の一部となっていた構成にも驚きました。
返信する
飾釦 さま (あべまつ)
2010-08-17 20:47:10
こんばんは。

こちらこそ、ご無沙汰でした。
今年の千葉美のラインナップは充実ですね。
MASKS展見所が沢山あって、
大満足でした。
ヨーロッパ系があったらと切望しましたが、
あれ以上の作品が集まると見る方も
大変だったのかもしれませんね~
返信する
テツ さま (あべまつ)
2010-08-17 21:00:00
こんばんは。

木菟土偶を見て、おや?と思っていただけて
嬉しく思います。
他にもそう思って下さった方がいたんですよ~

仮面はとても身近に存在していながら
私たちの生活を守ってくれていたんだと
親しみを感じました。
異形のかたちをしつつも守護神となってくれていたんですね~
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