あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

東京国立博物館 本館 (12月11日)

2015-12-29 17:12:34 | 東京国立博物館
 トーハクの平成館で兵馬俑に圧倒されたあと、
 平成館の考古展示室がリニューアルされたとのことで、
 早速立ち寄ってきました。
 
 我が愛しのミミズク土偶ちゃんも久々に愛らしい姿を
 魅せてくれました。



 考古の展示ではあってもしっかり美術が溢れています。
 
 縄文土器の根源美、始原の美しさ、発掘品にとどまらない、
 命の輝きが今も煌めいてそこにあるのです。







 本館2階の展示にも関連して土偶の立派な姿に巡り会えます。



 いつものように、展示されたものの中から気になったものをピックアップします。
 
 国宝展示室では 「観楓図屏風」(12/13まで展示)
 狩野秀頼筆 紅葉の艶やかな色使いとそれを楽しむ人々の姿が
 繊細に描かれています。





 仏教の美術コーナーでは美しい経文が並びました。(~17まで展示)

 ・平行政願文  
  祖父の13回忌に作成した供養願文といわれています。
  中国製の紙に世尊流の定成の筆と伝えられているそうです。







 
・紺紙金字無量義経
  見返しに極彩色で童舞(わらわまい)の十種供養伝供の図を描いて、
  紺紙には金界線を引き金字で無量義経が書かれています。
  


 ・華厳経断簡
  目無経として知られるのは「金光明経」と「理趣経」で、
  料紙や白描下絵などの体裁と共通し「大方広仏華厳経」
  の目無経断簡2点を東博が所蔵しているとのこと。
  源氏物語の白描下絵に経文が書かれているような美しさでした。
 


 ・往生要集絵巻 巻第四
  迦陵頻伽の愛らしい姿が浮遊して見えました。



 宮廷の美術では断簡シリーズ。(1/17まで展示)
 ・紫式部日記絵巻断簡
  断簡と聞けば、益田鈍翁の存在が思い出されます。
  この断簡もやはり、鈍翁が昭和8年に分断し、
  五島、藤田、他に四巻分が現存するそうです。



 ・佐理、道風、行成 平安の三筆がそろい踏みしていました。
 ・「円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書」
  (えんちんぞうほういんだいかしょういならびにちしょうだいし
   しごうちょくしょ) 
  こちらは延暦寺第10世座主、増命が示寂し朝廷が「静観」の
  諡号を授け、その師である円珍には「智証大師」の諡号が贈られた
  ということで、延長5年円珍没後36年目に相当し、
  和様の開祖といわれる小野道風(894~966)34才の筆との解説がありました。

 毎回、書を前にすると読めない解読できない残念さにうちひしがれますが、
 書体から滲む美しさには親しみを持てるようになりました。

 禅と水墨画 (1/17まで展示)
 こちらには「鷹山水図屏風」が堂々と展示されていました。
 雪村周継筆、松永安左右衛門寄贈
 雪村は常陸国の武将瀬下が禅僧となって遍歴し三春に隠棲したと解説にありました。
 三春といえば、しだれ桜の名所の三春でしょうか。
 そして、杉本博司氏のプリント、ジオラマシリーズを彷彿してしまうのでした。



 屏風と襖絵 (~1/24まで展示)
 「松竹梅図屏風」がおめでたく現れました。ゆったり琳派の香りがします。
 作者は立林何帠(たてばやしかげい)江戸の乾山のお弟子さんだそうです。




 「女房三十六歌仙図屏風」土佐光起筆
 もう、この繊細な雅な姿にため息しかありませんでした。
 全体の姿も、個々の姿も丹精された様子にありがたさをひしひし感じます。

 「源氏物語図屏風」(初音・若菜上)
 こちらも土佐光起筆で雅で美しい屏風で新年を言祝ぎます。
 この屏風は御簾越しに覗き見る、そういう設定がされ、見る人もともに
 覗きを体験できる仕組みとなっています。
 光起の渾身の作品となったのではないでしょうか。
 御簾の線の緻密さに目が痺れます。








 1/2からはここに池大雅の「楼閣山水図屏風」が展示されるようです。

 暮らしの調度 (~1/24まで展示)
 屏風に源氏物語の初音が展示されましたが、こちらでもおめでたい調度として
 初音調度が並びました。
 火事装束の深紅の衣裳がまばゆいものでした。
 また、道八の愛らしい「色絵寿老置物」がお祝いムードを連れてきてくれます。



 こともなげに「色絵月梅図茶壺」仁清作が艶やかに登場します。
 
 書画の展開 (~1/24まで展示)
 「大井川富士山図」英一蝶 (大倉集古館蔵)

 「猿図」木下応受筆 
 この応受という絵師は応挙の次男で母方の木下を継ぐため
 養子となったそうです。さすがにきっちりとした写生を学んだ画力が見えました。
 来年の年賀状デザインの参考となりそうです。



 「猿猴芦雁図」二幅 岩佐勝重筆
 この名前から岩佐又兵衛の縁者かと思いますが、嫡男として福井で生まれたそうです。
 福井藩のお抱え絵師として長く勤めたようです。





 「十二月花鳥図屏風」狩野永敬筆
 まばゆいほどの絵の具の発色の美しさとおめでたい意匠がびっちり描き込められています。






 「和漢古画図巻」(探幽縮図)巻上 (大倉集古館蔵)
 こちらは所蔵先の大倉集古館で展示されて時に拝見したように思います。
 なにしろどの絵も手抜きのない、そのうえさらりと書き上げたスピード感もあって、
 さすが天才絵師、探幽だと知らされるのでした。

 浮世絵と衣裳
 私がトーハクに行ったのは11日で、討ち入り12月14日が目前でしたが
 浮世絵コーナーは赤穂浪士、討ち入り、忠臣蔵特集として賑わっていました。
 いまでも「忠臣蔵」は人気の仇討ち物語ですが、単なる仇討ちではなく
 登場人物それぞれの物語が縦横に絡まり合って
 今でも人の世の悲しみと人情は深く人の心をつかんで離しません。
 松の廊下の刃傷事件、そのシーンを歌舞伎座で判官勘三郎と師直中村富十郎の二人が
 演じたことを思い出します。富十郎さんは当時膝を悪くされていたので、
 松の廊下を膝付きをしたままで、それを勘三郎さんが暖かく受けながらも
 厳しい刃傷シーンを汗握る緊張感で演じていたのでした。
 その後、白装束の判官勘三郎は自刃するのですが、
 本当にそんなことになってしまうとは、、、、、あれから3年なのです。
 そのお二人がいないことを役者絵を見て思い出すのでした。
 その中でイケメンきりっとした三代目沢村宗十郎の大星由良之助
 豊国描く、が綺麗だったので、画像もご紹介します。






 本館1階の彫刻も素晴らしいものでした。
 12月13日までの展示でしたが、画像だけ、upします。
 木喰作の自刻像をトーハクが所蔵しているとは、驚きました。



 また、大倉集古館所蔵の名宝、「普賢菩薩騎象像」が展示されました。
 相変わらず、お美しいお姿でした。
 「伝 源頼朝座像」もきりりと鎌倉の武士を魅せてくれました。
 頼朝の姿は伝、が添付されがちですが、良い男ぶりであることだけを
 確認できればそれでいいと不埒に思うのでした。
 若干小朝師匠にも似ていて、愉快に思ったのでした。


 
 五百羅漢寺所蔵の羅漢座像はやはり異国情緒のご面相で、
 それだけにねっとりしていてビリケン的で愛らしいのでした。
 
 また、大倉集古館所蔵の法蓮上人座像の迫力も素晴らしいものでした。

 こうして、今年最後のトーハク訪問をしっかり楽しんだひとときでした。
 来年は、もう少し歩き回ることができればと思うのですが、
 あと半年、関わったことの活動が無事散会するまで、
 そちらに力を傾注していきたいと思います。
 今年一年、様々な事が続々と押し寄せてきましたが、
 これも何かのご縁、けっして辛いことでは無く、
 頂いたご縁のたまものと逢う人々からエネルギーを頂戴することができました。
 結果、私が出会えるわけのない、素晴らしい方々との時間を持つ事ができました。

 最後にトーハクの黄昏時の画像をお届けして、
 今年最後のトーハク記事と致します。
 (ちょっとぶれぶれの画像があって、お見苦しい点ご容赦お願いします)

 トーハク、今年も沢山ありがとう!! 







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