根津美術館がリニューアルされて何年が経ったことでしょう。
まだその国宝の燕子花図屏風のお披露目とともに
庭園で咲き乱れる燕子花を観賞しないままでいました。
いつかはきっと、と願っていたことがようやく叶いました。
会期も迫ってはやる気持ちで入りました。
先ず展示室をスルーして庭園観察することにしました。
地下のお茶室のある出口からすり抜けるように、
めぐっていくと、
一面の紫。燕子花が咲き誇っていました。
お茶室の目の前になんとも華やかな佇まい。
この姿を描き留めた尾形光琳による燕子花図屏風。
屏風の方が一段とモダンで、デザイン化されていて
斬新だということが良く理解できます。
自然界の華やかさはとても叶わないけれど、
それを家の中に取り込み、空間美を共にし、
そして、集う人びとの心を一層晴れやかにしてきたものだということも納得です。
何度見てもその迫力に魅了されます。
展示室ではその燕子花図屏風の他、
宗達・光悦の色紙や扇面等の小品もあるなか、
伊年印の琳派系の草花図屏風、
喜多川相説の四季草花図屏風
(もしかしたら、一つ前に展示された伊年印の屏風も相説の作か?と解説文がありました)
緻密に描き込まずにさらりと空間も大きく使った作品で
とても好ましく見つめました。
桜下蹴鞠図屏風
蹴鞠を楽しむ殿方を屏風にして、比べ見て楽しんだのでしょう。
浮舟図屏風 匂宮と浮舟の宇治川を渡る狂おしい恋路は悲劇への道。
長谷川派かと考えられるが、宗達の源氏絵をもとにしている、とのこと。
光琳の白楽天屏風が並んでただならない気配が流れています。
そして、どーんと燕子花図屏風が6曲1双。
やはり左右並んでこそ、その動きのリズムが感じ取れます。
圧倒的にカッコイイ屏風です。
隣の小さな展示室に入ると
いきなり、鈴木其一の
夏秋渓流図屏風が現れます。
やはり、この水の流れの群青色の帯と
岩にへばりついたかのような緑の苔の帯、
それと、金色の謎な帯がからまって不思議な気配を作ります。
直立する檜が三つ編みの帯にぐさり刺さって緊張を与えます。
よく見れば檜の葉が胡粉で盛り上がって見えます。
百合と対照的な枯れ葉をもつ桜の木。
蝉も静かに存在しています。
怪しい、実に怪しい屏風です。
周りには乾山や光琳、渡辺始興、抱一などの作品も楽しいもの。
展示室5では
仁清と乾山 ー都の華やかなやきものー
として、二人の競演の展示に喜びました。
乾山のうつわは和む絵付けで現代のうつしをどうか廉価で出して欲しいと懇願したくなります。
仁清のやきものはじつに丁寧な成形に感動します。
お茶の展示室はかろやかなしつらい。
野点も心地よい季節、斗々屋茶碗の春日山や、
高麗茶碗の刷毛目などを持ち出して
のんびりお茶事など出来たら素敵です。
優雅な都の人になった気持ちになって
自然と共にその時を愉しむことをひととき味わってきました。
会期は迫り、19日までとなりました。
燕子花もギリギリ観賞できるのではないでしょうか。
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次回は東洋陶磁と浮世絵の名品。これもまた涼やかな夏を感じられそうです。