あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

日本美術のヴィーナス ・出光美術館

2010-09-11 22:14:58 | 日本美術
展示室の最初には
「普賢菩薩騎象図」の美しい菩薩様がお出迎え。
後光が光り輝き、うっとりする目元涼やかな流し目は
古来日本の美人の型を作っていたのかもしれない。
しかし、牙が6本の象さんって。

時代は下り江戸の花が咲く。
歌麿、西川祐信、勝川春章、鳥文斎栄之、蹄斉北馬
葛飾北斎、月岡雪鼎などの美しどころが立ち並び、
軸装もまたまた美しく楽しめた。

屏風にも逸品が並ぶ。
誰が袖図屏風
人の気配が無いのにもかかわらず、
焚きしめた香木の香りやら、着物を脱いだあとの
人肌な体温や、着物の質感が感じられ、
衣桁も青竹と蒔絵を比べたり、
さてどんな人がこの着物を着て脱いだのかと
想像する工夫が楽しい。

桜下弾弦図屏風の艶やか華やかなこと。

菱川師宣の 遊楽人物図貼付屏風 は
いろんな人々が楽しい遊びを披露している、
丈の小さな屏風。
このくらいのサイズだと部屋を圧迫しないで楽しめそう。

脇に師宣と宮川長春の江戸風俗図巻。
これらを見ると一蝶の先輩なんだなぁと思う。

今回はこれからの
第4章、伝統美と革新のあいだ
この章が一番充実していたのではないだろうか。

今、近代美術館で大々的に開かれている
上村松園の作品コーナーがある。
前期後期で5点の作品。
離れたところにもう1点。計6点。
前期の「四季美人図」「灯」は展示替えの後、
近美の展示場へ移動した。
後期は「艶容」「静かなる夜」「青葉」
ここのところ、ようやく松園の魅力が分かってきた気がしていて、
目にするとなんとはなしに、親しい気持ちになってきた。
「静かなる夜」は源氏の花の宴を読んでいるところ。
「青葉」は後で見る北野恒富の「戯れ」と比べるのも楽しい。

静かで、気品があり、道具立てが実に細やかで、
凛としている。

その次に見たものは
菊池契月の麗しい「少女」「友禅の少女」「朝爽」
近代的な少女の佇まいと麗しい瞳に息を飲んだ。
大作であるのに、圧迫感のない、
部屋の住人となってくれそうな存在感もあった。

後期にはその位置に
北野恒富の「戯れ」「いとさんこいさん」
「戯れ」は近美で見ているが、
やはりあの鮮やかな緑のもみじの葉色が眩しい。
カメラのファインダーを覗く髷の着物姿美人より
一層輝いている。美人が脇役かのように。


「いとさんこいさん」この姉妹の性格が
座っている姿だけで表現されている。
名家の姉妹のことをいとさんこいさん、
そういう表現があるだけでなんか、胸キュンになる。

美人画で清方を外すことはできまい。
「たけくらべの美登利」
その隣に深水の「通り雨」
友と見たときにどちらの女性に軍配を上げるかと話し合った。

純情可憐な美登利は一種危険な一途を孕んでいるが、
通り雨の女性は刹那を諦めて付き合ってくれそうだと。
どちらにしても不安材料が殿方を揺さぶるんだろう。

盛りを過ぎた女同士は女性にも男性にも突き放した感想が言えるものだ。

同時代を生きたという意味で、
上村松園も参加したコーナー。

後期には清方の大作屏風「墨田河舟遊」
これも近美で見ている。
近美のコレクションの凄さをここで改めて感心した。
舟遊びしている様々な人達を丁寧に微細に
描き上げている。

同じ題材で
歌川国久の屏風も。「隅田川舟遊 雪見酒宴図屏風」

最後に小杉放菴の6作品が堂々と並んだ。
日本画と洋画のいいところをミックスさせたような
落ち着いた雰囲気の中にも躍動感がにじんでいた。
新しい試みに光が満ちている。

これらの美人図の間に工芸品の美しい作品が
場内を一層輝かせていた。

蒔絵の手箱、鶴亀の豪華な蒔絵が施された櫛台、
古伊万里の大皿、壺、
簪、櫛、
塚本快示の端正な青白磁の盒、瓶、鉢など。
波山の様々な陶芸品、独特なマットな色使いの
葆光彩磁の作品。
鍋島の可憐な皿や、
陶磁器の観音様まで。

これらは美人図を愛玩した主の部屋を
一層美しく飾ってきたものたちだろう。

今回も出光の企画はしっかりして充実感に満ちていた。
次回はゆるキャラの仙和尚の登場。

酷暑に疲れた心身をじっくり癒してもらいましょう。

美しきヴィーナスはギリギリ明日まで。
駆け込みオススメいたします。

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