あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

艶○源氏 和紙塑像家 内海清美 ・新宿高島屋

2008-09-08 22:31:07 | 日本美術
知らなかったとはいえ、世の中、
様々な視点で源氏と関わっている人がいるのだと感心した。

内海清美という作家をまったく知らなかった。
プロフィールを見ると、
37年東京生
芸大美術学部工芸科を卒業し、
78年に世界クラフトコンペに入賞後、
和紙塑像家として活躍。
90年から平家物語を主題に
「観○平家」を発表し、
03年から「源氏物語」に取りかかり、
今年「艶○源氏」を公開。

とのこと。
私はうっかり瀬戸内寂聴(晴美)の名前をだぶらせてしまって、
驚いた。

全部で16の場面を和紙の白一色で表情豊かに
着物も風になびき、
心模様はほのかに染まっているように見えた。
場面のステージや、バックにも
和紙でタイルの様に小さなブロックが大きなタペストリーになって、
歌が刻まれたり、
月の出る景色となったり
その場面を引き立てていた。

ビデオのコーナーでは、その作業の一つ一つが紹介され、
これまた気の遠くなる手作業の連続。
内海氏の手の中で、もまれた和紙が命を与えられて、
物語から立ち上がって、今にも動き出しそうだった。

源氏物語という物語は、
今でも尚、多くの人を虜にしているのだなぁ。

気が付けば、あちこちで
その残り香があちこちで漂っているのだ。
古いままだったり、新しく再生されたり、
綿々と千年、1000年、生き続けているのだ。

和紙の源氏は、その物語を知ってきたから
余計に楽しく、
六条の御息所の怨霊が空を舞っているところや、
夕顔が息絶えていく様や、
馬から落ちる源氏を惟光が支えているところや、
(殿方は、夕顔がお好きらしい)
末摘花の姫の長い顔と垂れる鼻が可笑しかったり、
青海波を舞う源氏と頭の中将はどちらだろう、とか、
車争いの喧噪の場面は、本当に仰々しくて、
砂煙が立っていそうだった。

艶なる話。
男と女の情念が紙に漉かれ、すくい取られ、
この様であったのだと、まざまざと見せられた。

この世は所詮男と女。
絡み合う情念に振り回され、
狂いながら、そして美しく、果てていくのだと。

折りもおり、
月刊新潮は「源氏物語」が特集だ。
これはまた新しい企画で、現代の実力作家達が
自身の解釈で一つの帖を創作しているのだ。

角田光代には、やられたな、と思った。

他にも
文藝春秋が「源氏物語の京都案内」という
楽しい源氏鑑賞テキストブックを出している。
これもまた、様々「あさきゆめみし」なども紹介しているし、
源氏ゆかりの絵画、京菓子、茶碗、土地などを
54帖に渡ってたのしく案内している。

まさに千年紀のイベント盛り沢山で、
私もいよいよ気分が盛り上がっている。

さて、横浜美術館、いついけるのかしらん。
夏の京都で見た、宇治川がとうとうと
流れている様がまた瞼に浮かんできた。
あの時群れて飛んでいたとんぼは、今も飛んでいるだろうか。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (遊行七恵)
2008-09-09 12:38:51
こんにちは
内海さんはわりと高島屋系で個展が多いのです。
これまでも平家物語とか色々素敵なのを拵えておられます。
わたしもこの展覧会の巡回待ちなんですが、楽しみです。
表情とかけっこうコワモテだったりしますし、なかなか面白い造形ですよね。

デパートの展覧会はわたしを育ててくれたありがたい教室ですので、どんな展覧会でも楽しみに出かけてます♪
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遊行 さま (あべまつ)
2008-09-09 23:24:53
こんばんは。

さすが!内海氏をご存じでしたか。
当日、会場内で白髪のご本人がサイン会していましたよ。サインより、作っている様子が見たいと思いました。モノトーンではありながらも血と肉を纏って、今生に蘇った感じが生々しく感じました。

デパートも素敵な展覧やってくれますね。
三越、高島屋、大丸、は便利です。
どんな展覧会でも行かれるのが凄いところです。
私は好きなものが偏っていて、
狭いなぁと反省するのでした。



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