あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

いつか見た風景 北井一夫展 ・東京都写真美術館

2012-12-03 16:09:13 | 美術展
 

偶然にも先輩知人の友人に写真家、北井一夫さんとの交流があります。
 それで、この大々的北井さんの個展を関係者として参加し、
 盛り上げようと内覧会にお招き頂き、参加してきました。

 旧知の関係は色んな事がめぐってきます。
 有り難い事ばかりです。

 北井一夫さん、お若い方には余り知名度がないかも知れません。
 1944年、中国満州鞍山(あんざん)で生まれ、
 すぐに三重県に引き上げます。
 父親の家業が真珠の商いだったそうです。
 その後、上野入谷に移住します。
 幼少期は深川で育ち、中学時代には神戸に引っ越します。
 学校と合わなくて悶々とした青春期を過ごしますが、
 美術大全集30巻を読むとか、美術館に通ったり、絵描きになろうとしたとか、
 美術への傾倒が進みます。
 デッサンが出来なかったが為に日本大学芸術学部写真科に入学するも、
 早々と馴染まなくなり、中退
 以降1966年から神戸の港湾労働者、学生運動、全共闘占拠などを撮り続ける
 アサヒグラフ表紙に掲載される
 つげ義春と旅をする
 「のら社」結成
 「三里塚」写真集発行
 72年、日本写真協会新人賞受賞。渡仏放浪
 木村伊兵衛と11人の写真家と中国へ
 76年第一回木村伊兵衛写真賞受賞
 以降、写真展を重ねて活動してきた、という経歴をお持ちの方です。

 今回の個展はその北井さんの仕事を通史するような時間の流れで
 構成されています。
 
 ギャラリートークで北井さんが仰ってたことで印象的だったのは
 当時の写真のスタイルとして真逆を行こうと思ったそうです。
 学校で学ぶべききれいな写真に反抗したかったのかも知れません。
 また、カメラへの拘りが面白く、
 高級なレンズには興味がないんです。
 カメラは3台だけです。
 写真集はいつもモノクロ。今回の展示も全部モノクロです。
 その作品は、時代と共にどんどん被写体が変わります。
 どす黒かった昭和の混沌の過激派、三里塚から、
 「いつか見た風景」に現れるのはたくましい地方の人の営みです。
 それから「フナバシストーリー」
 当時の市長さんも会場内に駆け付けてました。
 ついには「おてんき」になると生き物への接写です。
 そして「1990北京」「ライカで散歩」
 ゆるゆるとしたほっこりした北井さんの視線が注がれます。
 最終は「道」
 震災後の福島を撮った作品群です。

 北井さんは、本当にほっこりとした姿で尖った部分が一つも見当たりません。
 主張するパワーの出力の方向が他の写真家と違うのかも知れません。
 「写真力」の篠山紀信さんとは真逆な存在ではないでしょうか。
 北井さんのエッセイを紹介します こちらです
 写真美術館eyes 記載記事から こちら
来年1月27日までの開催です。
写真美術館の他の展覧にあわせて、北井さんのモノクロ世界へぜひ。
写真美術館のサイトはこちら

写真について、全くの素人で、不勉強なのですが、
「写真力」の篠山紀信と同時期にこの北井一夫展を見ることが出来たのは
何かの縁だと思うのです。

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