あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

5月の鑑賞記録

2012-06-08 23:32:14 | アート鑑賞記録
さて、5月、思いがけずに沢山の鑑賞体験が重なり、
かなり充実した月を過ごせました。

カレンダーを追いかけてメモしたもの残します。

 1日 東博にボストン美術館展の再訪

 6日 ブログに挙げたように佐倉の川村美術館「フラワースケープ」

 8日 映画「はじまりの記憶」杉本博司 イメージフォーラム

    出光美術館 悠久の美 唐物茶陶から青銅器まで
    
    三菱美術館 KATAGAMI Style 世界が愛した日本のデザイン

 11日 横浜高島屋で山村御流展 
    (奈良円照寺御門跡華道)
    
    横浜美術館のマックス・エルンスト展

 16日 千葉市美術館 簫白ショック展

 18日 上野芸術大学美術館 高橋由一展

 19日 国立劇場 文楽
         傾城反魂香(けいせいはんごうこう)
         艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)
         壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)

 21日 日本橋高島屋 五浦六角堂岡倉天心展

 23日 サントリー美術館 毛利家の至宝展

 25日 国立劇場 文楽
         八陣守護城(はちじんしゅごのじょう)
         契情倭荘子(けいせいやまとぞうし)

 29日 上野科学博物館 インカ帝国展

 31日 日本橋高島屋 池坊花展

このほか、いつもの草月の稽古、
文芸同人誌発行のお手伝い、
他のお付き合いもこなしつつ、
主婦とお母さんもしていられたことに我ながらびっくり。

そんな中、やはり突出していたのは 簫白と文楽。
それと久しぶりに一人でみた映画、「杉本博司はじまりの記憶」
杉本氏のこだわり、目線、ものつくりへの情熱、日本への思い、
自身の生い立ちなどから、今の杉本美学の構築への道のり。
なんとも羨ましい限りの人生。
杉本氏も杉本文楽の企画開催で喝采を浴び、
今は能舞台を建築中とか。
美味しいところを全部食い尽くしていくのでしょうか?

文楽鑑賞はTVでは何とはなしに追いかけて見てきたものの、
ナマ鑑賞は何十年ぶり。

傾城反魂香は吃音の又兵衛といわれた絵師の話。
吃音がために名をあげられないでいるしがない絵師の
見事手柄を挙げて吃音を主に治してもらったという有り難いお話。
あの奇想の絵師、岩佐又兵衛かといわれているよう。
艶容は酒屋の息子の殺人容疑で家、嫁娘が大騒ぎ。
家に変えることも出来ず、愚息は(愚息とは私の表現)
結婚後も切れずにいた愛人と駆け落ちするも
両親、義理の親、嫁娘のけなげな思いが苦しく切ない話。
壇浦は通称阿古屋の話で
阿古屋が難癖つけられても見事に三味線、琴、胡弓を使いこなし
難を逃れるお話。お見事、ひたすらお見事でした。
1700年中頃のお話しが今でも変わらず言い伝えられてきているという
驚きの物語。
それと今回は縁あって、楽屋裏を見学できる機会に恵まれ、
実に嬉しい体験だった。

吃音の又兵衛は絵師、岩佐又兵衛といわれているらしいけれど、
過剰な表現ではあっても、そう言う扱いをされてきたのかもしれない。
その又兵衛に影響があるといわれる簫白の千葉市美の展覧は
その簫白のものすごさを体験できた。
金泥で細い横線を描いた霞のくらくらする描き込み。
お酒が入って一気呵成で描いた獅子のユーモラスな表情の水墨画と
一ミリも油断を見せない緊張感溢れる
群仙図屏風の極彩色な異界魔界の表現。
彼は一体何者でしょうか?

その簫白に魅了されたアメリカのビゲロー氏のコレクションが
天心とフェノロサが収集したアジアコレクションとともに
ボストン美術館のコレクション所蔵として
空前の凱旋展が東博で開催中。
トーハクでも爆風炸裂中です。
会期も残すところわずか。

その後、縁あってまた文楽の一部へ乱入してきました。
波があるときは乗るものですね。

文楽や歌舞伎など、
日本人の心を動かしてきたものは
今でも生々しく生き続けているのではないかと
熱狂した人々の歓声までも伝わってくる。
大道具として描かれた大道具美術も
その時代のものの名残として触れることが出来る。
絵画も物語も音曲も衣装や髪型、流行のものたちが
お芝居を引き立てて残されていると実感。

熱狂した狂おしい気持ちは
フィクションだからこそ虚実混在していても生きてきた真実として
今の私たちにも十分感動できるのだと思った。
ものを見て、感動し、震えるということは
生きていることの確認でもある。
美しいものの裏には厳しい切磋琢磨が隠されている。
それこそが美しいのだと思い当たるのだが、
そこには入ることも出来ず、外から羨むばかり。
羨むことも意義あることだし、見る人がいなければ
継続がかなわないわけだから、
いよいよ重要な存在を担っていると自負し、
ますます良いものをしっかりと見て
良いお客になるつもりで心がけていきたいと思った次第。

歌舞伎は襲名興行が立て続き
賑々しいこと嬉しい限り。
やはり困難と思われることに立ち向かうことは
応援も必然と生まれ、そのプロセスとともに喝采が待っているのだと
励まされる思いだ。

みなさまもどうぞ良い体験を重ねられますように。

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