あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

フラワースケープ ・川村美術館

2012-05-14 23:25:48 | 美術展
とても良いお天気と安心せずに折りたたみ傘を忍ばせて、
安価コースの京成を使ってのんびり佐倉まで行けるはずが、
途中、なんだかこの景色は変だと気付くも
印旛日本医大前。

知らないうちに北総線に乗り込んでいた私たち。

駅のおじさんに佐倉まで行くにはどうしたら良いのか尋ねると
運良くバズが出ているはずだとのこと。

お~~それで行きましょ、と30分待ちもなんのその。
太っ腹な同行者に激しく感謝。
で、見事にローカルな景色を通り抜けて、
佐倉駅前から川村美術館行きのバスに乗り継ぎ、
珍道中も無事到着。

早々にレストラン入り。
まずは腹ごしらえしませんと。
ここのレストランはとても美味しいので、
うるさいママ達の口も大いに緩んでくれた。
しっかりコースでデザートまで完食。
三人三様のチョイスで三品を味わうシェア作戦。
美味しゅうございました。


さ、庭園散歩してお腹こなさなければ。

懐深い庭園はゆっくりやり過ぎると帰りのバスを気にしながら
端折る羽目になるので適当に切り上げるも
地元野菜や、カナダのメープルシロップなどもしっかりチェック。
藤棚はもう花が咲き終わり、残念。
びっちり躑躅が赤く染まった場所は今日で最終日。
咲ききった感もあるけれどそれにしても塗り絵をしたよう。


鳥たちものんびり憩う水際も森を描いた印象派の絵を彷彿。


さて、美術館は
「フラワースケープ」という特集。
花のキーワードを持つ内外の名品揃い。
絵画で花見。と言う趣向。

その企画室までが常設。
長澤蘆雪 牧童図屏風
まったく蘆雪ってヒトは油断させる緩やかさに
小気味の良い風がふっと流れるんだと嬉しくなる。

コーネルの小さな部屋もあった。

まったく重量感有るコレクション群。
ロスコーの部屋では3人でふぉ~と深い朱の部屋に包まれた。
その後すぐにロスコーの絵がオークションで超高値になったことに驚かされた。

2階の奥に特別会場がある。
ロスコーの重圧から解かれる開放感があるが、
大画面のオレンジにはあっけにとられる。
そこの床と私の靴底がピーピーサンダルのような音を奏でるので、
早々にこそこそと撤退した。
同行者は大いに受けてくれた。

企画展はジョセフ・コーネル展以来。
フラワースコープ、どんなことになるのだろう。

副題がしゃれてる。
 ー画家たちと旅する花の世界ー
会場は9部の章立てになっていてそれぞれが独立していて
フラワーのテーマが大きく通っている。
花だから、華やかなんだが、実に多彩な顔で見せてくれた。
見応え十分。
 1画家たちの花園
  モネ、シダネルといった印象派に見られるような油絵の具の森、
  ガーデン。
 2The Pop Garden
  リキテンスタインとウォーホールのよる花の形。
  ウォーホールの同じパターンの色違いが10枚並ぶのは圧巻。
 3フローラの言い分:花の女神の表象をめぐる断章
  フローラの言い分という章立てにぐっとくる。
  ボッティチェリの春を銅版画にしたエルンスト・モーリッツ・ガイガー
  の次に福田美蘭の三美神は同じくボッティチェリの春からの
  クロリスが登場するが怪しい美人ぶりに目が奪われる。
 4仮想コレクターF氏の部屋:花の静物画の変遷をたどる
  文字通り花のコレクション。
  キャプションに工夫があり、作者の名前が記されていない。
  それであなたはどの花がお好きですかと尋ねられる
  意表をつく楽しい仕組み。
 5生きている花々
  がらりと変わって挿絵の世界。
  花が命を得て物語の主人公となる。
  グランヴィル、ウォルター・クレインの
  おとぎ話のエレガントな世界に夢中になる。
 6野中ゆり:夢の地表へ
  今回の一番の目玉としてワクワクしていたコーナー。
  神奈川近代美術館から堂々の展覧。  
  コラージュのおもしろさが全開。
  前期後期と入れ替えもあるようだ。
  12点並ぶと壮観でもある。
 7杉浦非水:眼の記録、百花の図譜
  非水の木版百花譜のなかから。
  実物よりもしめやかではんなりしているのが素敵。
 8FLOWERSCAPES
  この章立てのおもしろさが際立っていた。
  花を画くということの様々な角度から。
  高島野十郎の百合とヴァイオリンには有名なろうそくシリーズ
  を彷彿とさせるが存在感溢れるものだった。
  手に花を持った肖像画も興味深い。
  岸田劉生と椿貞雄。おじさんたちが何故あんな可憐な花を
  一つ手にしているのだろうかと。
  一点オブジェがあった。
  大きな耳にバラの花がびっしり。三木富雄作。
  パンジーの花を画けば岡鹿之助。
  岡上りうという女流作家のローランサンばりの優しい花も可愛らしかった。
  西洋美術館でいい展覧だったフランク・ブラングィンの
  連作花と子ども達(花園)は画面下方に百合がびっしり。
  物語があるのだろう。
 9有元利夫:天空に花びら舞う
  このコーナーは有元利夫作品の個展状態。
  12点もの作品が並んだ。
  有元利夫の独特な画面からは
  東洋でも西洋でもないどこでもない
  どこかの国の物語を感じる。
  フレスコ画のような古色感も魅力の一つだろう。
  つい、片手を挙げてしまいたくなる。

あまりに見応えがあったので、同行者も驚きながらも
たっぷり楽しんでくれて、本当に良かった。
作品リストを後から見れば、
日本中のあちこちから集められていたことがわかって、
この企画への情熱を頼もしく感じた。
図録はどうだろうと思ったら、
実に素敵な出来だし、解説にもとても親近感湧く視点や、
アンケートの統計などもあって、珍しく一冊の本としても楽しめる。
喜んで小脇に抱え、帰りのバスを待つことにした。

それぞれ気に入ったものをぶら下げての帰路は
間違えずに順調だった。
途中、ひどい雨が車窓を濡らしたが、
程なく下車駅までには日差しも出てきたので安堵した。

その雨の頃、つくばでは大変な竜巻があったことを
後で知ってぎょっとした。

一日の楽しいお出かけアートツアーはこうして無事終了したのだった。

フラワースケープ展は6月10日までが前期。
後期は6月12日から 7月22日までとたっぷりな期間。
是非とも広大な庭園散歩も楽しみながら
ランチも合わせてゆったり過ごせる展覧にお出かけしてみて下さい。


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