あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

THE RINGS 指輪 ・国立西洋美術館

2014-09-10 13:56:31 | 美術展
 
 久しぶりに、国立西洋美術館に行ってきました。
 女子の心の支え、胸のときめき、を見ないことには
 まずいだろうと、ジュエリーに執着はないのですが、
 工芸、金工、宝飾ジャンルとして見てこようと思いました。





 高校教師の友人と連れだって入りましたが、
 会場の設営がとても美しく、サントリー美術館的要素が
 溢れていました。

 庭園美術館で展示されたら、とも夢想します。

 天井からつるされた大きな半径1メートル位の輪のランプシェードのようなものに
 展示されている作品を拡大してプリントされた布が張られていました。

 ともかく作品が指のサイズ、掌に入る小さなものですので
 鑑賞者が目の前で張り付いてため息をいちいちケースに吹きかける、
 そういった状態が続きました。
 作品の近くにはその拡大図と共に解説があって、
 鑑賞の手引きとしてとても役に立ちました。

 指輪とは単に宝飾としてその人を飾るためのもの、
 そういったことばかりではなかった事に気づかされたことが
 一番大きな収穫でした。

 指輪の歴史は紀元前。リングの歴史、4000年を辿ります。
 それも展示品の中で最古のものはエジプトの紀元前1991~1650年のもの!
 古代、新王国時代にはふんころがし、スカラベが多くかたどられました。
 研磨がまだ柔らかで、金属の仕上げもゆるやかな時代から、
 工具の進化と技術の向上と、要求が多岐にわたってくると
 いよいよ石が輝きを増してきます。
 ダイヤモンド、の威力は昔から変わらず、
 輝きの光線が如何に人々を魅了し続けてきたかがわかります。
 時代が下ってアーツ&クラフツ時代となると
 デザイナーの力量発揮の場ともなります。
 ジュエリーの大御所、カルティエが現れると
 圧巻、圧倒されます。

 飾らない指輪。
 そんなことがあるのかと知らされます。
 実は、指輪は魔除けであったり、
 護身であったり、印章でもあったり、
 多岐にわたる用途があったのでした。
 小さな男根がつけられた金の指輪に驚くと
 それは子供のお守りとして作られたそうです。
 また、ヒキガエル石、という素材にも驚かされました。
 腎臓の病気を防ぎ、毒を検知するそうです。
 
 語る指輪。
 ギリシャ神話に登場する、聖書に登場する人物や、動物たちが描かれ、
 その物語を伝えます。
 
 技法と模倣。
 ここでは古代のリングと、それを模倣した近代のものが
 同列に並びます。
 昔の作品に影響されて新しい技術を取り入れて
 作る、ということは工芸では良くあることですが、
 憧れる作品は後世になっても受け継がれていくのだと
 実感できます。

 死と婚礼
 この対極の章にぎょっとしますが、
 相反するもので生は結婚がなければ産まれないし、
 生はまた死へ繋がるものです。
 ドクロをモチーフにするリングは負のオーラを
 纏うようで身につけたいとは思いませんが、
 若い人たちはそれがクール!なのでしょう。
 またこの結婚が永遠と願うカップルのための
 誓約書のようなリング。
 刻印に死を分かつまで愛の宣言をするのです。
 友と二人、永遠はあり得ない、むりむり、と笑いながら
 縛る、管理する、制約する、それは厳しいことよね、と
 厚く同意したことが愉快でした。
 老練とうことの諦観です。笑)

 他、絵の中の指輪、
 モードと指輪では、その指輪と絵画、衣装が展示され、
 その工夫が大変面白く、西美の常設展示でおなじみの作品が
 指輪をいう共通項で登場することでまた再発見することができる
 ものでした。

 ラストに
 指輪あれこれ。
 そういえば、時計指輪ってありましたね。
 戦渦では自害するために毒薬を指輪に忍ばせて携帯していたとか、
 蛇のとぐろ状になったものや、
 007のようなカメラを搭載した指輪や、
 デザイナーの解釈による斬新な指輪がこれでもかと
 押し寄せてきます。

 目の中がキラキラ星になって
 目の前の輝きから目が離れず、目眩を起こすほどの凝視に
 疲れ切ってしまいましたが、
 じつに楽しく、興味深い展示でもありました。

 力尽き果て、空腹にも耐えかねて、
 常設のご馳走には触れず、
 へなへなと昼食に向かったのでした。

 今週末、連休15日が会期末です。
 ぎりぎりとなりましたが、駆け込みお勧めしたい展覧会でした。

 展覧会のロード・オブ・ザ・リング なのでした。
 
 特設サイトはこちらから

 国立西洋美術館のサイトはこちらから

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4 コメント

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Unknown (ken)
2014-09-10 22:03:13
こんばんは。国立西洋美術館の指輪の展覧会へ行ってこられたのですね。いつもながら丁寧で楽しい解説、本当に有難うございます。和楽十月号の付録に美術展カレンダーがついておりました。出光美術館の「宗像大社国宝展」には沖ノ島出土の金製指輪(新羅時代)が紹介されていました。デザインもモダンで現代でも立派に通用する、とコメントが添えられています。今宵はしょぼつく目をこすりながら、トールキンの指輪物語をまた読んでみようかなと思いました。
返信する
ken さま (あべまつ)
2014-09-11 22:51:56
こんばんは。いつも拙ブログを丁寧に読んで下さり、お礼まで頂戴してばかり、恐縮致します。
今月の「和楽」はなんだかとても魅力ある特集なのですね。指輪繫がりで、出光には必ず行こうと思っています。すてきな読書ができますように。
返信する
Unknown (oki)
2014-09-15 21:51:33
こちらにはお久しぶり。
まずは、浪人中の息子さんのご健闘をお祈りします。来年は、新課程の入試でいろいろ大変だと聞いておりますので。

さて、指輪展、僕は金曜に行きました、つまり、夜間開館。
小さな指輪が沢山並んでいますから、解説を読み、実物を眺めと、大変時間がかかりました。
まあ人が並んでいるところはスルーして、人のいないところから眺めましたが。
途中でオバサンに、この作品群は誰が持っている?と、尋ねられ、そんなこと、監視員に聞いてほしいが、橋本コレクションでどうの、と、答えておきました。
最後のコーナー、ロシアのスパイが使ったという、カメラ付きの指輪には驚きましたね!
あと、解説を読んでいると、いろいろ勉強になりました。男でも為になった展覧会でしたよ。
返信する
oki さま (あべまつ)
2014-09-16 17:02:41
こんにちは。
いつも愚息へのエールありがとうございます。
なんとか目標に向かって頑張っているようです。
センター試験の申し込みも動き出しました。

リング展鑑賞にほとほと目が疲れましたが、
多角的な視点があって、コレクターの情熱もさることながら、宝石のもつパワーに圧倒されました。
昨日、15日で閉幕でしたね。
縁あって、2回見に行きました。
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