あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

平櫛田中コレクション展 ・東京藝術大学大学美術館展示室2

2014-09-29 12:49:01 | 美術展


 木彫好きで仏像もその彫像として見てしまいますが、
 平櫛田中のコレクションを芸大美術館で開催と知って
 いそいそ出かけてみてきました。

 平櫛田中コレクションーつくる・みる・あつめるー

 会場は地階で、入場料無料のありがたい企画展示です。
 
 田中の作としていつも念頭にあるのが
 国立劇場に展示してある「鏡獅子」
 指先まで神経が張り詰めている、鬼気せまる迫力に息をのみます。
 また、岡倉天心の釣りをする姿。
 東博でのボストン美術館展で最初に天心が迎えてくれた、
 あの姿。
 時々、近代美術館でみていた天心の全身像。
 などなど、思えばあちこちで作品と対面してきたのですが、
 その度に樹の中から何かを掘り出す、その凄味に圧倒されるのです。

 この展覧は田中の作品ばかりではなく、チラシを飾った
 愛らしい少女は 橋本平八作「或日の少女」

 他、「牛」、「猫」の作品も。
 また、猫繫がりで前衛的単純化された辻晋堂作の陶彫、「ねこ」
 大作「出家」が展示。

 また、お気に入り作家、小川破傘(伝)の「煙草盆」を見ることができて
 大変喜びました。これもまた使える材料をすべて使ったような
 もの凄い装飾の煙草盆でした。これができるのは破傘以外に考えられないくらいのものでした。

 田中の作品は9点ですが、
 会場内に緊迫した空気が張り詰めるのは
 作品一つ一つからあふれ出すオーラの力でしょう。
  
 「三井高福像」三井財閥の8代当主ですが、ご本人のお髭を顎にたくわえた
 リアルなふさふさに仰天しました。
 殿様の背後には立派な花鳥図の屏風。
 なんと、尾形光琳(伝)の「秋草図屏風」なのでした。
 会場の主として鎮座しているようでした。
 三井記念美術館でもおなじみの三井財閥を作ってきた方です。

 また、歌舞伎役者六代目尾上菊五郎の姿、鏡獅子の彫像は
 衣装を着けず、隈取りだけの裸像作品があります。
 隈取りで衣装のない姿を菊五郎は嫌がったそうですが、
 田中はこれでいいと感じていたようです。
 獅子の毛をつけ、舞台衣装を纏った迫力ある作品が並んでいる姿からは
 光が電化して放電しているようでした。
 国立劇場の作品はこの作品より大きなもので、
 歌舞伎を鑑賞する前にいよいよこれから開幕だという
 高揚感に浸ることができます。
 田中は鏡獅子になんと20年費やしたそうです。

 田中の目にかなったコレクションから
 木彫に捧げた情熱の一端を感じ取れる、小企画ではあっても
 充実感に溢れるすばらしい展示作品群だったと
 幸福感に満ちた展覧でした。

 芸大美のサイトはこちら

 この展覧は10月19日まで。
 参考に平櫛田中のサイトがとても役に立ちます。
 小平のサイトはこちら。
 岡山県、井原のサイトはこちら。

 同時に東博でも灰袋子作品を展示されていました。(9月28日まで)
 併せて鑑賞できたので喜びもひとしおでした。

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