あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

美術館で旅行!東海道からパリまで ・山種美術館

2012-09-20 22:34:36 | 美術展



 旅の始まりは東海道から。
 江戸時代にはお伊勢参りがとても流行ったそうだが、
 あの時代、東海道を抜きには語れない主要幹線道路。
 広重の東海道五十三次の代表作で時空をもこえた国内旅行へ。
 
 パソコンなどない時代だから行ってきた人の情報、噂が頼り。
 行きたい気持ち、それがモチベーションを上げる。
 前期、後期と展示作品が入れ替わるが、展覧ギリギリに滑り込んだので、
 後期の展示を拝見してきた。
 日本橋、品川から始まる街道物語。
 現代の景色からは想像もつかない自然との闘い、
 街道筋の人々との関わり合い、
 のんきな人肌の残る宿場町、
 可笑しかったのは宿場町の女が旅人の嫌がる袖を強引に引いていた図。
 袖を引かれた親父は実にいやそうな顔をしていた。
 また、土山・春之雨図は
 雨の斜線がとてもデザイン化されていて、
 画面下にいる羽織のエンジ色がとても効果的だった。
 大作、雪月花のうちの花は鳴門のの渦巻きを花に見立てている。
 三条大橋の袂まで物見遊山のワクワクが延々と続く
 夢の旅物語だったことだろう。

 さて、明治、大正、昭和の時代となっても
 旅の物語の魅力が廃れることはない。
 北海道から南は沖縄まで画家たちの飽くなき旅路は続いた。
 緑の色使いはいつ見ても清々しい。
 ふと目にとまったのは
 横山 操 「越路十景のうち弥彦晴嵐」
 グランドが薄い黄金に輝き、景色はぼうとしているが
 何か気配が濃厚で、瀟湘八景を感じた。
 解説を読むと、やはり中国の瀟湘八景を意識されたことがわかった。
 十景全部を眺めてみたい気持ちになった。
 花の絵で印象深い椿椿山の久能山真景図の静けさに吸い込まれる。
 奥村土牛の絵の質はどこか遙々としている。
 那智の滝も、鳴門の大きな渦潮も偉大な自然を前にしていても
 超然とした悠々とした大きさを感じるのだ。
 山本丘人の洋上の火山は太々とした活火山なのか、威厳あるエネルギーを
 表していた。
 
 画家たちは海外へも出かけた。
 シルクロードと云えば平山郁夫。
 横山大観の長い巻絵、楚水の巻 朦朧体の墨で湿度さえ感じられた。
 千住博のピラミッド「遺跡」には灼熱の太陽の跡、
 速水御舟のオリンピアス神殿遺址に描かれている柱の高い、存在感の大きさ
 など見所満載。

 奥の展示室には
 佐伯祐三が待っていた。
 速水御舟の軽やかなインク、水彩も珍しい。
 児玉希望のモンブラン。山の厳しさと美しさの競演。
 
 絵筆を持ってどこへでも。
 そんな気ままな旅をゆったり時を惜しまずにじっくりその景色と
 対話した足跡が散らばる、世界の旅情報誌を間近に
 見ることができた。
 
 長く、暑く、厳しかった夏もそろそろ終盤。
 夏旅を一堂に観る、そんな楽しみがここに溢れていた。

 会期は23日の日曜日まで。
 カフェの和菓子には展示作品をデザインした
 美しくも美味しいおやつが待っています。
  
 広尾に移ってから、様々な楽しい企画がどんどん告知されている
 山種美術館は沢山の人に絵画の楽しさを一緒に感じたい、
 絵画の魅力をもっともっと伝えたい、そんな情熱が溢れている。

 次回は竹内栖鳳。彼の描く動物たちの表情の虜になることでしょう。
 楽しみな企画です。 

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