キャピトル東急ホテル閉館へ

ここの「パーコー麺」
中華やさんのラーメンとは違って、
そこはかとなく高級感が滲んでいた。

そりゃそうだ。
蝶ネクタイのボーイさんが運んでくれるし、
ひざには、白いナフキンを掛けて頂いたのだから。

豚肉を一枚パリッと唐揚げしたのが短冊状に切られ、
どんぶり一面に香ばしい香りともに、並んでいる。
青梗菜が添えられて、
これがまたシャキシャキしていて、美味しい。
その時が、パーコー麺自体が初体験だったので、
先生の大きな体と、ホテルのレストランで、洋食ではなくて、
中華、ってのがインパクト満載だった。
国会議員の参議院の秘書として、
本当に、これって、私、大丈夫なの？？
そんなことを思いながら、
先生のこともなげにパーコー麺を頼んだ、声が懐かしい。

議員会館の裏道を通って、
なだらかな坂を下がって、
ビートルズの泊まった、キャピトルホテルが見えてくる。

あれから、どのくらいそのパーコー麺を食べただろうか？

その先生は、あっという間に地上の人ではなくなり、
しかし、私の体験した丸２年あまりはあまりにも濃い体験が続き、
そのひとときを一緒にしてくれた、
他の事務所の秘書さん達とのデナー、お茶の数々。
オリガミのケーキをどのくらい食べただろうか？

そして、
星ヶ岡という中華店を忘れたくない。
あの、魯山人がこの地で開いた、料理店がこの名前のルーツとか。

次の秘書として声を掛けて頂いた先生は、キャリアの長い先生だった。
その先生達との会合とか、地元から上京してきた後援会の方々との食事会とか、
もちろん同じ秘書さん達との食事会等々、どれだけ通ったか知れない。
その先生も数年前に旅立たれた。

結婚した後、出産を機に退職してしまってから、
数年近くご無沙汰したが、
私と同時期に、同じく大病をしたＦさんと再会するのに、
キャピトルは格好の場所となった。

お互いの無事と健康、元気で会えることの
ランチは、いつもキャピトルが安心の場所となったのだ。

そう考えると、なかなか節目にこのキャピトルが関わってきたことが、
よくわかる。

去年から、草月流のお花に通い始めているけれど、
ここのロビーは、いつも草月のすばらしい花が迎えてくれる。
御所車の大がかりな舞台に、絢爛と日本の花がお客様の心をとらえる。
外国からのお客様が多い所為もあって、
和のテイストにこだわっているようだった。

仕事に追われていて、あたふたしていた自分が
あそこに沢山詰まっているようだ。

色んな有名人も拝見したし、議員さん達の御用達の場所だし、
クリストファー・ウォーケンが歩いていたのをガラス越しに見たことも懐かしい。

豪華なキラキラづくしのホテルとは違って、
静かで、落ち着いていて、知的で、美的で、
しかもほどよいあったかさがある。
そういう空間が無くなってしまうのは、惜しい。

歴史のある、落ち着いた空気が大好きなのだが、
４年後、複合ビルとなってしまうそうだ。
明日が、最後の営業だ。

私の大切な時間に、いつも一緒にいてくれて、
ありがとう。

朝、そんなキャピトルに４２年お勤めされたホテルマンのリポートが
ＴＶ放映されていた。
どんな世界にも、かっこいい人がいるものだ。
仕事に誇りを持っている人の顔は、なんとすばらしいのだろうと、
深く感じ入った。
最後の日にぴったりの報道だった。

終わりの時を迎えたホテル。
その時、ありがとうを言えるすばらしさを
キャピトルホテルは教えてくれたようだ。
こころから、ありがとう～～