ロートレック展 ・サントリー美術館

ムンクの時に感じた、孤独感。
それとは異質ではあっても、どこか通じる孤独な暗い影。

ロートレックは、富豪の家で両親に大切に育てられてきたにもかかわらず、
足の成長が止まってしまうという障害と共に生きていかなければならなかった。
時々、スケッチやデッサンの片隅に
シニカルな自分の姿が描き込まれている。

女性を美しく描くことをしなかったのは、
最初の恋愛からのトラウマじゃないだろうか？
エゴイスティックで、したたかで、脆くて、気分屋で、
生活という現実を背負っている悲しさを
そんなにむごたらしく描かなくともいいのに。
それを相手にする脂ぎった男達の横顔。
彼はつぶさに不健康に真実を観察していたのだ。

でも、一瞬、もの凄くキラキラする。
生命感溢れる彼女たちの表情。
とにかく生きるのよという決断。
「黒いボアの女」にそれを見た。

ムーランルージュの歓楽の世界。
日本じゃ、浅草か、新宿あたりだろうか。

ジャポニズムの影響も受け、
彼自身、着物を着て写真に残っていた。
４色刷りのポスターにも浮世絵の影響が見受けられる。

踊り子のドレスが螺旋を描いてうっとりする曲線を
誰かが代理で踊って見せた映像は、とても興味深いし、
シュールな世界でもあった。

踊り子の彼女たちと共に、この世を諦めて
生きた証として、
好きなことだけを精一杯やり遂げたのだと思う。

パリが魅力溢れる時代に生きた、短命で孤独な芸術家の
切ない一生を垣間見た。