あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

秘展 其の三 垂直ノ存在社 [木彫] 佐々木誠 [絵画]東千賀・ギャルリさわらび 

2014-06-03 13:06:08 | ギャラリー
 
 木彫の作家さん、佐々木誠さんより銀座の奥野ビル内のギャラリーで展示会の
 ご案内を頂戴しました。
 そのご案内状からすでに霊気が充満しています。
 いかねばなりません。

 銀座一丁目近くの中央通りから2本奥まった通りに
 緑茂る古色騒然のアンティーク臭あふれる奥野ビル、
 その場所での開催に
 またまた期待値が上がるではありませんか。

 ずいぶん前から、あそこのビルほしいと夢想しています。

 伺うと、建てられたのは昭和7年、実父と同い年です。
 
 銀座の片隅で戦争をくぐり抜け、
 生き続けてきた建物から発する老齢の威力、
 そこに染みついた人々の熱気を古色に変えて生き続けている生命力、
 それでも尚、新しい命と共生している瑞々しさ。
 建物の歴史を肌で感じます。








 会場は2階の「ギャルリさわらび」

 2階への階段もいちいち古くて味わいがあります。

 上がりきったところに真鍮のドアノブが付いたギャラリーが見え、
 ここだと確認します。



 引き戸を引くと作家の佐々木さんがいつもそこにいらっしゃるかのように
 立っていらして、ご挨拶頂きました。







 漆喰の白い蔵のその主であるかのような
 「久延毘古」
 面相に走る亀裂から何かが生まれてきそうで痛々しくも生々しい。
 両手両足を表さない形で、身体を遮断している。
 瞑想し自らの思考に籠もっているのか、他者を見てはくれない。
 知恵の神様は身体全体からふつふつと球体を生みだし、
 地べたへコロコロと転がり落としている。
 落ちた球体を拾う者があったとして、それがどういう効力があるのか、
 それは思考の過去の物。
 しかし、今も尚、瞑想し思考の球体は動き出している。
 頭上の傘と腰布はあがめている信者からの供物かもしれない。
 あの集中に誰も近づくことはできないのだ。

 横には東千賀さんの大作、「夢十夜ー仰天・深懊・俯瞰」
 天岩戸のような深遠な色調に人の残映を写している。
 瞑想から俯瞰へ。
 むしろこの夢十夜の世界にこそ「久延毘古」は生きていられる。
 滝の飛沫を浴びるように業を受け入れ、行に生きていられる。

 わがままに行を積んで、したり顔でも岩戸は何も言わないのだ。




 強烈なコラボ空間にしばらく見とれてしまう。
 その角に白い踊り子がいる。
 前衛舞踏の騎士、暗黒舞踏の山海塾の土方巽を連想してしまうが、
 佐々木さんは日本の舞踏をずいぶん見てきたそうだ。
 暗黒舞踏、と言えば、大野一雄、麿赤兒、天児牛大、田中岷、などの
 個性的舞踏家を思い出す。
 日本人としての貧しい身体をさらし、月夜の晩でしか見ることができない
 禁断臭の強いアバンギャルド舞踏家の押さえることのできない
 粘着質な妖怪的存在は実は日本のどこにでも現れていたはずで、
 単純に見る機会を失ったのでは無く、気がついていないだけなのだと。

 あなたのほら、すぐそこに。



 他には、八百万の神の依り代としての祠が壁面に、その分祀たち。
 縄文から生きてきた土蜘蛛。
 猫の手のような孫の手などなど、小さな神様たち。






 奥の部屋にも展示品があり、まるで秘密の屋根裏部屋で、
 こんな場所は誰でも憧れる。
 秘密の場所には秘密の祭壇。
 生きていくための心棒、それが揺れると前に進めない。
 東千賀さんの老いても益々盛んな魂力の画力に
 若い者はひれ伏さなければならない。









 その東さん、実は私の学ぶ草月会館で絵画・デッサンの講師をおつとめされていると聞き、
 驚きました。
 どおりで、草月家元からのお祝い花が届くわけで、
 私の動く範囲は実は仏様の台の中なのだと知らされるのです。
 訪ねてくる方も多く、あの、山下祐二先生も初日にお出ましとか。
 会期は今週末7日土曜日まで。
 
 じめじめとした空気の中、
 心の置き場所を探しに、奥野ビルの魔界へようこそ。
 純粋は垂直にそびえ立つのです。

 ギャラリー内の写真は店主と佐々木さんのお許しを頂戴しています。
 楽しいひとときをご一緒できて大変喜んでいます。

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2 コメント

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現代画廊あと? (増田ただし)
2014-06-14 23:30:38
このエレベーターは洲之内徹の現代画廊のあったビルかも。村松画廊も近かったような。懐かしい。
返信する
増田ただし さま (あべまつ)
2014-06-18 23:11:38
コメントありがとうございます。
すっかりお返事が遅くなりました。

この建物の物語を知りたくなります。
洲之内徹氏の目が注がれていたんですか。
それはまた濃厚な時が流れていたのでしょうね。
新しいところより、こういったところに安堵があります。
返信する

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