あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

夏休みコレクション展北斎「冨嶽三十六景」 MOA美術館

2017-08-17 18:01:49 | 日本美術

 熱海、MOA美術館がリニューアルオープンされ、
 その素晴らしさを耳にし、目にし、早くこの目で確認できることを
 願っていましたが、
 ようやく、伊豆高原の両親宅から移動して、
 なんとかその時を得て行ってきました。

 伊豆方面も夏の景色とは思えない、雨模様続きで、
 梅雨へ逆走しているかのようです。
 夏休み中の家族連れなどでもっと賑わうはずでしょうに。

 それにつけても熱海駅がオシャレな建物となってびっくり。
 どこも昭和時代を引きずることは劣化、耐震不安などの現実もあって
 惜しまれつつもリニューアルしていくしかない時が来ているのかも知れません。
 美術館までのバスがすぐに出てしまうので、周りの変化をチェックする間がなかったのが
 残念です。バス停近くに足湯もできてました。

 MOA美術館の山へ向かうカーブの多い坂道をエンジン音を響かせながら
 バスが熱海駅から10分足らずで入り口まで届けてくれます。

 入り口のロッカーに荷物を預け、チケット(1600円)を求めて
 さぁ、MOAのエスカレーター7基を乗り継いで美術館入り口に向かいます。

 20代の頃、一人で初めてMOAに来たときと同じように、
 還暦となった今も、このエレベーターにこの世と隔絶されてゆく背中が不安になりながら
 頂上を目指します。



 連れだって一緒に行動する人が誰もいません。
 何処となしに薄暗いのです。気持ちも薄暗くなります。

 外はしとしと緑に英気を注いでいるようです。

 ようやく、あの、漆芸家の人間国宝室瀬和美氏とともに杉本博司氏も刷毛を持った
 片身替わりの巨大な漆の扉が待ち受けていました。
 おぉ、これがあの扉か、と出たり入ったりを楽しみました。(ひとりおばさんが怪しすぎる)






 エントランスの広々とした見晴らしに目を奪われます。











 今回の企画展示は「北斎 冨嶽三十六景」
 そのコレクションと「裏富士」とよばれる10図を加えた、46図を一挙公開。
 なかでも「凱風快晴」は摺り、状態ともに極めて優れた1枚という作品が展示されています。

 とはいえ、
 中に入って、その展示室の素晴らしさに目が奪われて
 北斎、広重に申し訳なかったと後から反省したのでした。

 メインロビーに杉本氏の写真
 柔らかな乳白色の大理石の床で、ガラス張りの向こうからは
 熱海の景色が一望できます。
 雨で遠くは見届けられませんが、それなりのしっとりとした
 靄の景色も美しいものでした。
 ベンチの椅子の支えには、三角のガラス。
 ロンドンギャラリーの椅子、バージョンです。

 さて、展示室に入ります。
 いちいちスマートになりました。
 木の扉が左右にスーっと開きます。





 展示室最初に目がとまったのは、
 「港浜風俗図屏風」江戸時代 
 なんと、ガラスなし。







 薄暗いのですが、すぐに目が慣れてきます。
 まさに杉本氏のチョイスによる古木の柱。
 框には幅のある大きな材木が存在感を放っています。





 しげしげ見ていると、係のおじさんが
 見かねてか、材木のことなど教えて下さいました。
 框は屋久杉、行者杉。途中で繋いであります。
 古材の柱は 右が海龍王寺、左に當麻寺(どちらも奈良県)
 畳は麻縁にしてあります。
 漆喰の大きな壁の下には東大寺の瓦職人の手による敷瓦が敷き詰められています。



 運良く、その案内メモを多分超特別に頂くことができました。
 (係のおじさん、感謝!!!)

 ぐるりと「北斎 冨嶽三十六景」が展示されていますが、
 その展示の台、解説札、これもまた、美しいこと。











 展示室1,3,共に漆喰の壁が真ん中に立ち、映り込み防止の役を果たしているとのこと。
 映り込み防止にこんな事しますか、そうですか。
 展示室2,こちらには、かまくらのような黒漆喰で囲んだ
 特別室があり、その中に「国宝 色絵藤花文茶壺」が神々しく輝いて鎮座している
 仰々しさ。凄いことに。










 企画展は、3室までで終了です。




















 北斎「雉図」


 北斎「粟に小禽図」


 北斎 「化粧美人図」
 軸装がまたステキ







 2階から常設展示室が始まりますが、
 次の4,5,6,室は階下、1階へ移動することになります。






 そこへの階段、階段の窓、いちいち手が込んでいます。
 木漏れ日がもれて美しい木材の格子がはめられています。



 平安時代の「阿弥陀如来両脇侍座像」がゆったりおわします。
 また、「東大寺大仏縁起絵巻」室町時代 に目がとまりました。







 その反対側には小さな仏様たち。中国随、唐の時代のもの。
 「十一面観音立像」は平安
 小作りながら、端正。






 次は5室。
 そこには桃山の絢爛が待ち受けてくれました。





 目に飛び込んできた、赤い草花の行列屏風。
 なんて赤がきれいなのかと、どっきりしました。





 「鶏頭図屏風」桃山時代。
 誰の筆によるものか解説になかったのですが、
 琳派の潮流をビシビシ感じます。
 それにしても妖しい色気のある鶏頭の群生です。
 このゆったりとした空間ですっかりこころここにあらず。
 持っていかれました。

 美濃のやきもの。
  「志野梅花四方鉢」「織部扇形蓋物」等が並びます。

 「豊臣秀吉北政所書状」



 

 展示室6には
 杉本氏の「海景 熱海」バージョン。
 また、現代の工芸家の作品。
  (カメラは現代作家作品にかぎり不可でした)






 
 最後の部屋で創立者の紹介部屋と続きます。

 以前はもっともっと展示作品があったように思いますが、
 厳選して、ゆったり展示を心がけることとなったのだと思いました。

 ラストにドアが開くと
 杉本博司氏の「月下紅白梅図」


 ここの展示もまた、美しく、千葉市立美術館で見てからの
 再会となりました。
 須田悦弘氏の梅がこぼれていやしないか、つい探してしまったり。


 

 雨に濡れるヘンリ−・ムアの「王と王妃」も相変わらずの
 睦まじい姿でしたし、その奥には
 近代工芸館前庭、または埼玉県立近代美術館の公園内において
 異形の存在感を放っている黒々とした作品の作者である、
 橋本真之氏の「揺らぐ日々の中に」という作品が展示されていて、
 王と王妃、お二人を横から守っているようでもありました。



 写真を撮ってきたので、おしげなくアップします。














 カフェのカウンターの石がまた異彩を放っています。
 営業が終了してしまっていたのが残念でしたが、
 次回は、お茶室、光琳屋敷まで足を伸ばしたいと思います。
 この石は、真鶴の小松石というもの、だそうです。
 


 まずは、リニューアルMOA美術館を確かめられたこと、
 大変喜んでいます。

 先週は杉本文楽。
 なにかと杉本博司氏の美学に導かれているようです。
 
 あんなに素晴らしい材料と、匠とスポンサーをバックに
 美学を貫けること、稀代のアーティストであることは
 致し方がないのかも、と頭を垂れるばかりです。

 美への眷属であればこそ、
 私の心は安定するのですが、まだまだ未熟を恥じ入るばかりです。 

 リフレッシュできた、小旅行のような体験でした。
 私の、プチ夏休み、かな。
 これから、秋に向けて、色々動かねばならないことが待ち受けていますので、
 エネルギーチャージ、です。

 秋には、MOA美には茶器が展示されるとのこと、これまた、そそられるじゃありませんか。
 「千宗屋キュレーション 茶の湯の美 ーコレクション選」
  10/27〜12/10 
 行かねば!!!!


 

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