あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

明治の七宝 ・泉屋博古館分館

2008-09-03 18:17:06 | 日本美術
少し前に、
東博の近代工芸のコーナーに、
この七宝の並河靖之作の兄弟品が展示されているのを見た。
それを見ながら、
ふむふむ、泉屋に行けば、これが充実してみられる、
ということなのだな、と思った。
それが今日実現したわけだ。

容赦ない紫外線を浴びながら、
ホテルオークラの坂道を上がっていく。

今日は同行の友人がいるため、
神谷町から行くことになった。
彼女とも久しぶりだ。

眩しい光線は、泉屋博古館に入った瞬間、
どこへともなく消えていった。

静かなそこは、各国の大使館や、オフィスビルの谷間にあって、
凛としたオアシスだ。

エントランスに、七宝の道具達が並んでいた。
極細の彩色道具、細長いキラキラとした銀線。
七宝を施すボディにこの線を立ち上がらせて
輪郭を形作り、その中にガラス釉薬を差していく、
気の遠くなる手仕事。

その圧倒的な細かさと、
デザインと、
色使いと、そのフォルムで
全体の品の良さと技術の高さに
欧米の万国博覧会開催場所で
さぞ喝采を集めたことだろう。

細かな花鳥風月、龍、鳳凰、蝶などなど
それらが、壺、香合、皿、花瓶、茶碗などに
微細に柔らかに施される。

名古屋の安藤七宝店の工場長が作った、
月叢雲図硯箱

清水三年坂美術館の
菖蒲図花瓶

並河靖之の
舞楽図扁壺

東博所蔵、内国勧業博覧会出品の
七宝貼込屏風

などがお気に入り。
下絵や、工程見本なども興味深かった。

銀座の安藤七宝店に、ちらりと立ち寄りたくなった。
そのビルは銀座でもなかなか古い建物で、
とても愛着のあるビルヂングだったが、
今はとても近代的な建物になっている。
以前、その建物にお世話になったことがあるのだ。
意外なほど、お手頃で手に入れることができるものもあるので、
お勧めします。

日本の工芸力、ぜひ。15日まで。

良いものを見た、充実感が得られて、
ご機嫌となった。

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2 コメント

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工芸力 (悲歌・哀歌)
2008-09-07 15:45:22
あべまつ様 こんにちは
明治の七宝へ行ってきました。
蝶々というか、鱗粉が苦手なので、敬遠していたのですが、良い展示でした。
好みは、「竹に雀」の図柄の各作品です。雀なのかどうかも分からないのも有りましたが、竹と鳥のトリアワセは、好みでした。
竹内忠兵衛の2作品が、東博と京博からの出品で、揃踏みになって、良い感じでした。
林谷五郎の梅図花瓶は、満開の梅が夜の闇から浮かび上がってくるように見えて、梅香まで感じさせました。
月叢雲図硯箱は良かったねぇー。蓋裏の波に千鳥の図も良い上に、貝形水滴の好いこと!
全体に、ジャポニズムのムードがあって面白かったです。
若冲の鬱蒼、細密の絵柄と争う雰囲気もあって、余白の美に魅かれる小生でも、楽しめました。
職人・アルチザンの実力が遺憾なく発揮された展示でした。
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悲歌・哀歌 さま (あべまつ)
2008-09-07 22:57:39
こんばんは。

鱗粉が苦手とは、珍しいこと。
こともなげにヒラヒラ飛んでいる蝶は
優美だし、可憐だし、なにかあちらを持っていそうで
憧れます。でも、楽しまれて、良かったです。
月叢雲図硯箱、本当に素晴らしかったです。
全体の色調が渋くて煙たつような雲が印象的でした。
浮世絵の彫り師も凄いけれど、この七宝の有線七宝の技はいったいどのくらい凄いのか、見当が付きません。ともかく緻密で、繊細でゴージャスで圧倒されました。
こういう落ち着いた質感の展覧がここの美術館の特徴だと思うのです。
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