あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

河鍋暁斎の能・狂言画 ・三井記念美術館

2013-05-17 11:15:07 | 日本美術
 
 三井記念美術館で開催中の
「河鍋暁斎の能・狂言画」展にいってきました。

 暁斎、といえばプライスコレクションの
 「妓楼酒宴図」が印象的で、宴会中の様々な表情に、
 線の上手い人だな~と思った以来のご贔屓な作家、絵師さんです。
 「狩野派決定版」という狩野派を網羅した別冊太陽でも
 浮世絵師と狩野派絵師との狭間で取り上げられ、
 新しいところでは山口晃氏近著の「ヘンな美術史」の中でも
 「一人オールジャパン」の巨人として燦然と輝いています。

 つまり、なんでも描ける絵師。
 もっと強力な光栄を浴びても良いのではないかと思います。
 今、同時期に太田記念美術館でも「北斎と暁斎」展が開催中です。
 この二人がとても似た存在感で迫って来るのに違いありません。
 会期中にぜひ、訪ねたいと思っています。

 明治に入って、色々なところで学んできた暁斎、
 実は能を習っていたそうで、これにはビックリです。
 高尚な身分の方の世界ではなかったかと。
 この話は暁斎の弟子、ジョサイア・コンドルの著書「河鍋暁斎」
 に詳しくあって、狩野派の画塾に通う若い頃、能に興味を持って
 稽古に通ったそうです。
 その時に物心両面に渡っての援助をしてくれた
 老婦人の存在がとてもありがたかったようで、
 婦人が亡くなると墓前で三番叟を舞ったというエピソードが紹介されています。
 その話しを読んでいたので、
 展示品の中に、その証となる作品があったのは
 やはり、相当な心の入れようだったと理解できました。

 さて、展示室は
 名家、三井ならではの品格ある画帳などから始まります。
 あでやかな能装束などが小さな画面に極細で描かれています。
 
 能・狂言扇面貼交屏風
 この作品は福富太郎コレクションで、またまた良いところを
 お持ちだと感心しました。
 十二ヶ月図屏風は父娘の作で筆の違いがよくわかります。
 弟子、真野暁亭の作品も紹介されています。
 娘、弟子の作品は初めて拝見しました。
 また、下町の豆腐や、笹の雪が所蔵している
 諸家雑画帖の展示には、暁斎のスポンサーをしていたのだろうかと
 思いをめぐらせます。
 見所は展示室5の下絵シリーズでした。
 様々なシーンをスケッチしたその確かさが
 生き生きとして残されています。
 
 展示室6の小さな場所に展示された
 狂言尽くしも見事です。

 展示室7には
 暁斎の真骨頂、楽しく愉快な狂斎漫画も紹介されています。
 千本桜の狐忠信を暁斎が、釣狐を豊原国周が担当した
 コラボ作品、あでやかな一枚、カッコイイです。
 コピーで良いですからこれ下さい、です。

 そういえば、能を画題とした絵師は案外少ないのではないでしょうか。
 もしかしたら、
 何でも絵にすることに興味を持った暁斎は
 能のもつ幽玄かつ耽美な様式美と衣装、面と音に
 激しく惹かれたのかもしれません。

 能を見ることとは随分ご無沙汰していますけれど、
 これを機に朗々と歌う謡の響きと
 舞台を振動させる鼓の音と、幽玄美の世界に
 触れたいと思っています。

 暁斎のほんの一面である能を描いた世界、
 暁斎の深部にはまだまだ遠い道のりのようです。
 海外からきた異人さん交流もあって、
 海外でも高評価な暁斎、もしくは海外の方がずっと
 正当に評価されているのかもしれません。

 会期は前期が19日まで。
 後期が5月21日~6月16日まで。
 展示替えがかなりあるので、後期も行きたいと思っています。

 三井記念美術館のサイトはこちら
 作品画像が丁寧に紹介されています。

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