あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

国貞・国芳・広重とその時代 ・太田記念美術館

2008-10-17 21:14:48 | 日本美術
上野の大琳派は、
「対決」からずっと琳派ウェーブが続いている。
焦らなくても良い。

こういう時に浮世絵の活気ある雰囲気は
やはり、元気が出るものだ。
何と言っても画題が、お楽しみな世界だから。

太田記念のオリジナル展覧。
幕末の歌川派の栄華を辿る企画展だ。
さすがに、長蛇の列の特別展覧の勢いはないが、
その分じっくりと絵と向き合えるのが嬉しい。

畳の展覧場所には、歌川派の師匠豊国、
広重が豊国のところに弟子入りしたかったのに、
大勢さんで入れなかったので、豊広に世話になったそうだ。
その豊広、
国貞、国芳、広重の肉筆5幅がザッと並ぶ姿は、
なんとも格好良かった。
どれも良い色の布を纏った渋い江戸好みの軸装。

ここに、あらっと思うもの。
国貞の星の霜当世風俗(蚊やき)
これは江戸博のボストン美術館にも同じ作があった。
蚊帳とあった画題がここでは蚊やき。
蚊帳が焦げやしないかと心配だ。
若い広重は三枚続きの「青野ヶ原ニ熊坂手下ヲ集ム」
という堂々とした武者絵が現れ、
若い時の広重、豊広のところで、こういう絵を学んでいたのだと、
感じ入った。
みんな若い時は、師匠の色が出るように、
真面目に画業に取り組んでいたのだ。

2階に上がると、
国貞による、文楽の本を背景に、鮮やかな美人の立ち姿。
なかなか斬新な構図で、こういう工夫が見ていて面白い。
三者三様師匠の元、イキが良くなってくるのがよく分かる。

初代豊国がなくなり、国貞が三代豊国を名乗る頃、
師匠からの旅立ち。
いよいよ三人の花が咲くのだ。

三代豊国は、今様押絵鏡など、役者絵に磨きをかける。
三人吉三の役者絵も楽しい。
芝居としてもめちゃくちゃ面白い話。
役者の目玉が大きくなるのは、この頃か?

国芳は武者絵にいよいよ勢いが付き、
酒呑童子で大暴れ。
人がグチャグチャにいる、としよりのような若い人
などのお茶目な作も生まれる。
広重は真骨頂、名所絵に腕をふるう。

三人の貼交絵が珍しい。
「貼交絵 八犬伝・仙人・河豚と根深」
誰が何を担当したのかも想像できる。

お互いの師匠の死絵が弟子達によって描かれている。
三代豊国も、五十三次ものを描いていたのが興味深く、
あの頃は、みんな続き物に嵌っていたのだろう。
なんだかそれだけでもワクワクしてしまうのだ。

とても丁寧な企画で、後期もあるようだから、
是非出かけてみたい。
江戸博とダブルところがあるので、
とても充実した意義ある展覧だった。

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