あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

女性美 あなたの美神(ヴィーナス)に、出逢う春 ・松岡美術館

2012-02-18 12:51:04 | 美術展
実はこの日久しぶりに畠山記念館に出かけたのだが、
残念ながら展示替えのための休館日にはまり、
門前払いとなってしまい、
お目当ての光悦の赤楽とはお目にかかれず仕舞い。
それならばと同行した友人と白金台まで散歩し、
松岡美術館に行くことと急遽変更。

散歩がてら、春の日差しにどこからともなく梅の香りが漂っていたし、
椿もちらほら。
冷たい風の中にも春は間近だと知らせてもらった。

松岡美術館の大きさは鑑賞者に優しい。
渋谷の戸栗に近いサイズだろうか。
館内に入ると眩しいくらいの陽光がさして、
吹き抜けのフロアー越しに庭の景色が
全面に輝いていた。
足下には椿三種が水盤に浮かべられて
なんとも微笑ましい。

今回は「女性美」という企画。
松岡コレクションの中で構成された
女性の美しさを通観できるもの。

二階の企画展室から鑑賞。
階段を上がりながら勇敢な大凧が掛けられ新春のお祝い。
展示室4 
 紀元前B.Cの石膏、テラコッタ、大理石の女性頭部が
 並ぶ。彫りの深さ、目の深み、髪の量感、が見事。
 エジプト、メソポタミアや、イタリアのヘレニズム期の
 豊穣な女性達、女神達に遭遇する。
 
 シルクロードを移動し、
 中国の後漢の灰陶加彩の一対は
 西洋の人物とはまるで作りが違う平面な姿。
 アジア人。
 唐時代の三彩の婦人像。
 ふっくらとゆったりとほほえんでいる。
 清時代の景徳鎮の大皿の鮮やかな婦人像。
 
 その次に現れた日本の薩摩焼による、
 色絵女官、太夫、婦人像のインパクトの凄さにしばし
 あっけにとられた。
 30センチほどの高さの人形なのだが、
 何色の糸数、柄が集まったことだろう。
 花魁の揚巻状態だった。
 さすが、薩摩だと感心したのだった。
 女性美というより、工芸美に近い。

展示室5 
 この展示室には松岡氏旧宅の床の間が移設されている。 
 それだけでこの部屋の雰囲気が落ち着く。
 展示される作品も松岡氏の身近にあった感が強くなる。
 右側の壁面から洋画の女性が堂々と現れ、
 画家の女性へのまなざしが強くなる。
 中島千波の「形態」裸体女性3人の構成と色使い、
 デザイン化されたバックの空間が力強かった。
 その横には芸子さんの半裸体。
 量感のある充実した肉体と芸子であることの魅力が
 弾けていた。 
 広田多津 「白南風」
 床の間には能面の増女。
 先日TVでたけしアートで観世流の能面を見たばかり。
 この世のモノではない女の形。
 床の間のお軸はかろやかな松園の「藤娘之図」

 江戸からは小川破笠の「葛の葉」
 漆芸で魅力ある作品を作った破笠のやわらかな絵。
 月岡雪鼎の「傀儡之図」も軽やか。
 北斎の弟子の臭いがするな~と思ったら
 蹄齊北馬の「三都美人図」三幅。
 浮世絵三枚も並んだ。
 歌麿の「玉屋内誰袖」の怪しげな世界は秀逸。
 
 この部屋入ってすぐに藤田嗣治の気配のある大作
 「三美神・鳥とりんごと女」があるが、
 やはり藤田の弟子について学んだ作家、
 服部和三郎という人だった。

展示室6
 ここの展示室に入ってびっくり。
 ケースには何も展示されず、女性の彫像が林立。
 10人の麗しい女性軍に出迎えられた。
 立像は生気溢れる空気を作り出す。
 仏像とは違い、今そこにいる生命を作る。
 いずれも日展などに出展された。
 女性のぎゅっとした肉感と存在感とあこがれが
 つまっていた。

一階の展示室も女性達への賛歌に溢れていた。

松岡美術館全館で女性達による、女神達による
魅力を感じられる展示に実は松岡清次郎氏自身の女性への
まなざしを見るようでもあった。

個人的には女性像をコレクションする発想はないが、
紀元前の大昔から世界中に女性の魅力に
神を感じてきた人々の歴史が流れていて、
それは今もなお、
その得も言われぬ力によって支えられてきているのだと
気づかされた面白い企画展だった。

なお、展示替えで松園、清方の作品が並ぶとのこと。
半額チケットも頂戴できる。

2月28日から後期、4月15日まで。
サイトも充実です。

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