あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

澁澤龍彦の古寺巡礼

2007-02-20 12:00:12 | 
「澁澤龍彦の古寺巡礼」 コロナブックス 平凡社

この本と目があったので、ともかく連れて帰ってきた。

だいぶ前、名古屋で、「高丘親王航海記」のお芝居を観た。
既に澁澤氏は霊界の人となっていたが、
龍子夫人と知り合いを通してご挨拶することが出来た。

あれは、澁澤龍彦へのオマージュ。
四谷シモン氏もいたし、
巌谷國士氏も見えた。
あの時、それがどれくらいの意味を持つ物なのか、
まるでわからなかった私に、今となって、その恐ろしさに気が付くのだった。

そして、この本が私の手の中に。

白洲正子さんの「かくれ里」などの編集スタッフに、
夫人の龍子さんがいた影響もあって、
結婚以来、こもりがちだった、龍彦氏を引っ張り出して、
日本を巡るようになったのだそうだ。

本は、今や時の人となった、若冲と縁の深い石峰寺から始まる。
あれだけ世界中の怪奇な話を集めた人なのに、
日本を語っていることに、驚く。
高丘親王を取り上げたのは、自身が多分、
もう命が終わることを予知していたのだろうけれど、
この親王は、865年、天竺へ向かうお話だ。

世界中の様々な物語の集約として、
もう一度、高丘親王と旅をしようと思う。

さて、本は、
観音をめぐり、太平記をたどり、信長や、佐々木道誉を旅し、地獄絵を覗く。
天王親王の寺、文学者との語り、浄土の世界へ誘われ、
ついには古道を歩いて、高丘親王の寺高野山で終わるのだ。

何も考えずに、若かった時から、手当たり次第に手にしてきた本の点が
時を経て、次第に根を張って、あちこちとつながり、
それがつまりは私の色となっている。

白洲正子が太い幹となり、つながる様々な枝が煌めいてくる。
三島も、澁澤も谷崎も、江戸川乱歩、夢野久作、寺山修二、川端康成、
青山二郎、柳宗悦、シュールな人々。
ニヒルな笑いの中に、底なしの孤独と暮らす、その人の美の探究、
バカバカしいほどのストイックなしつこい真面目な生き様。
そこに、一筋縄ではいかない真実が見えてきそうだ。

このような人たちの残したものの、なんという力。
その力に触れることができる幸せ。

それこそが私の原動力となっているのだ。

神と、自然と、エロス、そこから、誰もが呪縛され、解放されたいのだ。
いや、呪縛されていることを承知して、癒されたいのだ。

ち、ち、ちょっと、重いお話、お付き合い感謝。


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4 コメント

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Unknown (遊行七恵)
2007-02-21 11:17:19
澁澤はわたしの誕生日の二日前に亡くなり、あの年わたしは随分泣きましたよ。トドメが石川淳の年末の死。
五十を迎えてから澁澤が日本回帰し始め、昭和初期の風俗も含んだ回想記『狐のだんぶくろ』あたりから本格的になったなーと思います。

高丘親王が上梓されてしばらくした頃、美輪明宏のコンサートのチラシに、なかにし礼が親王(澁澤)へのオマージュを書いていました。
今でも大事にしています。
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遊行 さま (あべまつ)
2007-02-21 13:24:52
遊行さまは、澁澤龍彦をライブ体験されたのですね。
それは、スゴイ経験をされたと思います。
私は既に妖怪の住む世界の親王となってからでした。
海外の文化にはまった人が日本に戻って、
深く歴史と神々と共になるのは、
日本の神様がこれと思う人を選んで、
たぶん琵琶湖あたりから引っ張るのでしょう。

生きる妖怪、美輪明宏は死んでいく気がしません。
不死の薬ででも飲んで、
「そして船は行く」になるのだろうと思っています。
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はじめまして (supika)
2007-02-21 23:24:01
偶然あべまつさんのブログを拝見して、澁澤さんの新しいご本を知り、さっそくアマゾンに注文したところです、一言お礼がいいたくて。
今ちょうど白洲正子さんの「西国巡礼」を読んでいました。白州さんと澁澤さんの関係は知らなくて、
しばらく澁澤さんから離れていましたので、とてもうれしいです。
私も美術館めぐり大好き、いつもブログ散歩して参考にさせてもらってます。
ありがとうございました。
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supika さま (あべまつ)
2007-02-22 22:27:55
はじめまして、supikaさま。
私の拙い本の感想で、お礼を言って頂けるなんて、恐縮です。コロナブックスですから、写真が多いので、
文章としてはもの足らないかも知れませんが、
澁澤氏の高貴な臭いにやられます。
まだまだ知らないことだらけで、恥ずかしいことばかりですが、恥をさらしても、楽しく生きる方法は結構沢山あることを今頃、知ったような気がしてます。

またお気軽にお立ち寄り下さいまし~。
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