あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

佐川美術館 楽吉左衛門館 

2008-02-24 22:49:21 | 日本美術
そもそも、あのごっつい茶碗で、
今の茶人達がお茶を点てるイメージができない。
だから、
私の中ではまだまだ遠い茶碗を作る、15代楽吉左衛門氏。
しかし、人柄はとてもお気に入りで、
あのストイックで、繊細で、しかしパッションが見え隠れしているところが
心をくすぐる。
細川の殿とは、違った意味での血統の良さ。
野性味もあるところが良い。

あんまり人を褒めない私がここまで書く。

その人が造った茶室がなんと、琵琶湖の辺、
それも佐川急便が作った美術館の一角に
3年を費やして、彼の我が儘とこだわりを全面的に引き受けた、
会社を褒めたい。
あまりにも経済性、合理性と離れているものつくりだったと思うから。

水辺と一体感のある畳と石。
壁はコンクリートの打ちっ放しで、
尚かつ木目を刻み、炭を配合したセメント。
茶室には宗旦の竹花入れに椿を活け、壁には水を打つ。
信楽の水指と、室町の利休好みの霰釜。
茶碗はもちろん楽氏の作。茶入れもそうだろう。
楽氏はようやく自分の茶碗にあった茶室ができた、
と言ったようだったが、
確かにあの茶碗と合う茶室はなかったのだろう。

遠景には水辺に植えられた葦、蘆の島。

まるで彼の宇宙観を体験するようだ。
陶酔、でもあるし、生き様でもあるし、
見てきた感じてきたものの集大成ともいえそう。

光と闇は一体。
今光が当たりすぎているから、
敢えて、闇、を作った。

そうも言っていた。
ほとほとストイックな佇まいにため息をもらした。
その闇の世界に下界の光が細い灯り取りから注がれる。
光をありがたく思うような設計だ。

琵琶湖。
日本文化の生まれたところ。育まれたところ。
護られてきたところ。

3年掛けて、
建築するプロジェクトに羨望の眼差し。
都心では考えられない非効率。

そこに楽氏当代が思う存分表現できた茶室を前に
いったい誰がこの茶室に集い、茶会を開き、
次への世代にどんな茶人が生まれていくのか、

その大きな責務をどうされるのか、
そちらの方が一層暗闇で、光は届くのか、
余計な心配事が頭をよぎった。

素晴らしい美術館のサイトはこちら。

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2 コメント

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選ばれた茶室 (チト)
2008-02-27 10:10:13
畠山記念館の対局にあると
あべまつさんがおっしゃったように
ほんとうに余程の人じゃないと
使いこなせないだろうなあと思いました。
「和楽」に、玉三郎をお客に招いて
という企画で紹介されていたのを
図書館でみつけましたが
ほんと、あそこに座ること自体、
選ばれた人じゃないとだめなんじゃないかって・・
でも・・すばらしいうつくしさですよね
チト さま (あべまつ)
2008-02-29 22:21:00
こんばんは。
今月の芸術新潮も、佐川美術館特集のようです。
極上の夢空間を作られたのですから、
選ばれた方々は蓮の台に乗った恍惚陶酔気分かも知れませんね。
分をわきまえることを思うと、遙か雲の上。
でも作ったんですよね~そう言う場所を。
ため息です。
私は路傍の石サイズで、充分だと思いながら・・・
物見遊山に行ってみたいです。

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