あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

名優たちの系譜ー幕末・明治の歌舞伎と現在 ・太田記念美術館

2009-09-12 23:04:21 | 日本美術
この日は、なんと初対面のogawamaさんと初デート。
オペラシティの鴻池朋子展のお誘いを受けたのだが、
その前に、太田の浮世絵に行こう~と
断れない状況を作ってしまった。
作戦に乗ってくれて、ありがとう。

芳年を見てない悔しさもあって、
名役者揃いの、豊国ご一派を見逃すものか、
そういう気合いを入れてきた。

太田の入り口前で待ち合わせたのだが、
遊行さんも、memeさんも、背が高い。
ogawamaさんも背が高いらしい。

ほどなく長い髪の毛をさらりと流しながらogawamaさんが現れた。
アタシは彼女たちの林の中で、埋まってしまうなぁ。
それでも、以前から知っているような気がするのは、
ブログのお陰、なのだと思った。

私の記事を読んでくれている人が一緒だということは、
思いの外気分が高揚してくるものだ。

畳の小上がりには5幅の肉筆。
国周の女姿が気に入った。
そこに国周のプロフィールが紹介されて、
大いに受けた。
なんと、転居60数回
(実は83回で、本当は百回を超えるというから、
 北斎の転居数を超えたことになる。)
女房40人も取り替え、落ち着かない生活だったようだ。
女房40人って一体???

1階のぐるりは三代豊国の一人舞台。
ワンマンショー
この派手やかな顔つきと、色使いと、構図の妙が大好きだ。
細々こだわりも手抜かりがない。
いちいち嬉しい。
北斎から、国芳の時代を経て幕末、明治にかけて、
色も一段と鮮やかになる。
派手さに勢いも溢れる。

彼らは芝居小屋と役者のすぐ近くでその様をつぶさに観察し、
それを仕事としていた自負と、気っぷの良さも伝わってくる。
粋だなぁ。鯔背だぜ。

2階に上がると
芝居小屋の変遷やら、
浮世絵自体の変遷も見られた。
写真の登場で浮世絵が写真のような画面に工夫したり、
舞台ではご贔屓さん達用の階段席が作られたり、
せり出していた舞台が引っ込んで、
横幅が長くなったり、
天井からつるされた役者達の紋の提灯とか、
枡席でぎゅうぎゅうになりながらも
その間を危なっかしく料理を運ぶ人がいたり、
そんな芝居小屋の雰囲気が実に面白い。

その側に
九代目団十郎、五代目菊五郎のなま写真の紹介があり、
本当に歌舞伎役者は何代も継承されてきたのだなぁと
実感する。

浮世絵は三代豊国から、二代目国定、国周らが、
国芳門下からは芳虎、芳幾などが登場。

この国周、なかなか面白い人と知ったら、
つい、ひいき目になってしまう。
「四代目中村芝翫のきぬ川谷蔵 三代目沢村田之助のかさね」
3枚つづりに大きく二人の上半身。
大胆で二人の目線が絡みつく、かっこいい作品。

「中村鷺助の中間かん次」
これは、中村勘太郎にそっくり。

「当狂言之内 九代目市川団十郎」
九代目を襲名したお祝いに団十郎の当り役を
一気に描いたもの。

「楽屋二階影評判 丈五郎 沢村訥子」
楽屋で役作りをしている様子を影も巧みに使って
描く。格子も効果抜群。

「尾上菊五郎の小間物屋才次郎」
小間物屋才次郎が大蛇に飲まれまいと、
血のり色どろどろの縦長のアクションシーン。
こわいこわい。

などなど、国周の傑作が印象的だった。
今回のちらし、お化け皿屋敷も国周。

九代目団十郎もついに命落ちるときがやってきた。
死絵になった団十郎。
涅槃行きは大概が左に頭なのがこちらは右頭、
へぇ~なんだろう?と思いつつ。

一世を風靡した、国周も命尽きる。

その後、芝居小屋の変遷も様々あったようだ。
久松座(後の明治座) VS 新富座の興味深い首引きの図が面白い。
両座の俳優たちが二人組みで首引きをする図。
まけちゃいられない、とかことばがきも愉快。

当時の演目も今残されていないような、時事流行のものとかも
あったようだ。
現代の話も勇敢に取り組んだのだ。

当代勘九郎のお爺さんも初めて英語で歌舞伎をやったとか、
そんな話を思い出した。
難しい話ではなく、いかにお客さんに喜んでもらえるか、
死活問題もあったし、
必死で明治を乗り越えてきたのだった。

こういった企画はなかなかお目にかかれるものではないから、
明治期の芝居状況など実に興味深かったし、
この企画用のリーフレットがコンパクトで、
値段もコンパクト。500円。
立派な図録は悩ましいが、こういうコンパクトサイズ、
とても良心的。うれしい。

ほかにもまだまだいい役者絵があった。
また見に行きたいくらい。

気をよくして、お腹もすいたので、
次のオペラシティに気合を入れなおして
元気に向かったのだった。

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4 コメント

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さすが! (ogawama)
2009-09-13 01:21:35
うっわー。
あべまつさんメモなんて取っていらっしゃらなかったのに、ここまで細かく。
芝居小屋の絵がこの展覧会の華々しい雰囲気を盛り上げているなあと思いました。
死絵は面白く見ましたが、頭の向きに気づきませんでした。情けないです~
返信する
ogawama さま (あべまつ)
2009-09-13 09:11:49
おはようございます。

さすが!とおっしゃって頂き、恐縮です。
便利なリーフレットが助けてくれました。
基本メモせずに、(メモするのが面倒~笑)
見ることに情熱注ぎます。ポンコツ脳みそに残ったものを大事にする、そういう作戦です。
別名、ボケ防止作戦です。へへ
返信する
Unknown (遊行七恵)
2009-09-13 13:23:42
こんにちは
レビューお待ちしてましたぁ~っ
この展覧会はかなり期待しているので、ワクワクが止まりません。
国周は京都に有名なコレクターがおられるので、これまでにもけっこう展覧会が開かれています。
思文閣や京都造形大などで開催されるたびにイソイソと・・・
わたしが歌舞伎に惹かれるモトはこれら芝居絵からでした。
(近くに逸翁美術館と演劇関係の池田文庫があるのが今日の基礎となったようです)
さー見に行くで~と気合がいよいよ高まってきました。
返信する
遊行 さま (あべまつ)
2009-09-13 22:28:58
こんばんは。

実に楽しい、粋な展覧会でした。
ogawamaさんとも言っていたのです、
早稲田演劇博物館に行かねばって。
芝居と絵が近くに感じられ、
エキサイティングでした。
三人吉三やら、更屋敷やら、団菊左の花が咲いてました。
国周のコレクター、良いところお持ちなんでしょうねぇ~
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