阿部ブログ

日々思うこと

米韓原子力協定の今後 ~韓国のウラン濃縮と乾式再処理の可否~

2013年05月01日 | 日記
米韓原子力協定が2014年3月に期限切れとなるが、もし協定が満了する事になると韓国の原子力産業への影響は甚大だ。何故ならば協定が効力を失うことになると、米国から提供されている原子力関連機材と技術、ウラン原料の供給が一切中止される事態となる。米国が提供したウランの濃縮やウランが核分裂した後の使用済み核燃料も、米国の資産なので、現在の原子力を維持しようとする為には、米国の承認が是が非でも必要なのだ。韓国は今後原子力発電所を9基増やして32基までにする計画なので、計画自体が頓挫するし、アラブ首長国連邦(UAE)から受注した原発プロジェクトも中断・キャンセルされる。

米韓原子力協力協定は、1972年11月24日に署名、翌年1973年3月19日に発効し同協定の有効期間は30年だったが、発効から1年弱の1974年5月15日に協定改定され、有効期間が41年に延長された。この協定には自動延長の条項がもともとなく来年3月までに新しい米韓原子力協定が締結されないと失効する事になる。前述の通り韓国としては、これを絶対に阻止せねばならないが、米国は、朝鮮半島の非核化と核不拡散防止を盾に、韓国が要求するウラン濃縮と使用済み燃料再処理を認めていない。

韓国は、ウラン濃縮と使用済み核燃料再処理に枷のある米韓原子力協定の2年間延長することで米国と合意しているが、あくまでも韓国はウラン濃縮と再処理を求める為、朴槿恵大統領が、5月に訪米してオバマ大統領と原子力協定改定問題について話をする。韓国が求めている再処理方式は、日本と違って乾式処理だ。パイロプロセッシング法とも言うが、ピューレックス法と違いシンプルで安全性が高いと私見だが思う。この点で韓国の判断は間違っていない。

因みに六ヶ所村の再処理工場は世界で唯一、硝酸ウランと硝酸プルトニウムの混合溶液を電磁波加熱してウランとプルトニウムの混合酸化物を作る方式を採用している。フランスのラアーグや英国ウィンズケールなどの再処理工場では、プルトニウム硝酸溶液に蓚酸を添加し、蓚酸プルトニウムの沈殿を生成し、これをろ過&乾燥してプルトニウム酸化物(PuO2)の微粉末をつくるが、硝酸プルトニウムさえあれば、後はこのプルトニウム硝酸に弗化水素を加えて三価フッ化プルトニウム(PuF3)を生成し、次に金属溶融還元を施すと核兵器用金属プルトニウムが得られる。

過去ブログ参照→核武装とトリウム溶融塩炉

通常の再処理プロセスで出来るプルトニウム化合物は全て4価であり、核兵器用のプルトニウムは3価でなくてはならないが、3価のプルトニウムは、六カ所村の湿式再処理でなくてはならない。韓国が検討している乾式再処理ではプルトニウムが4価であり核不拡散性が六カ所より高い。つまり六カ所の再処理プロセスに手を加える事により3価のプルトニウムを生産可能なので、この点で韓国の主張には一理ある。
しかし、米国はゴールドスタンダード(再処理と濃縮の禁止)を緩和する事はないと思う。

米韓原子力協定に韓国政府が必死に改定を求める背景には日本同様の使用済み核燃料の問題がある。ほぼ保管施設が満杯になりつつあり、ウラン濃縮委託費も年間800億円と言う巨額に達している。それと宿敵日本には1988年の日米原子力協定で再処理が認められ、ウラン濃縮施設も建設されている。日本との違いは何だ?と言う感情が・・・これは原子力にとどまらない。実は韓米ミサイル協定によって、射程距離800km以上、弾頭重量500kg以上のロケットとミサイルを製造する事が韓国は出来ない。

韓国でウラン濃縮と使用済み核燃料再処理が許可される事になると、韓国の核武装化が大きく前進する事となる。これは北朝鮮崩壊を見据えた朝鮮半島の非核化が、大きく後退する事になるし、日本において、強硬な核武装論が出てくることは容易に想像出来る。

六カ所の湿式再処理を放棄し、韓国が検討している乾式再処理方式を日本も導入するべき。ただし核武装する気がなければの話。
個人的には再処理自体に反対。使用済み燃料専門の専焼炉を建設・運用し、短寿命化と減量化した廃棄物の乾式保管が、現在では最善の方法と考えている。この点からも原発政策は根本から見直しが必要です。

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