阿部ブログ

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『スパイダー・ネットワーク ~金融史に残る詐欺事件 LIBORスキャンダルの全内幕~読了

2020年05月03日 | 雑感
『スパイダー・ネットワーク ~金融史に残る詐欺事件 LIBORスキャンダルの全内幕~



『スパイダー・ネットワーク』は、読みかけて放置していたが、昨日、何気なく手にとって読みだしたら止まらなくなった。一気に読み切った。
これは、東京を舞台にしたLIBORと呼ばれる金融指標を自分に有利な方向に操作するという詐欺的行為で取引利益を増やす、または損をしないようにした外資系金融機関の話。トム・ヘイズという英国人が主人公として登場するが、金融史に残る詐欺事件の割には、有罪で収監されたのは、ヘイズだけ。他は、逃げおおせた。著者のディビッド・エンリッチは、14年の刑期に服しているヘイズから直接情報を得て、本書を書き上げた。

LIBOR(ライボー)は、London Interbank Offered Rateで「ロンドン銀行間取引金利」で、ロンドンとあるからローカルな金融指標かと思いきや、これは、世界の金融取引の際に参照され契約に盛り込まれるメジャーなもので、既に400兆ドルをこえる取引で使われている指標。日本でも、LIBORを参照した融資契約、デリバティブ、債券取引などの想定元本が6,500兆円に上ることが、金融庁と日本銀行の調査で判明している。ソフトバンクは、2020年2月に5,000億円の資金調達を行ったが、契約で参照指標としたのはLIBORであった。改竄されており2021年にはLIBORは消滅することが明らかなのにだ。これは、仕方がないのだ。LIBORに代わる金融指標がないから。
本書を読むとLIBORは、世界の金融機関が総出で作為した金融指標であることが、透けて見える。同書384ページには・・・
「それはUBSの共用コンピュータのドライブに保存されていたもので、多くのマネージャーがアクセスできた。ヘイズは見たこともなかったが、中身を確認して、すぐにそれがLIBORデータ提出担当への実質的な指示マニュアルだということがわかった。ユーロとドルに連動した金利デリバティブを専門とするトレーダーが、UBSのLIBORテータ提出を担当するということが書いてあった。つまり彼らは、ヘイズがダリンに頼んでいたように社内の別の部門の誰かに仲介を頼まなくても、自分で提出データをいじることができた。しかも、もっと驚いたのは、LIBORを設定する際は自身のトレーディング・ポジションを考慮することと明記されている点だった。
度を越しているとしか言いようがなかった。「実に愉快だ」ヘイズは言ったが、すぐに笑えなくなった。「ねえ、このせいで、ぼくはいまここにいる。この銀行のせいで問題に巻き込まれ、痛めつけられている。ところが、ここにはLIBORの数字についてあからさまな指示をした公式の文書があるんだ」ならやっぱり、なんでみんながやってたことで自分だけが捕まらなくちゃいけないんだ?」

そう、LIBORは意図的、しかも関係者みんなで操作していた。これはUBSだけはく、LIBORに関係する銀行全てがグルでやっていた。彼らは、これで儲かり、ボーナスが増え、昇進するなら、何でもやる。LIBORは2021年に消滅する。
因みにLIBORの東京市場版があるTIBORだ。勿論、日本の銀行が操作してる金融指標だ。