阿部ブログ

日々思うこと

イラク北部の動向~ISの退潮、イタリア軍派兵、トルコ軍撤収、クルドへの軍事援助~

2015年12月28日 | 雑感
イラク北部の動きが激しくなってきた。
ラマディをイラク軍がほぼ制圧。イスラム共和国軍の残兵との銃撃戦もあるようだが、完全制圧まで時間はかからないだろう。有志連合軍の空爆は、次の目標であるモスルに指向されている。
モスルの郊外には、イラク第二位のハディーサ・ダム(سد حديثة)がある。これが破壊されると地域の治安維持と軍事作戦に多大な支障がある。まあ、当然だ。
このダム防衛の為に、イタリアが派兵を決定した。イタリア陸軍主力1個大隊(450名)が派遣される。何故、イタリア軍なのか? ハディーサ・ダムを施工したのは、イタリアのトレビ社(Trevi S.p.A.)で、20億ドルの費用をかけてこのダムを修理・補修する。これをイタリア軍が警備・防衛の任務に就くのだ。トレビ社は、ミラノ株式市場に上場するトレビフィン(Trevi Finanziaria Industriale S.p.A.)の中核企業である。

アメリカは、イスラム共和国のイラク撤退を見据えて既に動き出している。
トルコに対しては、イラク領 Bashiqa に展開しているトルコ陸軍を撤収させるようイラクを通じて国連安保理に提示し、トルコはこれを受諾し部隊を引くこととなる。
アメリカは、イラクとシリア国境地帯でイスラム共和国の掃討作戦に従事している。今までの9000回を超える空爆で、イスラム共和国所属員数千名を殺害し、支配地域の40%を回復させている。特にイラクとシリアにおける石油資源の90%を破壊しており、重要な収入源を喪失しつつある。トルコは彼らから石油を買っているが、これもできなくなっている。
有志連合は、モスルに目標を定め、同市近郊のカラーマ工業地帯を空爆し、イスラム共和国の拠点を破壊。この拠点は、武器や弾薬などを集積する補給処であったが、今は完全に破壊されている。彼らには痛打となった。

また、カーター国防長官は、イラク北部視察に際して、当地クルド自治政府のマスード・バルザニ(Masoud Barzani)と会談し、クルド武装組織ペシュメルガ(peshmerga)2個旅団への武器供与で合意に達した。ペシュメルガ部隊は、今後モスル奪還で、有志連合と連携して侵攻作戦に従事する事になる。
クルドは、民族悲願の実質的な独立に向けて闘争を開始する。イスラム共和国が崩壊した後、シリア領内で民族自治領域を獲得する可能性が高い。これはトルコとの軍事衝突を誘発する。

トルコは、ロシアとの関係悪化でウクライナに接近しているが、これは結局クルドとロシアの提携となり、トルコには逆に効果する。ロシアは、アサド政権を維持しつつ、反体制派をクルドを中心に再編する事もありうるだろう。
ロシアは、対トルコで「アルメニア・カード」を切っている。クルドとアルメニアでトルコは大いに悩まされるだろう。
既に12月23日、イスタンブールのサビハ・ギョクチェン空港駐機場で爆発事件が起きている。これはクルドPKKの武装組織の一派であるTAKが声明を発表している。