阿部ブログ

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イスラエルの優れもの近接防空システム“アイアン・ドーム”

2013年07月09日 | 雑感
アイアン・ドーム(פַּת בַּרְזֶל)は、Counter-RAMに分類される防空システムで、Rafael Advanced Defense Systems Ltd.社製。
このアイアン・ドームは、2011年年3月末に、イスラエル空軍の第947大隊の2個高射中隊を、それぞれベエルシェバとアシュケロンに展開させたのが初めての実戦配備で、初戦果は、4月7日ガザ地区から発射されたBM-21ロケット弾の撃破。迎撃したのはアシュケロンに展開していた中隊。

アイアン・ドームは、着弾した場合の人的・物的被害の有無など脅威分析を行って迎撃する。ただの野原に着弾すると分析されると、アイアン・ドームはそのまま着弾させるのだ。アイアン・ドームのインターセプター(迎撃体)は“タミル(Tarmis)”と命名されており、アイアン・ドーム1個中隊は、それぞれ20発のTarmisを備えた発射機3基と、対砲・対迫レーダーELM-2084(フェーズドアレイ、Sバンド)、射撃管制ユニットで構成される。アイアン・ドーム発射機は1基当たり約5000万ドルと高額で、迎撃体タミルも1発5万ドル以上するので、導入から運用に掛かる費用は、国防費を圧迫する事になる。

しかし激しさを増すロケット攻撃に対し、イスラエル政府は、厳しい財政状況にも関わらず米国の資金援助の確約を待たずに、4月10日、更に4個高射中隊の追加配備を決定。早くも8月31日には中隊の編成を完了し、直ちにアシュドッドに配備され実戦配備に就いた。2012年3月には第4番目のアイアン・ドーム高射中隊がグッシュ・ダンに展開。最後の中隊は、11月17日に実戦配備に就いている。現在、5個中隊で任務についているが、第6番目の中隊は、この7月中に編成を完了し、実戦配備される予定。これらアイアン・ドームの配備は、米国のFY2012予算から7000万ドルの資金援助を得て実現したもので、イスラエルの財政上、3個中隊以外の予算措置が行われず、宙ぶらりんの状態だったが、米国が支援の手を差し伸べた。

因みに1番目~第4番目のアイアン・ドームは、85%のキルレシオを記録した初期型モデルで、第5、第6番目の中隊には、より覆域拡大版の改良モデルのアイアン・ドームが配備されている。この措置は、中短弾道ミサイル防衛システム「デビッド・スリング」の調達が遅れている事によるもの。

イスラエルは、2014年7月までに、更に2個中隊の配備を目指しているが、これはシリア情勢の緊迫化も背景にある。既に6月28日、北部の港町ハイファ近郊にアイアンドーム1個中隊を配備した。イスラエル全土を効果的に防衛する為には、最低14個中隊が必要と言われ、保守・運用を勘案すると20個中隊は欲しいようだが、前述の通り財政状況がそれを許さない。例えば仮に14個中隊体制を早期に実現するとした場合、複数年契約で6億8000万ドルの費用が掛かると試算されている。今のイスラエル政府にこれを負担する能力はない。必然的に米国の支援に期待するのだが、今のところ米国から援助は順調のようだ。
6月6日には、イスラエルの防衛システム開発の為の資金援助額が、当初の9600万ドルから3倍近い2億8400万ドルに増額する事が米下院軍事委員会で承認されている。この内アイアンドーム関連は1500万ドル相当が当てられるが、今までの米国からの支援総額はアイアン・ドームだけで2億5000万ドルに達している。いよいよ来年から遅れていたデビッド・スリングの配備も始まるので、イスラエルの防空体制の強固さは、今や世界一だろう。