◎名古屋から先は、蒸気機関車C62が牽引
映画『つばめを動かす人たち』(日映科学製作所、一九五四)をビデオで観て、気づいた点などについて述べている。本日は、その三回目。
浜松駅を出てすぐ、つばめガールによる車内放送。「皆さまにお尋ねいたします。カマタ・カズト様、カマタ・カズト様に電報でございます。乗務員までお知らせくださいませ」。そう、この時代は、列車の乗客に向けて、電報を打つことができたのである。
列車は、浜名湖の上にかかる鉄橋を渡る。さらに行くと、上りの「つばめ」が近づいてきて、すれ違う。カメラは、列車最後尾にある展望車から、展望台に立つ男女の子どもと、つばめガール一名の姿を映している。三人とも、去ってゆく上り列車に向かって手を振っている。いちばん激しく振っているのは、つばめガールである。
ビデオのパッケージにある説明によれば、すれ違った地点は「新所原付近」である。浜松駅の六つ先に新所原(しんじょはら)という駅があるが、そのあたりですれ違ったということだろう。
やがて列車は、名古屋駅のホームにはいる。ホームの時計は、午後一時五九分を指している。この駅では、機関車が蒸気機関車に交換され、それに伴って、乗務員も交替する。
画面は、木曽川駅の駅舎内に変わる。木曽川駅は、岐阜駅のひとつ手前の駅である。駅長らしい人物が、鉄道電話で運転指令所に指令を仰いでいる。「975列車」が、五分遅れて同駅に到着したが、特急「つばめ」との関係をどうするか、という内容である。これを受けた「列車指令」は、即決した上で、指令を発する。残念ながら、指令の内容が、よく理解できないのだが、「975列車」を岐阜駅まで運行し、同駅で「つばめ」の後発とせよ、と言っているらしい。
当時、名古屋駅・大阪駅間には、まだ電化されていない区間があった。そこで、「つばめ」の機関車は、この名古屋駅で、蒸気機関車に交換される。「C62 18」というプレートのついた蒸気機関車がやってきて、列車に連結される。機関車の正面には、「つばめ」のヘッドマークがあるが、EF58に付いていたものとデザインが違う。機関車側面にもツバメの図案。連結後、ただちに出発。ホームでは、風格のある駅長が、敬礼をしながら見送っている。
蒸気機関車の牽引する「つばめ」は、大阪に向かって爆走。カメラは、何度か動輪の激しい動きを映し出す。
トンネルが近づくと、機関士はゴーグルを取り出して装着。トンネル内にはいったあとは、上着の袖で、鼻と口を覆っている。
やがて米原駅着。ここでまた、乗務員の交替がある。【以下、次回】