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礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

先生は温顔に微笑をたたえられながら……

2022-07-05 04:32:37 | コラムと名言

◎先生は温顔に微笑をたたえられながら……

『国家学会雑誌』第六二巻第七号(一九四八年七月)から、田中二郎の「美濃部先生の行政争訟論」を紹介している。本日は、その四回目(最後)。都合により、「三」、「四」を割愛し、「五」以下を紹介する。

     【略】

     【略】

     
 最後に、行政争訟手続の特殊性の問題をとりあげなければならぬ。そこでは、訴願と訴訟との関係、行政事件訴訟の管轄・当事者・その他の訴訟手続についての特色、行政事件訴訟についての裁判所の審理判決の特色等について述べるべき問題は甚だ多い。併し、これらの点については、最近の「行政事件訴訟特例法」によつてはじめて明らかにされた点が多く、美濃部先生は、これらの問題については多くは触れてはいない。制度が新らしく設定された今日、これは新らしく検討されるべき問題である。であるから、これは、別稿において少しく詳細に論ずることとしたい(一)。
(一)拙稿、行政争訟の法理、法学協会雑誌六巻一号以下。

     
 行政争訟に関する先生の見解を紹介することを目的として始めた本稿が、却つて先生の見解に対して屡々反対の意見を述べることになつてしまつた。先生の御指導を受けて行政法の研究をはじめることになつて間もなくの頃、先生を中心とする判例研究会で、公物の時効取得の問題について、先生とは反対の意見を主張して譲らなかつたことがあつた。先生は温顔に微笑をたたえられながら、先生は先生の主張を貫かれつつも、私の意見を一つの意見として発表することを認めて下さつた。私が初めて書いた「判例批評」に対して、先生は、「附記」として、先生の反対の意見を書き添えられた。ここに述べたいろいろの反対意見に対しても、先生は、例の寛大さを以て、温顔に微笑をたたえて、一つの意見としてお聞きとり下さることと思う。併し、今や、もはや「附記」として、先生の反駁と叱正とを受けるよすがもない。

 田中二郎(たなか・じろう、一九〇五~一九八五)は、行政法学者、東京大学名誉教授。最高裁判所判事(一九六四~一九七三)。

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