◎「本当のことを言はねば打つぞ」(『新辞林』軍用会話より)
昨日の続きである。研文書院出版部編・石川雅山書『興亜国語 新辞林』(研文書院、一九四一)の第三版(一九四三)から、付録「日華実用会話」の第三編「軍用会話」を紹介している。
この第三編「軍用会話」は、歩哨、訊問、巡察、行軍、宿営、徴発及び傭役、工作、宣撫の八項目に分かれている。昨日は、「歩哨」の項を紹介したが、本日は、「訊問」から「巡察」までを紹介する。
訊 問(訊問)
お前の姓は何といふか 你姓甚麼
私の姓は陳です 我姓陳
名は何といふか 名字叫甚麼
名は永祥と云ひます 我名字永祥
お前は何者だ
お前は何をする者だ 你是幹甚麼的
私は百姓です 我是種地的
私は商人です 我是做買売的
以下、日本語の部分のみ紹介する。また、このあとは、ほぼ一連の応答になっているので、改行せずに紹介してゆく。
何歳か/三十五歳です/お前は何処の者か/私はこの土地の者です/原籍は何処か/今は何処に住んでゐるか/一里程先の××村に住んでゐます/何故お前はこの界隈をうろついていたか/私はこの先の××村に用があるのです/どんな用があるのだ/金を貸してあるので取りに行くのです/嘘を言ふな/お前は字を知つてゐるか/少しは知つてゐます/では、自分の名前を書いてみろ/お前の言葉は早口で聞き取りにくい/少しゆつくり言へ/お前の身体を検べる/着物を脱げ/この怪しい字を書いてある紙は暗号手紙ではないか/いゝえ、それはお守り札です/よろしい、もう帰れ/貴様は怪しいから小隊本部まで拘引する
巡 察(巡察)
此処は何といふ村か/此処は馬家溝です/戸数はどの位か/三十軒ばかりです/この村の人口はどれ程か/約百五十人ゐます/村役場は何処か/学校があるか/字を知つてゐる者を呼べ/俺が尋ねるから、お前正実に答を書け/正直に答へたら褒美金をやる/村長の姓は何といふのか/お前村長を呼んでこい/俺を村長の処へ案内しろ/今し方、この村で発砲した者がゐる/誰が発砲したか/私は知りません/貴様嘘を言ふな、本当のことを言へ/私は決して嘘は言ひません/お前本当のことを言はねば打つぞ/誰が汽車に石を投げたのか/お前が投げたんだらう/お前ねなければ誰か/お前はどうして私を見てすぐ逃げたのか/お前はスパイだらう/きつと便衣隊だらう/俺の見るところでは、お前は良くない奴だ/お前、私について一緒に来い/もし逃げたら、私はお前を打ち殺すぞ
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