◎「良民証を見せろ」(『新辞林』軍用会話より)
昨日の続きである。研文書院出版部編・石川雅山書『興亜国語 新辞林』(研文書院、一九四一)の第三版(一九四三)を紹介している。
同書には、付録として「日華実用会話」というものが付いている。これは、四一ページ分あって、けっこう充実している。最初に、「支那語発音および記号の解説」というものがあり、以下、第一編「単語編」、第二編「一般会話」、第三編「軍用会話」という構成になっている。
特に「軍用会話」というのが、いかにもその時代にふさわしい。本日は、これを紹介してみたい。
第三編「軍用会話」は、歩哨、訊問、巡察、行軍、宿営、徴発及び傭役、工作、宣撫の八項目に分かれている。少し、最初のほうを紹介してみよう(四声の記号と発音は省略した)。
歩 哨(歩哨)
止まれ 住住別走
オイ、一寸待て 唉・等一会児
両手を上げろ 両手挙起来
上げぬと射つぞ 不挙手要打了
お前は何者だ 你是幹甚麼的
こんな感じである。以下、日本語の部分のみ紹介する。
立入禁止の布告文を読まなかつたのか
あつちへ行け
こちらに来い
此処は危険な場所だぞ
此処はお前達が通る処ではない
荷物を持つて通つてはならぬ
車を曳いて通つてはならぬ
今来た方へ戻れ
良民証を見せろ
良民証がなければ此処は通せない【「歩哨」の項はここまで】