ON  MY  WAY

60代になっても、迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされながら、生きている日々を綴ります。

卒業証書に名前を書く

2011-03-21 22:15:34 | 「育」業
墨汁を皿に落とす。
落ちた液体は、黒くこんもりと盛り上がって見える。
小筆を指でつぶす。
約三分の一。
穂先をやわらかくした小筆を墨汁につける。
墨汁を吸い込んだ小筆を、墨汁がついていない皿の部分で穂先を整える。
さあ、書くぞ。
集中だ。

何を書く?
名前、である。
何に書く?
卒業証書に、である。


今年も、卒業式が間近に迫った。
そのメインは、卒業証書授与である。
一人一人の子どもが、担任に名前を呼ばれる。
短く、凛とした返事が館内に響く。
卒業証書を渡す私。
もう一度、名前を呼んで渡すことにしている。

その一人一人の名前を、卒業証書に書いた。
一人一人の顔を思い浮かべながら、一人一人の思い出を探しながら、気持ちを入れて名前を書いた。
書きながら、名前に込められた願いが伝わってくる。
一人一人の名前が、いとおしい。
BEAUTIFUL NAME!

数十の名前を一気に書く。
しかし、時折うまく書けないことが悔しくなる。
下手だ…。
申し訳ない。
もっとうまく書けるとよいのに、と思う。
うまく書けないからと、一生残るからと、金を払ってでも字のうまい人に書いてもらう人もいる。
それは、それで誠意があると思う。
でも、私は、最後まで自分で責任を取りたいと思う。
せっかくの卒業証書の名前、うまく書けなくて、
ごめんなさい。

思いとしては、この学校での生活が、子どもたち一人一人によいものであってほしかった。
ひょっとすると、そう感じなかった子もいるかもしれない。
40数年前の私のように。
学校の職員としては、それなりに一生懸命やったつもりではいるのだけれど…。
だから、そのことについても、思う。
一緒に過ごした学校の先生の一人として、
よい学校生活を送らせてあげられなくて、
ごめんなさい。

そんな様々な思いを込めて、心を込めて、卒業証書に名前を書く。
精一杯書いた。
…だけど、やっぱり、うまくないなあ…。
ごめんなさい…。
コメント
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