2011/8/13
二日目。
この日はツアーで申し込んだため、お迎えのバスが来るのを待つだけだ。
朝食を済ませ、バスに揺られる。
あまりツアーが好きではない。
理由はただ一つ。当然だが自由がきかないからだ。
冬に行ったイギリスでは完全に自由だったため、お土産を買う時間をどれだけとろうが、
行きたいところに勝手に行こうが、自由だった。
極めて気楽。行きたくない場所に連れまわされることもないし、
何より、見知らぬ人たちと一緒に回るのが好きではない。人見知りだし。
しかし今回は中国だ。
以前は英語だったため、個人でも勝手気ままに過ごせたが、
中国語ということで、言語の壁が非常に厚い。
こちらから意志を伝えることは全くできないし、
当然、向こうが何を言っているのかも全くわからない。
そして今回最も行きたかった、万里の長城は交通の便が悪く、
個人的に行くとすると非常に難しそうだった。
失敗して、行けないなんてことになりたくなかったので今回はツアーを申し込んだのだ。
総勢20人くらいだったような気がする。
と言ってもすでにどんなグループがいたのか覚えていないほど、印象が薄い。
まずはじめに訪れたのが、天安門広場。
うん、ここには昨日来たな…
再び再開した毛沢東元国家主席のポートレートの下を潜り、世界遺産・故宮に乗り込む。
さすが中華人民共和国… 人が多過ぎである…
入口はあまりの人の多さに完全に塞がっており、通勤ラッシュの電車のように押し込まれていった。
そしてついにご対面。
かつて紫禁城と言われたあの建物。
太和殿を見たとき、既視感を強く覚えた。
確か、DOAとかいうかなりふざけた映画のロケ地として使われていたと思う。
太和殿の外周には色々な形をした彫刻が施されていた。外朝を一通り回っていよいよ内廷へと足を進める。
ガイドブックでも書かれていた乾清門を見学。
ツアーだったため、説明つきである。
色々と話を伺うことができたが、この故宮にいる時間がかなり長かった。
ツアーだからしょうがない。歩きっぱなしで少々疲れる。
周りの人たちは明らかに飽きていた。
暫し内廷を見学し紫禁城を跡にする。
その後はすぐ近くの景山公園へ。ここでは景山という山があり、そこを登り見下ろせば故宮が一望できる絶景スポットなのである。
『地球の歩き方』によると、“見下ろす故宮はまさに絶景で、大小の殿閣上の瑠璃瓦が燦然と輝き、遠く北京市内の四方を見渡すことができる”とある。なんとも期待を煽る表現が記されていた。
山登りは全く大変ではなかった。すぐに頂上に到着した。
そこから先ほどいた故宮を一望する。
その大きさに驚いた。実際に回っていたときよりも果てしなく広大なものだったのだということが分かる。
天気はあいにくの曇り空だったが、それでも只ならぬ雰囲気が伝わってきた。
その後はバスに暫し揺られて昼食。中国に行ったのなら是非ともやってみたかった飲茶を体験する。そしてこれも中国に行ったのならぜひやってみたかった。回すテーブル。料理が乗ったターンテーブルを回してみたかったのだ。
しかし、今回はツアー。周りには初対面の全く親しくない人ばかり。
気を遣いながらテーブルを回す。早々に食事を切り上げ、お土産を購入した。
そして、今回の旅のメインイベントである。
今回の旅が決定するずっと前から言っていた。
一生に一回は絶対に言ってみたいとずっと思っていた。
そしてその地を自分の足で歩いてみたかった。
誰もが知っている世界的に有名な歴史的建造物。
いよいよ万里の長城へと向かう時が来た。
今回の旅は万里の長城にだけいければよしと思っていたくらいだ。
興奮はマックスに。本当にかの有名な万里の長城を踏みしめることができるのだ。
長城に向かう途中、バスの中でツアーの人から残念なお知らせが入る。
“残念ながら今回、万里の長城は立ち入り禁止です…”
なんてことを言われた日には本気で憤慨していたであろうが、
“一番有名な八達嶺長城は、道路が込みすぎていて、人も多すぎ”とのこと。
“そこで提案なのですが、比較的空いている¥て、ここから近い司馬台長城(確か。忘れた)に言って、ゆっくり回らないか”とのこと。
俺は大賛成であった。最も有名な場所ではなくとも、万里の長城の一部であることには変わりはない。そして到着に時間がかかり、実際に歩く時間が削られたり、人がごった返していてうんざりしたりするほうが、よっぽどいやだった。
心の中で、うん、そうしよう、そうしようと訴えていた。
すると周りの方々もそっちのほうがいいという意見で、バスの中はそのコースで回ろうという阿吽の呼吸。
ガイドの人は、一人一人の署名を求めてきた。確かに後でコースを変えたことをとやかく言われたら大変だもんな。事実、善意とは言え予定されているコースを変更しているのだから、クレームつけてくるやつがいてもおかしくない。ああいうガイドの人も大変だな…
そんなことを考えているうちに、ついに到着した。
山々をうねり、永遠に続いていそうな長城が目の前に伸びている。
この足で踏みしめることを何度も憧れていた、長城を目の前にして半笑いになる。
ツアーのため、自由に歩きまわれる時間には限りがある。確か1時間くらいだった気がする。っていういことは、30分で出来る限り上ってみよう。
そして20分で降りてきて、残りの10分で麓にあったお土産やで記念品購入+トイレを済ます、という完璧な計画を立て、いざ登城!
万里の長城を踏みしめた最初の一歩は感慨深いものがあった。
おぉ…俺本当に万里の長城を歩いてるよ…みたいな。
最初のうちは万里の長城を歩いているという非現実的な事実を楽しんでいたため脳内麻薬が溢れていたが、すぐに汗まみれになる。
途中ずっと階段になっているのだが、その一段一段の高さが半端じゃない。
大またでぎりぎり上れるレベル。大きいものだと一段が俺の腰くらいまであった。
そんな階段をずっと歩き続けているのだ。疲れないわけがない。
汗はだくだくと垂れ、のどがカラカラに。太ももはぱんぱん。
けど30分しか時間がないということで、できるだけ進もう進もうと体力を削りながら進んでいく。
かなりのハイペースで上っていく。面白いことに最初のうち、麓辺りは人が大勢いたのに上るにつれてどんどん人が少なくなっていく。
多分途中で引き返すのだろう。
ここらが潮時かなというところまで上ると、もう殆ど人が通らなかった。
写真を撮ったり、マシュー・ハーディングの真似をして踊ってみた。
そして下山。悠久の歴史を噛み締める時間はあっと言う間に過ぎてしまった。
麓に到着すると、汗まみれ+のどカラカラ+太ももぱんぱんの体に売店のコーラが光って見えた。
ただのコーラがこんなにうまく感じるとは。トイレも済まし、あとはお土産だけだ。
ダサくてどシンプルな“万里の長城!”みたいなキーホルダーなんかが欲しかったのだが、入り口に自分の名前と、登城年月日を刻印できるキーホルダーがあった。
ミーハー丸出しで購入する。2011年8月13日嶺登日期。
あとはポストカード。海外に行ったときには必ず現地から出している。
よし、これで思い残すことはない。完璧だ。
案の定、全員集まっていなく、待ってる時間余裕の一服。
こういううまいタバコがあるからやめられない。
今回の旅で一番楽しみにしていたイベントが終了し、少々燃え尽きムードに。
そんなムードにぴったりなちょっと気休め的企画が次に用意されていた。
本場の中国茶を本場の煎れ方で飲む。
これも実際に中国に行ってみない事には出来ないことだ。キャラではないが、美味しく本場の中国茶を頂くとしよう。中国茶なんてバーミヤンでしか飲んだことないけどな。
多少癖が強いものもあったが、どれも美味しかった。
舌が肥えてない俺は何でも美味しく感じてしまう。
というか、あの雰囲気、入れ方をされたら美味しく感じる。何気にいい経験かも。
オリンピックの鳥の巣スタジアムを車窓から眺めてツアー終了。
旅の出発前にここだけは行こうと決めていた万里の長城に行くことができた。
昨日は絶対に食べたいと思っていた本場の中華料理を食べることができた。
旅の目的を二つともクリアし、次にもしできたら是非ともやってみたい3つ目の目的が結構現実味を帯びてきた。
今回の旅では時間がなく、2日目のツアーがメインとなるため、今回は見送りかなと思っていたが、もしかしたらこのまま行けるんじゃないか?という雰囲気になる。
その目的とは…
中国雑技団をこの目でしかと見ることである。
噂では何度も聞くし、テレビなどで見る彼らはもはや人間ではない。
人間離れし過ぎていて、現実味がないくらいとんでもない人たちばかりである。
これは別に中国に興味が全くない人でも、純粋に見てみたくないですか?
期待を裏切らないのは分かっていることだし。
ということで、本日のガイドさんにこれから中国雑技を見ることは出来ないか?と尋ねたところなんとOKとのこと。
しかもバスの降りるところを変更し、天地劇場という劇場まで連れて行ってくれた。
更にガイドの人がそのままチケットを購入してくれた。開園10分前くらいの滑り込み。
更にその席はど真ん中の特等席であった。
こんなにスムーズにことは進んでいいのかと思ったが、念願の中国雑技団を生で見ることが出来た。
やっぱり人間じゃない方々が多数登場した。
流石4000年の歴史は半端じゃないぜ。
更に更に劇が終わった時間にはガイドの人が迎えに来てくれ、タクシーを拾ってくれた。
お礼を言って、明日の打ち合わせをして一旦ホテルに帰還。
中国二度目のディナー。
今回は勇気を出してずっと気になっていた「李先生」に入ることを決める。
言葉も通じないのでどきどきだったが英語で何とかなるだろ…
メニューを見てみるとラーメンがメインのようだ。
ラーメンに何点かおつまみがついているセットに決める。
そしてせっかくなのでビールが飲みたかったが、どれがビールなのか分からない。
写真だけを頼りに、おそらくこれがビールだろうと思われる飲み物を注文してみる。
運ばれてきたのは正真正銘のビールだったので一安心。
ラーメンもパクチーが入っていてかなり癖が強い味だったが、俺個人的にはとても美味しかった。セットでついていたおつまみもビールを進めてくれた。
李先生、なかなかやるじゃないか。普通に満足だった。
ちょっととんでもないものを期待していた自分もいたが。
その後はちょっと夜の北京の街をふらついて再びホテルに戻った。
この日はやりたかったことを全てできて、中国を思う存分楽しむことができた。
いよいよ明日は帰国日。
部屋に無残に散らばっている荷物をバックパックに詰め込み、眠りについた。