『円安の日本とアジア経済への影響』
4/11 NHKラジオ 関 志雄さんのお話の要約です。
昨年11月の安倍政権誕生をきっかけに、円安基調に転じている。
安倍首相はかねてから、
大胆な金融緩和、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という
3本の矢からなるアベノミクスと呼ばれる経済政策を提唱してきた。
中でも金融緩和への期待が、円安につながっていると思われる
実際、昨年11月中旬以降の約5カ月の間に、円はドルに対して20 %ほど減価してきた。
これまで円高の進行は、
日本の価格競争力の低下と、生産の海外への移転による産業の空洞化、の原因とされてきた。
これに対して円安になると、
海外での生産と比べて、日本での生産コストが相対的に安くなり、
国際市場において日本製品の価格競争力が回復し、
国内の産業空洞化の圧力も緩和されることが期待される。
もちろん円安に伴って、輸入品の価格が高くなるなどマイナスの影響もある。
輸入への依存度への高い石油製品や食料品などの国内価格が上昇している。
価格の上昇は、家計にとっては実質収入の低下、企業にとっては生産コストの上昇を意味する。
このように円安は、日本経済にプラスとマイナスの影響を同時に与えるが、
総じてプラスの影響の方が大きいと思われる。
実際、円安をてこに、企業の収益が改善し景気が回復に向かう、という期待が高まることを背景に
日経平均でみた東京市場の株価は、昨年11月中旬以来約 50%ほど高騰している。
さて、標題に挙げたアジア経済への影響について述べる。
アジア各国にとって日本は
輸出市場における競争の相手であると同時に、重要な輸入先でもある。
また円がドルに対して安くなることは
ドルとの連動性が強いアジア通貨に対しても安くなることを意味している。
円安になると
アジア各国では、自国製品の日本製品に対する価格競争力が低下する一方で
日本からの輸入価格が低下するというメリットもある。
アジア各国の貿易構造が多様であることを反映して、
輸入面と輸出面を合わせた影響は国によって大きく異なっている。
1.まず輸出の面において、
円安により輸出競争力が大幅に低下する国として
日本と同じハイテク製品を中心とする輸出構造を持つ韓国をはじめとする
アジアの新興工業国が挙げられる。
その影響は日本向けの輸出にとどまらず、第3国市場にも及ぶ。
例えば韓国は、
主力輸出製品である自動車をほとんど日本には輸出していないが、
円安になると、自国製品は日本製品に代替されてしまい、欧米など他の市場への輸出が減少する。
これに対して中国や ASEAN諸国は、
輸出構造が日本と大きく異なっていることを反映して日本との競合度が低い。
このため、円安が進んだとしても、
これらの国が得意とする労働集約型製品の輸出が、日本の製品によって代替されることはない。
2.一方輸入の面では、
アジアの国々は、対日輸入に占める部品や機械といった生産材の割合が高く、
円安に伴う日本からの輸入価格の低下は、生産コストの低下を意味し、
生産を拡大させる要因にもなる。
こうした円安メリットは
日本への輸入依存度が高く日本と補完関係にある国ほど大きいと考えられる。
つまり、輸出面と輸入面の二つの波及経路を合わせて考えると、
円安の影響は、
その国が日本と補完関係にあるか、それとも競合関係にあるかによって明暗が分かれる。
日本と補完関係にあり、
日本からの輸入価格の低下という、円安メリットを享受できる国として、中国が挙げられる。
その一方で、日本と競合関係にあり、
輸出競争力の低下という、円安デメリットを大きく被る国として、韓国が挙げられる。
ところで、中国を含めてアジア各国の報道では、
もっぱら円安による自国経済への悪影響が強調され、
『円安は日本政府が取った一種の近隣窮乏化政策ではないか』という批判がある。
これに対して、しかし投資家の動きは、そういう見方ではなく、関さんの指摘と合致している。
実際、昨年11月中旬以来、
ニューヨークをはじめ、世界主要市場の株価が上昇基調に転じている中で
円安の恩恵を受けると思われる東京市場は最も大きな上昇を示しているが
これに対して円安によって大きな打撃を受けると思われる韓国では、逆に株価は伸び悩んでいる。
一方、中国の上海市場では、株価の上昇幅は東京には及ばないものの、ソウルを上回っており、
円安は中国企業の株安につながっていないようである。
★★★ お読み頂きましてありがとうございます ★★★
## 私(いまさきもり)への応援拍手とメッセージはこちらからお願いします ##
## この文章は私の覚えとして放送を要約したものです ##
今週金曜午後から、NHKホームページで放送が聴けます。
右上のブックマークから入って下さい.