『異次元緩和の行方』 ~ 4/29 NHKラジオ 山田 久さんのお話の要約です。
そもそも、金融政策の効果を発揮するには、
黒田日銀総裁が述べているように、「期待に働きかける」ということが重要である。
これまでの20年もの間、デフレが続いてきたが
そういう状態から脱するためには、かなり強力な起爆剤がいるわけで、
今回の日銀の大胆な金融緩和策というのは、
「消費税の2%上昇を必ず達成させる」という強い覚悟を示すという
アナウンスメント効果を狙ったということであった。
全く心理的な効果ではあるが、これは大いに意味があり、
円安・株高で経済は活況を取り戻した。
しかし、そのあと実体が付いてこない、とだめである。
もしこの心理的な効果だけで終わってしまうと、
いわゆる量的質的緩和というのは、いろんな副作用を伴うリスクの大きい賭けであるからである。
デフレ脱却の最終的なカギを握るのは、成長戦略と財政政策をきちっとやることであり
それはまさに政府がやるべきことである。
つまり、日銀が今回大きなリスクをとって、賭けに出たわけであるが
それを望ましい結果につなげるためには、
このあとは、政府がこれらの二つの課題をきっちりとやっていくことである。
最終的に消費者物価2%上昇ということは、今の段階ではこだわることが重要であるが
最終的には「必ずしもこだわらない」ということも必要である。
(お急ぎの方はここまで読まれれば充分です)
日銀の新方針で、日銀が大量の国債を購入することになった。
2014年末には、同行の保有国債は190兆円、同行の資産の60%を占めるようになり、
日本国の国債残高の2割強を保有することになる。まさに異次元緩和と呼ばれるものである。
この日銀の動き(動かせ方)は、
長期金利・資産価格・為替相場をまずは動かして、
その結果として、実体経済や物価に影響を及ぼそうとするルートを期待したものである。
具体的には、
これだけ日銀が大量の国債を買い上げて行くには、
民間の金融機関が保有する国債も買い上げ対象にしている。
そこで、民間金融機関としては、
株式の購入とか、海外資産への投資などを増やして行かざるを得ないことになる。
その過程で、株高・円安が進むことになるのである。
円安が進むと、輸出企業には利益を増やす要因になる。
株高についても、高額商品の消費が活発化して、景気を押し上げる要因となる。
ただ、現時点で企業がどの程度設備投資を増やすかという面をみると
必ずしもまた投資を増やすという状況にはなっていない。
それから、賃金についても、ボーナスは少し増えたようであるが、
基本給の上昇については限定的のようである。
一方で円安により輸入コストが上がっていて、
輸入品に依存している産業については、むしろ収益が圧迫されていきている。
また、ガソリンや光熱費、そして 食料品の一部の物価も上昇している。
賃金がなかなか増えてこないということになってくると、
日用品の消費はむしろ低迷してくる恐れがある。
だから、マクロと景気そのものは回復してきているが、
ミクロでみると好調の分野とそうでない分野の二極化がみられる。
物価についてであるが、
今は、マイナスであるがいずれプラスに転じて消費者物価は上昇していくとは思うが、
この1年ほどは、上がる品目と下がる品目に分かれてくるだろう。
さて、標題の異次元緩和とアベノミクスの今後の行方のシナリオを描こう。
一つ目のシナリオとして、
政府の成長戦略が掛け声倒れに終わり、設備投資は引き続き低迷する。
円安は一層進み、今起こっている経済の抑圧状況はさらに強まっていく。
株式をはじめとする資産価格は上がり続け、バブルの様相を呈してくる。
円安で、ガソリン代・光熱費や食料品、高額商品などが牽引して物価が上昇し、
結果として日銀が目標としている消費者物価2パーセント上昇がもたらされる。
実体経済が付いてこないので、いずれバブルははじけて、再びデフレに戻る。
ついには、グローバル資本から日本売りが始まり
超円安となり、超インフレとなり、スタグフレーションとなる。
もう一つのシナリオとして、
成長戦略が進み、企業の設備投資が増えてくる。
金利が上昇し始め、賃金も上昇する。
日本経済は再び成長軌道に乗り始める。
このようになるなら、2%の物価上昇にはこだわる必要はない。
◆◆◆◆◆◆◆◆ いまさきもりの一言 ◆◆◆◆◆◆◆◆
研究所のエコノミストさんらしい、教科書的 お話でした。
強い支持率を背景にしてか、安倍政権の強気の政治・外交が気になります。
この『放送要約』も、題材にしたいお話が少なくて困っています。
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