ジョージ・いまさきもり の アンダンテ・カンタービレ

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エネルギー転換の理念

2012年07月03日 | ラジオ番組

エネルギー転換の理念    7/3 内橋克人さんのお話しの要約です。

昨日、関西電力大飯原発3号機の運転が再開された。

日本は世界最悪レベルの原発事故を起こしながら、
福島原発事故に追われた多数の避難者が、今なお放置されている状態のままで、
事故原因の究明もいまだ途上のままで、
福島事故そのものの収束もなされていない、という深刻な事態が続く中で、
運転再開をしてしまった。

いま世界は、
地球規模で広がる放射能汚染、あるいは環境へのダメージ
に対して
警戒態勢を強めており、
日本政府の倫理的・道義的責任に
一層厳しい懐疑の目を向けるようになってきている。

一方で、7月1日から再生可能エネルギー固定価格買い取り制度がスタートした。
欧米諸国ではすでに 90年代半ばには制度化されていた。
今回スタートした日本の制度は、しかしながら、
いったいどのような社会を目指してのエネルギー転換なのか、
目指すべきゴールの姿、そして何よりもエネルギー転換の理念が明快に示されていない。

アメリカ、ドイツ、北欧諸国では
早くも 1990年代の頃から、
この制度の仕組み作りのために、
国民的な論議が活発に展開されてきた。

「何のためにエネルギー転換を目指すのか?」
「買い取り価格はいかに決められるべきか?」などについての論議である。

私(内橋さん)も既に1995年頃に出版した『共生の大地(岩波新書)』の中で
”実験的社会システム”と題して多くの実践例を詳しく紹介してきた。

その中のいくつかをここでも紹介しておきたい。
まず第一に、『見えざるコスト』を内部化するという考え方である。

これは、今エネルギーを消費してメリットを受けている現代の世代の者は
明日の世代に”見えざる社会コスト”を先送りして、負担の転嫁をしている。

その”見えざる社会コスト”を内部化するということは、
その”見えざる社会コスト”を企業の負担要因に組み入れて、
最終的に市場価格に反映させる、ということである。

それには、この”見えざる社会コスト”を定量化して金額に換算して示す必要がある。
この作業に最初に成功したのが
ドイツのフラウンホッファー研究所のホーマイヤー博士と、
アメリカのペース法科大学のオッティンジャー教授の二人である。
1988年のことであった。

二人は、
再生可能エネルギーは、
在来型エネルギーに対して、
社会コストも含む価格で十分に対抗できるエネルギーであることを証明した。

原発で言えば、
放射性廃棄物の最終処理コスト、
また、放射線被ばくへの不安など社会に与えるリスクを含む社会コストを

発電コストに組み入れるべきだ、という考え方である。

今回の福島原発事故が、社会に与えた社会コストが
いかに巨大に上るか考えてみれば、容易に理解できるところである。

こうした視点を欠いたまま
原発の発電コストと、再エネのコストを比べて論じるということは

とても許されないということである。

二番目に、『アボイデッドコスト(避けられたコスト)』の考え方を紹介したい。
電力会社による買い取り価格は、
この『アボイデッドコスト』で算出されなければならない、
という考え方である。

この『アボイデッドコスト』とは何か?
「先に電力の需要ありき」ではなくて、エネルギー需要そのものをいかに最小化できるか、
これをすべての出発点とする考え方である。

そしてまた、仮に再生可能な自然エネルギーの発電所がなければ、
既存の電力会社は、
従来通りのやり方で発電所を作り続けなければならないわけであるが、

現実には、新たな再エネの発電所があるおかげで
電力会社は新しい発電所を作らなくても済むわけである。

この発電所を作らなくても済んだ分が、避けられたコスト『アボイデッドコスト』である。

だから『アボイデッドコスト』は、新たな発電所からの買電価格に充てるべきであり、
したがって、
『電力会社は自社の発電コスト以下で買電してはならない』という原則を意味している。

今やこうして進む、エネルギー源の転換は、社会的、全地球的視野から見ると、
数値で示された『アボイデッドコスト』をはるかに超える価値を持つというべきである。

ドイツ、デンマーク、スイス、オランダを始め各国では、こうした過去の積み重ねの上に
例えば、前回お話した『脱原発、ドイツの選択』というものが可能であったのである。

今わが国に求められているのは、
単にエネルギー転換にとどまらず、それを促す理念や制度こそが求められているのである。

『脱原発、ドイツの選択』⇒こちら

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