モータージャーナリストの島下泰久氏が2013年のワーストカーはクラウンと決定した。氏は『2013年版 間違いだらけのクルマ選び(草思社)』の著者でもある。説明を原文のまま紹介する。
《まずワースト。難しいですねぇ、コレは。まあ見てガッカリ乗ってガッカリはクラウンだったので、まあ、それでいいか。色々書きたいことはありますが、やっぱり走りかな。
プラットフォームを3代使い回すのはね、いいんですよ結果が良ければ。でも残念ながら、今のクラウンは横風の中では真っ直ぐ気持ち良く走らない…。それなのに自信満々なところに、大丈夫か? と思ってしまうのです。
アスリートの顔のことなどは、もう書き尽くした感もあるので、ここでは省略。顔にお絵描きはやめてね、とだけ言っておきます。乗られている方、すみません。でもコレが嘘偽りない評価です》
クラウンは良く見かける。あのフロントデザインのヒントはアウディーだね。使いまわしなんていかにもトヨタらしい(安い材料で高く見せる)。そう言えば、ランクル100のディーゼルエンジンも使いまわしで、80のエンジンに手を加えただけだった。
ベストカーは?私の好みで、オフロードを走れなければ車じゃない、背の低いのは見晴らしが悪い、ガソリンがぶ飲みは勘弁して欲しい。左ハンドルは対象外。そこで、セダンやスポーツカーを外し、ディーゼルやハイブリッドの右ハンドル四駆となる。
この条件では何と言っても、ベンツML350BlueTECでしょう。2013年から右ハンドル登場で、車全体が一新された。全く別の車が登場した。一言ではソフト&スムーズ。ディーゼルを感じさせない静粛さと、重厚で快適な走り。
コーナリングの安定性、凄く効きの良いブレーキ、右の指で軽く操作する電子ミッション、迫力と奥深さのある優れた音響などについては既に何度か書いた。
私の夢は四駆ディーゼルでガソリンターボに勝つことだった。この夢はあっさり実現された。
馬力こそ258HPと控えめながら、トルクが62kgmと巨大。お蔭で、殆どのガソリン車をリアウインドウの彼方に追いやることになった。対抗できる車は、モンスタータイプのスポーツカーやレーシングカーしかない。
これがディーゼル四駆。信じられますか?昨日の燃料消費は8.6km/リットルだった。通常は9.5km/リットル程度なので、踏み込んだ分だけ数字が悪かった。プレミアガソリン車に比べると燃費は半分ぐらいになる。
ベンツは世界で初めて車を造った誇りからくるこだわりだろう。安直には新しい機能を追加しないが、今回は積極的な開発が有った。特にディーゼルエンジンは他社の追随を許さない。BMWが近いが、BMWは高周波振動を十分抑えていない。
ベンツ・ML350BlueTECのライバルはBMW・X-5ディーゼルになるが、その差を一言で言えば基本性能の差である。確かに、BMWはデザインも美しいし、遊び心に溢れる。しかし、走りに関しては妥協できない。
音は、ガソリンのツインカムエンジンに似ている。私が神経質なのか1200回転あたりの音をもう少し研究したら良い。心地よい音になったら、パワーも燃費も良いので、もう、ガソリン車は不要になる。
私の走りはメリハリが有り、細い道では思い切って速度を落とす。室内では聞こえないが、外でエンジン音のするのはベスト。低速の走りはソフトで優しい。大型なのに回転半径が5.5mには助かる。ランクルは6mだった。
ステアリングの木は美しい。深みのある黒大理石のようで、実は木なので、温かく優しい。本革の縫目も、よくぞここまで立体に合わせて縫えるものだと感心する。リアで当たりそうな場所にクロムなのか傷が入りにくいハードメタルが有るのも助かる。ベンツは実によく考えている。
空調は立ち上がりが早く、強力で心地よい。モニターで部品の異常まで表示するのは驚いた。タイヤのパンクを知らせてくれる機能(タイヤからの信号伝達)は様々な開発経験のある私にも分からない。安全性は車の命。
既に5か月乗り、2万キロ近く走っているが、今後気になるのは音や振動がどうなるかだ。ランクルは24万キロ走り、流石に音や振動が少し大きくなった。MLにはまだ変化が感じられない。