シャープの携帯を使っているが、設計者は自分で使った事があるのだろうかといつも疑問を感じる。夜に全ボタンが光るようになるが、肝心な通話や電源のボタンが光らないので、いつも押し間違える。機能は滅茶苦茶高いが、一部しか使うことが無い。操作が難しく使いこなそうなんて気は起こらない。
シャープの営業を重視するポリシー、金バッチで新しいプロジェクトを積極的に立ち上げる姿勢は大変良かったと思う。二番手グループの電気メーカーがいつしか、パナソニックや東芝などと肩を並べ、液晶テレビ、太陽光発電、調理器など部分的には追い抜いていた。しかし、奢りや勘違いや焦りが有ったのではないか。企業哲学や経営センスはなかなか継続されない。
我が家と事務所は大型液晶テレビ、蒸気加熱調理器、2台のカラー複合機、空気清浄器、全部の携帯がシャープだ。シャープが倒産したらどうなるのかと思う。東広島のシャープの下請けは仕事が無くなり、失業者が急速に増えた。求人するとシャープの元下請けの優秀な社員が多く、気の毒と地元企業が言っていた。
若い人は自分が決定権を持つと、いきなり自分のカラーを出そうとするが、客観的に見て若い世代は力が無い。例えば、団塊の世代は幼いころ、食べるものが無くてハングリーな生活をおくりハングリーさが身に染みている。いつまで経ってもハングリーだから必死で頑張れる。
野原で走り転げ泥にまみれて自然や物の理屈を知っている。自然は数十億年を経て今のバランスを得ており、その頃のガキは自然に交わり自然の持つ合理性やメカニズムを少しは得ている。何より、本能を揺り動かされ、生命のノウハウを得ている。恵まれすぎた若い世代が根拠のない自信だけで同レベルのビジネスを進めるのは無理というもの。
いつの時代にも若い人はいたわけだが、決定的に異なるのは、天国のような環境が用意されていたことだ。生命が誕生して以来、食が足りたことは無いが、日本の歴史でも衣食住が恵まれすぎていた。競争も排除された。揃いも揃って従順なロボットで、バランス感覚が欠如している。流れに逆らわず、問題点も含めて全て受け入れてしまい、危機感が乏しい。
さらに深刻なことは、日本を取り巻くビジネス環境は格段に難しくなっている。その深刻さは早く気が付く必要性がある。シャープは多分、相当な読み間違いが有って、打つ手が遅れている。一つは成功体験が多すぎ、あまりにも順調だったのでリスクに甘くなったのだろう。
元電気メーカーの教授が言っていた。日本企業同士は、どこかが新しいことをやると、それっと真似して追いつこうとする。キャッチアップであるが、このキャッチアップで横並びで進めてきた。顧客のニーズとは必ずしも一致しない。あのトヨタも、顧客ニーズ無視で作りたい自動車を作る。そこでガソリンがぶ飲みピックアップに進出、GMを追い込み、叩かれることになった。
ハイアールに移った元日本企業の社員が、ハイアールは顧客のニーズに迅速に対応すると言っている。当たり前のことだがそれが日本企業にはできない。おまけに部下が一歩進もうとすると上司が徹底的に叩く。サムソンのように、若い社員を現地で1年間遊ばせニーズをつかむ、自分より有能な部下を持つことを評価するなどが望まれる。
サムソンの自分より優秀な部下を持つことを評価するとの経営哲学は物凄いね。日本企業の最大の泣き所を横目で見て改革したとも言える。決して皮肉ではなく現実的な問題。日本企業では部下が自分より力を発揮することを極端に嫌う。従って、代を重ねるごとに企業力が落ちてくる。日本全体が劣化しているのだ。
日本企業がスピード感が無いと言われている。これは早く判断して動くと言うことではない。早さだけではない。勘違いしたらひどいことになる。事実を徹底的に追及するとともに論理的に思考し、より優れた評価方法で判断しなさいと言うこと。論理的な思考法では普段から問題が整理され様々な解決策がシミュレーションされている。
そして正しいと判断されることを勇気を持って実行することだ。間違っていたら率直に反省し、方向修正したらよい。結果的に全てが早くなる。日本の経営者は普段から論理的な判断、シミュレーション、評価ができていない。だから、問題が起きると対応できない。
様々な失敗を重ねていることも、論理構成やシミュレーションの生きた材料として重要だ。失敗無しに一直線で成功するなんてことはまず無い。運良く順調過ぎる成功はその後の大失敗を招く。
私が経営には哲学が大切と言う意味は、例えば科学が観察できるもの、数学として表現できるものとして、哲学は見えないもの数学的に表現できない分野だ。分かり易く言えば、科学で扱えない世界(見えない世界)の科学が哲学だ。この哲学と言うバックグラウンドがいかに広く深く、論理構成、シミュレーションが繰り返され、熟成しているかが実際の場面で問われる。
私の例で恐縮だが、アクションが早いと言われる韓国人より早い場合が多々ある。失敗も多いが不可能と言われたことをいくつか成功させている。暴走族にしては成功率が高い。何も無くて走るのは確かに暴走かもしれない。バックグラウンドが充実し、論理構成、シミュレーションにより確証がある場合は、やってみることだろう。
日本を取り巻くビジネス環境として、円高は確実に日本企業を痛めつけている。日銀はアメリカ・ヨーロッパの利益のために働いている。日銀法を少し元に戻し、日本で最高の戦略家を日銀総裁に就任させ、出来が悪ければ交代させるようにしないと、そのうち、日本の製造業は壊滅する。